表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/125

067 / 第五層殲滅作戦

 ソディアがケイルを背負ったところで、フェリテがグラナダに尋ねた。


「ところで、何があったの? おドジ……?」


 グラナダが答える。


「まったくの的外れではないが、すこし言い訳をさせてほしい。六層からの帰り道、五層の主通路で、無数の大コウモリに襲われてね。逃げる際、ケイルが足を滑らせたんだ。あそこは足場が悪いだろう?」


「げ」


 殲滅しきれていなかったのか。

 時間の経過によって、元の数へと戻りつつあるらしい。


「一体一体はさして強くもないが、百、二百と集まれば、もうどうしようもなくてね。目下のところ、このダンジョンを諦めようか検討中というわけさ」


「え!」


 初耳だったのか、ナナセが目を見開く。


「嫌よ、絶対! 買ったミスリル鉱石が無駄になるでしょ!」


「だが、隊員の命には替えられまい」


「……それは、そうだけど」


 ナナセがかぶりを振る。


「でも、ほとんど人の手の入ってないダンジョンなのよ。冒険譚を書くのにこれほど適した場所もないわ。冒険の舞台は前人未踏でなければ面白くない。そうでしょ?」


「わたくしもナナセに賛成ですわ。ナナセの書いた冒険譚が神印を賜れず、どれほど悔しい思いをしたか。忘れたとは言わせません」


「──…………」


 グラナダが腕を組み、ナナセとルクレツィアを睨みつける。


「だが、現実問題として、あの大コウモリをどうする。あの数を掃討するには、せめて大呪が必要だ。ルクレツィア、君は大呪を扱えるか?」


「いえ、わたくしは……」


 ふと、ルクレツィアと目が合った。


「──そうだ、リュータさんがおられるではありませんか!」


「え、俺?」


「はい。火炎の極大呪使いであれば、クソ雑魚がいくら束になろうとへのかっぱというものでしょう?」


 意外と口悪いな。

 へのかっぱとか、自動翻訳前はなんと表現しているのだろう。


「……まあ、元から駆除するつもりではあった。数が戻るたびいちいち吹き飛ばすのも面倒だしな」


「ふむ……」


 グラナダが思案する。


「たしかに利害は一致している。放っておけばリュータが全滅させてくれるのかもしれない。だが──」


 にやりを口角を上げ、グラナダが俺の目を覗き込んだ。


「むろん、それに甘えるばかりの我々ではない。ナナセ、頼んだ」


「はいよー!」


 以心伝心とばかりに、ナナセが頷く。


「リュータ。アタシたちが、アンタたちを雇うわ。依頼内容は、第五層のコウモリの完全討伐。依頼料は金貨一枚でどう?」


 俺は、思わず、フェリテと顔を見合わせた。

 金貨一枚。

 今となっては、喉から手が出るほど欲しいものだ。


「リュータ、やろう!」


「そうだな。もともと、なんとかするつもりではあったんだ。あんなのが洗礼として待ち受けてるんじゃ、冒険者たちが軒並み逃げちまう。街の復興どころじゃない」


 思えば、第六層は、第五層に比べ大人しい。

 大コウモリのせいで第五層の難度だけが突出しているのだ。


「オーケー、前金で全額払うわ」


 ナナセが金貨を指で弾く。

 俺は、それを空中で受け取ると、月にかざした。

 金色の硬貨が美しくきらめく。


「たしかに承った。それで、具体的にはどうする?」


「こちらの疲れが癒えたら、共に潜ろうじゃないか。魔物を殲滅するのであれば、一気にやらなければ意味がない。五層の魔物を一匹残らず駆逐して、ただの洞窟にしてやろう」


「了解」


 フェリテが拳を突き上げる。


「よーし、がんばろう!」


 こうして、俺たち名もなきパーティとグラナダ探窟隊は、一時的に共同戦線を張ることとなった。

広告下の評価欄より【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、執筆速度が上がります

どうか、筆者のモチベーション維持にご協力ください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ