024 / 初めてのセッション(4/5) おめでとう、君たちの勝利だ!
「では、大ネズミのメインプロセスだ」
一体目の大ネズミが"アーネ"に襲い掛かる。
ダメージは避けられない。
「う、けっこう痛いですね……」
「じゃ、二体目も"アーネ"を攻撃だ」
「ひどいです」
「ふはは! 弱っているほうを狙うのは大自然の常識よ!」
フェリテが宣言する。
「GM、"アーネ"をかばうよ!」
「いいんですか? フェリテさん」
「うん。あたしのほうが防御力高いし、なんなら出目によってはダメージも入らないかも」
「ならお願いします。治癒薬も馬鹿にならないので……」
「了解!」
「では、"フェリテ"が身を挺し"アーネ"をかばう。ダメージは──」
ダイスを振り、ダメージを決定する。
「うお、マジでノーダメだ」
「カチカチにしといてよかった!」
「ありがとうございます、フェリテさん」
「いいってことよ! あと、さんはいらないよ。あたしもアーネって呼ぶね」
「……ええ、わかりました。フェリテ」
「ああ、セッションを通じて親交が深まっていく……」
これもまた、GMの喜びの一つだ。
三体目の大ネズミの攻撃をいなし、フェリテの手番となる。
「よーし、どれ狙う?」
「数を減らすのが定石ですが、"フェリテ"は攻撃力が高いですからね。まだ無傷のネズミを狙っても十分倒せるかと」
「わかった! じゃあ、真ん中のネズミには死んでもらおう」
「ちゅーちゅー、たすけてちゅー」
「やめてよ、殺しにくくなるでしょ!」
「冗談冗談。さ、判定どうぞ」
「はーい」
フェリテがダイスを振る。
出目は、5と4だ。
「問題なく命中。ダメージどうぞ」
「えーと、全力攻撃で5D6と、あとなんだろ」
「攻撃力で+10だな」
「六面ダイスを五個振って、と」
五個のダイスがころころと転がる。
「ごー、よん、にー、さん、にーで、16かな」
「そこに+10で、26点ですね」
「ざん! ばっさり! 死んだ? 死んだ?」
「大ネズミは"フェリテ"の戦斧によって、頭頂から股間までを両断される。哀れネズミは真っ二つ。一体撃破です」
「やったー!」
「いい感じですね、フェリテ」
「このまま絶滅させてやろう!」
「それはやり過ぎだろ」
初戦闘だけあって、危なげなく進んでいく。
残りの大ネズミ二体は、次のラウンドで天に召されていった。
「──おめでとう、君たちの勝利だ!」
「やったね、アーネ!」
「ええ、やりましたね」
フェリテとアーネが小さくハイタッチを交わす。
「じゃ、経験値を配付したあと、ドロップアイテムをダイスロールで決めようか」
「魔物を倒したら、なんか落とすんだっけ」
「まあ、現実ではそうそう落とさないんだけどな。あくまでゲームってことで納得してほしい」
「当然、もらえるものはもらっておきますよ」
「さすがアーネ、したたかだね」
「では、大ネズミの数だけ2D6を──」
ドロップ品ロールを行いながら、酒場に設置された振り子時計を見る。
そろそろ十時になる頃合だった。
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