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062 / 武具屋にて(2/4)

 三人で武具屋を出る。

 周囲に人がいないことを確認し、フェリテが戦斧を豪快に振り下ろした。


「──せいやッ!」


 戦斧が空気を断ち割り、風を巻き起こす。


「どんなもんだ?」


「うん、今までより滑らないかも!」


 俺は、冗談めかして言った。


「これですっぽ抜ける心配もないな」


「すっぽ抜けたのは前の武器のときだってばー……」


 フェリテがおじさんへと向き直る。


「とにかく、ありがとうおじさん。お金、本当によかったの?」


「ああ、気にすんな。次からはちゃんと金取るから安心してくれや。今回は──ほら、新しいパーティが到着したって言うじゃねえか。あれ聞いて嬉しくなっちまってな。これも隠し通路を見つけた兄ちゃんたちのおかげだ。これからどんどん人が戻ってくる。街の恩人に、すこしでも貢献したかったのさ」


「えへへ。でも、あたしはなんにもしてないよ。ぜーんぶリュータのおかげ!」


「たしかに見つけたのは俺だけど、パーティは一蓮托生だろ。俺の功績はフェリテの功績でもある。逆もまた然りだ。フェリテがとんでもないことを成し遂げたら俺も我がことのように自慢するから、覚悟しておけよ」


「はーい」


 素直である。


「──ところで兄ちゃん。最近、金回りはどうだ?」


「まあ、ミスリル鉱石とか売っ払って、それなりに潤ってはいますけど……」


「そうかそうか。ちょいと見てもらいたいモンがあるんだがな」


「……?」


 思わずフェリテと顔を見合わせる。

 俺たちは、おじさんに先導されるがまま、武具屋の店内へときびすを返した。


「待っててくれ。今持ってくる」


 そう言って倉庫へと入っていったおじさんが、数分ほどで一振りの長剣を手に戻ってきた。


「こいつは、うちの店でいちばんの業物だ。あんまり売る気はなかったんだが、兄ちゃんにならと思ってな」


「なんか、すごそう……」


「すごいぜ、これは。なんたってミスリル製だ」


「ミスリル製って、あのクソ重い?」


 ミスリルと言えばクソ重い、というのが完全に刷り込まれてしまった。


「なに、持ってみればわかるさ」


「はあ……」


 ミスリル製の長剣を、鞘ごと受け取る。

 軽い。

 鋼の長剣に比べれば、まるで羽が生えているかのようだ。

 わずかに鞘から抜いて、刃を確かめる。


「──……!」


 思わず目を見張った。


「薄い……」


 金属であるにも関わらず、向こう側が透けて見えるほど薄いのだ。

 恐らく、厚さはミリにすら遠く及ばない。


「わ、すっごくきれい……!」


 フェリテの言う通りだった。

 鉱石のときにも見られたあの複雑な色合いが、さらに深みを増している。

 虹の剣、という表現が相応しい。

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