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033 / 役割分担

「このあたりから、だな」


 描きかけの地図を展開し、クリップボードに挟む。


「まだまだ奥に続いてそうだね」


「永遠に続くんじゃないかって錯覚しちまうよ」


 うんざりしながら、フェリテに問う。


「体力は大丈夫か? 疲れてるならいったん休憩するけど」


「大丈夫! 武器が軽くなったからかな。ぜんぜん疲れないんだ」


 そう言って、戦斧を手に、軽く演武をしてみせる。


「……実は、フェリテって、冒険者適性高いよな。最初は向いてないんじゃないかって思ったものだけど」


「あ、やっぱり……」


「そりゃ、ただ歩くだけで転んでたらそう思うよ」


 背負っている武器が自分の体重より遥かに重いだなんて、知らなかったもの。


「昔から、よくおてんばだって言われてたんだ。男の子より木登りが得意だったし、かけっこもいちばんだった。木の枝でチャンバラして、泣かせちゃったこともあったっけ……」


 目に見えるようだ。


「冒険者を目指すのは、必然だったのかもな」


「──…………」


 フェリテが、一瞬、目を泳がせた。

 そして、気を取り直したかのように頷く。


「うん、そうかも」


 なんと言うか、嘘のつけない子だと思う。

 何か事情があって冒険者をやっているのだろう。

 だが、根掘り葉掘り聞くのはマナー違反だ。


「ここまでの魔物はマッピングのときに全滅させてきたけど、ここから先は未知の領域だ。警戒していこう」


「何も出ないと思ったら、全滅させてたんだ……」


「そうしないと、落ち着いてマッピングできないし」


「……普通、逃げたりもすると思う」


 言われてみれば。

 エンカウントする魔物が軒並み対処可能だったから、つい生態系をめちゃくちゃにしてしまった。


「ね、あたしが先導していいかな。リュータにはマッピングに集中していてほしいんだ」


 俺は、自分をマッピングの天才にした。

 マップとは俺にとって歩けば勝手に埋まるものであり、だからこそソロであっても油断なく探索を進められたのだ。

 だが、ここはフェリテの意志を尊重したかった。


「ああ、お願いできるか。フェリテが警戒、俺がマッピングだ。役割分担と行こう」


「わかった!」


 フェリテが俺の数歩先を歩き始める。


「……話すのも、小声のほうがいいよね」


「だな。ソロのときは嫌でも聞こえたけど、互いの声で物音を聞き逃す場合もあるから」


「わかった」


 俺たちを緊張感が包み込む。

 だが、不思議と気まずくはなかった。

 フェリテがどう感じているかはわからないが、少なくとも俺はそうだ。

 仕事などでも時折感じるような一体感。

 それが極まれば、パーティは一つの生き物にすら近しくなっていく。

 その感覚の一端を、俺は味わっていた。


「──……!」


 フェリテが足を止め、周囲を見渡す。


「……風の流れが、変わった」


「風?」


 言われて気付く。

 空気がかすかにそよいでいる。


「歩きながら、よく気付いたな……」


「えへへ。このあたりに分かれ道があるのかも」


「ああ、確認してみよう」


 この付近は、恐ろしく幅の広いトンネルのような構造をしている。

 マッピングのために壁際を歩いていたため、反対側の壁まで人工精霊の明かりが届いていなかった。

 そちらに目星をつけて調べていくと、壁に大きな亀裂が走っていた。

 隙間から侵入することができそうだ。


「ここか……」


「どうする? 入ろっか」


「まだまだ少ない経験則だけど、宝箱はこういった脇道にあることが多かった。調べてみる価値はあるよ」


「了解!」


「気を付けてくれ。魔物がいる場合も多いから」


「うん、わかった」

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