048 / 初めてのレベルアップ(1/2)
「──血に飢えた狼は、"アーネ"の放った火炎呪によってその身を焦がされ、やがて動かなくなった。戦闘終了、君たちの勝利だ!」
そう告げ、戦闘用の羊皮紙を意識野に収納する。
「ふー、なかなか手強かったね」
「二人とも治癒薬で回復しておきましょう」
先日のセッションを含め三度目の戦闘を終え、二人ともだいぶ慣れてきたようだった。
いい調子だ。
「経験値配付するぞ。たぶん、これで二人ともレベル2だよな」
「とうとうレベルが上がるんだね!」
「ええ、待ち遠しかったです」
「じゃ、いったんダンジョンを出てレベル上げ作業をしようか。装備の更新もしたいだろ」
「あ、そうか。レベルが上がると装備できる武器防具も増えるんだ」
「前も言ったけど、レベルは総合的な強さの指標だからな。使いこなすのが難しい装備も扱えるようになるんだろう」
「なるほど、わかりやすいですね」
ダンジョンのマップを収納し、二人のコマを端に寄せる。
「君たちは初めての冒険を終え、意気揚々と竜とパイプ亭へと帰還するだろう。山羊肉のシチューと焼きたてパンで空腹を満たし、満足して床に就く」
「あ、お風呂入っておきたいな」
「重要ですね」
「えー、では、お風呂に入ったあとに床に就く。きっと良い夢が見られることだろう」
「きっと、魔物をバッタバッタとカッコよく倒す夢見てるよ」
「"フェリテ"なら、たしかに見ていそうです」
「"アーネ"はどんな夢かな」
「そうですね……」
軽く思案し、アーネが答える。
「宝箱を開く夢かもしれません」
「冒険者だねー」
「冒険者ですから」
「じゃ、リュータは?」
「え、俺?」
思わぬタイミングで話を振られてしまった。
「だって、戦わないけど一緒に冒険してるんでしょ?」
「あー……」
そう言えば、そんな設定にしたっけ。
「たぶん、まだ寝てないんじゃないか。ログまとめてそう」
「ちゃんと寝ましょうね。急ぎませんから」
「……はい」
注意されてしまった。
昨夜徹夜をした身として、俺自身も気を付けなければ。
「ともあれ、今日のセッションはこれでおしまい。残り時間はレベル上げ作業と買い物に当てようか」
「いえーい!」
「取得するスキルは決めてきましたが、実際にレベルを上げるのは初めてですね」
「そんなに難しくないよ。計算はこっちでやるし」
「あたし、算術苦手だから、ありがたいかも……」
「まず、上げるステータスを三つ選んでくれ」
「三つ、ですか。それは、重複しても構わないのですか?」
「いや、重複はなしだ。1点を三ヶ所に頼む」
「はーい」
フェリテが、自分のキャラクターシートとにらめっこする。
「やっぱ、筋力と器用と素早さかなあ……」
「妥当なところだな」
「私は、知力と精神、それと素早さにします」
「魔法型ならいいとこじゃないか?」
二人の選択をメモしながら、計算を行っていく。
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