022 / 初めてのセッション(2/5) キャラクターシート作成
「アーネちゃんは何にするの?」
「正直、まだ迷っています。いっそ、もうすこし人数が欲しいところですね。そうすれば、踊り子などの面白そうな職業に手を伸ばせそうなのですが……」
「PLは四人くらいがちょうどいいからな。二人だと、すこし調整が厳しくなる」
「やはり、僧侶は入れたほうがいいのですか?」
「ヒーラーはいたほうがいいけど、必須にはしたくないな。選ばなければ選ばないで治癒薬を潤沢に配ることにするから、最初はしたい職業を好きに選んでほしい」
「なるほど、ありがとうございます」
「じゃ、すこし考えててくれるか。俺は道具を取ってくるよ」
「道具って?」
「すぐにわかるさ」
そう言って席を立つ。
自室に戻り、取り出した羊皮紙にこう書き綴った。
【工藤竜太が鞄を探ると、その奥に、セッションに必要なものが詰まった袋があった】
羊皮紙を意識野に仕舞い込み、鞄を漁る。
空の瓶を取り出し、さらに奥へと手を伸ばすと、じゃらりと音を立てる革袋に触れた。
「よし」
一階のホールへと取って返す。
「ただいま」
「おかえりー」
「おかえりなさい」
「セッションに必要な道具とは──これだ!」
革袋の中身を空ける。
袋の口から、四面ダイス、六面ダイス、八面ダイス、十面ダイス──それらが幾つも転がり出た。
「わ、サイコロだ!」
そう言ってフェリテが手に取ったのは、十面ダイスだ。
「へんなかたちをしている……」
五角錐の底面同士をジグザグに貼り合わせた形状の十面ダイスは、俺のいた世界でもそうそう見ない珍しいものだ。
「なるほど。ダイスでさまざまな事柄を決めていくのですね」
「ああ。全部が全部GMの手のひらの上だと、つまらないだろ。運を天にまかせるのも楽しいもんさ」
アーネが、ふと微笑む。
「そうかもしれませんね」
「あ、そうだ。アーネちゃん職業決めたって」
「そうかそうか。結局何にしたんだ?」
「治癒薬が配られるとのことだったので、いっそ魔法使いと踊り子を」
「なかなか渋い組み合わせだな」
「難しいですか?」
「いや、俺も一回やったことあるよ。スキルの取り方に癖があるけど、ハマれば強い」
「そうですか。なら、よかった」
「リュータ、純戦士は?」
「脳筋だけど、だからこそわかりやすく強いな。パーティに一人は欲しいタイプだ」
「やった!」
二人が期待に目を輝かせている。
GMとしては、こういう反応が嬉しいんだよな。
「じゃ、"フェリテ=アイアンアクス"と"アーネ=テト"のデータを作っていくか」
「おー!」
「はい」
ダイスを用い、手製のキャラクターシートの中身を埋めていく。
さまざまな質問を受け付けながら、一つ一つ丁寧に。
「リュータ。この、レベルという欄はなんですか? ダイスを振る必要がないようですが」
「あー……」
そうか、テレビゲームなんて概念のない世界だもんな。
なんと説明すればいいのか。
「総合的な強さの指標、みたいなもんかな。冒険していくと、経験を積んで、強くなっていくだろ」
「そうですね」
「それを数値化したものが、経験値。経験値を一定以上取得すると、レベルが上がる。レベルが上がるとステータスが上がるし、新たにスキルを取得したり、スキルを強くしたりすることができるわけだ」
「上げると強くなるんだね」
「そんな感じで、シンプルに捉えておいてもらえればいいよ」
「了解です」
やがて、キャラクターシートが完成する。
「できたー!」
「これが、私ですか……」
アーネがキャラクターシートを掲げ、目を輝かせる。
「その通り。二人の分身だな。彼女たちが、これからダンジョンに挑むわけだ」
「ふふ、なんだかわくわくしてきました」
「前哨戦ってわけだね」
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