021 / 初めてのセッション(1/5) 概要説明
「まず、TRPGっていう概念から説明するな」
「うん、気になる。聞いたこともない遊びだから」
「先程は、"ルールのあるごっこ遊び"と言っていましたが」
「ああ。TRPGとは、テーブルトーク──卓を囲んで会話をし、ロールプレイ──キャラクターになりきって遊ぶゲームのことだ」
フェリテが小首をかしげる。
「キャラクターに、なりきる?」
「本来、こことは異なる世界を舞台にして、自分の作ったキャラクターを演じながらプレイしていくものなんだけど……」
ここは、剣と魔法の世界そのものだ。
既存のシステムを流用し、世界観をこちらに合わせて、ダンジョン探索をメインにした新しいシステムを即興で構築してしまおう。
「いきなり演じろって言われても難しいと思うから、ここは自分自身をキャラクターにしてみようか。ただし、職業は変えてもいい」
「私であれば、神官ではなく冒険者にすることも可能ということでしょうか」
「ああ、可能だ。と言うか、冒険者ってのは大前提だな。ここで言う職業ってのは、戦闘で果たす役割のことだ。攻撃力が高く、質のいい武器防具を装備できる戦士。現実で言えば、フェリテは戦士に当たるな」
「ふんふん」
「魔法で後方からの攻撃や支援を行う魔法使いに、素早さが高く宝箱の鍵を容易に開けられる盗賊なんかもいる」
「盗みはいけませんよ」
「あくまで職業名であって、魔法の鍵で占有してる宝箱をこじ開けるわけじゃないから……」
「それならばいいのですが」
「他にも、回復魔法に特化した僧侶、弓矢による遠距離攻撃が得意な射手、強い武器は装備できないけど手数の多い武闘家、魔物に詳しく戦略が立てやすくなる賢者、ダンスによって特殊な効果を得る踊り子など、職業は多種多彩だ」
「踊ってどうにかなるものなの……?」
「そこはゲームだからと割り切ってほしい」
「はーい」
「吟遊詩人はいないのですか?」
「今回元にしてるシステムでは、いなかったなあ……」
システムとは、テレビゲームで言うソフトそのもののことだ。
バードという名で登場するシステムもあるのだが、ルールの根本であるそれをちゃんぽんしたら、わけのわからないことになる。
ドラクエで無理矢理メテオやアルテマを唱えるようなことになりかねないのだ。
「ま、同行こそするけど、マッピングに集中してて戦闘には参加しないってことにしようか」
「では、リュータも共に冒険するのですね」
「そうなるかな。俺はGMだから、NPC──脇役扱いだけど」
「じーえむ」
オウム返しをするフェリテに答える。
「ゲームマスター。冒険するためには舞台が必要だろ。それを用意する役割のことだよ」
「じゃ、リュータは神さまみたいなものだね」
「ゲームの中ではな」
現実でも似たようなものなのは、秘密だ。
「職業について一つ一つ詳しく説明していくから、そのうちの二つを好きに組み合わせてほしい」
「二つも、いいのですか?」
「ああ、構わない。現実にだって、剣と魔法が両方得意な人や、手先が器用で物知りな人だっているだろ」
「たしかに!」
「もちろん、一つしか選ばないこともできる。その場合は、できることの幅が狭まる代わりに、よりその職業に熟達してることになるな」
「質を取るか、量を取るか。そういうことですね」
「その通り。では、まず戦士のスキルから──」
俺は、暗記している内容を羊皮紙に書き連ねながら、すべての職業について解説していった。
「……なるほど、なかなか面白そうですね。頭を使いそうです」
「あたしには難しそうなんだけど……」
「難しければ、自分そのものにしてもいい。フェリテは魔法得意?」
「ぜんぜん」
「なら、純戦士にすればいいよ」
「いいのかな、それで」
「いいと思いますよ」
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