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124 / 装備を整えよう!(5/6)

「じゃ、買おっか!」


「ああ。おじさん、これいくらです?」


「兄ちゃんたちは、恩人でお得意さまだからな。トップス、ボトムス、合わせてこいつでいいぜ」


 おじさんが、他の客にわからないように、立てた指を手のひらで隠してみせる。

 金貨二枚。

 三人分で、金貨六枚だ。


「どうも」


 小さく頭を下げ、革袋から取り出した金貨をカウンターの上に置く。

 金貨は残り十枚もない。

 俺とフェリテ、二人分の宿代が、一日当たり合わせて青銅貨五枚だ。

 金貨一枚で二十日間しか宿泊できないのである。

 他の出費も鑑みれば、あまり余裕がないことがわかるだろう。

 なお、アーネは、これまでの功労から、竜とパイプ亭に無償で住み続けることができるという。

 本当にありがたい話だ。


「まいどあり!」


 おじさんが、人数分の肌着を紙袋に詰めてくれる。


「ところで、剣と斧の切れ味は鈍ってないか?」


「うん、まだ大丈夫だよ」


「そうかそうか。気になったらすぐに持って来いよ。最優先で研いでやっから」


「了解です。なまくらだと、倒せる魔物も倒せないですからね」


「──ああ、そうだ」


 おじさんが、アーネへと向き直る。


「アーネの嬢ちゃんは、装備いらねえのか?」


「私、ですか?」


「ああ。考え方としては二通りあるぜ。前衛を抜けて嬢ちゃんとこまで魔物が来たとき、撃退するか、なんとか凌ぐかだ」


「なるほど。武器か防具か、ということですね」


「そうなるな」


「ですが、武器の扱いには自信がありません。一朝一夕で身につくものでもないでしょうし……」


「なら、こいつはどうだ?」


 武具屋のおじさんが、店内の中ほどへと俺たちを案内する。

 手に取ってみせたのは、腕に着けることができる小型の盾──バックラーだった。


「これなら軽いし、手も塞がないし、さして邪魔にもならねえ。一撃でも防げたら御の字ってモンよ。稼いだ数秒が命に繋がる。一撃防ぎゃ、兄ちゃんかフェリテの嬢ちゃんが助けに来てくれるかもしんねえからな」


「なるほど……」


 フェリテが、うんうんと頷く。


「これなら、そんなに練習も必要ないかも」


「咄嗟に使えるよう体に覚えさせる必要はあるが、まあ、武器よりゃ時間はかからん。小さな布袋に米でも詰めて投げてもらいな。一時間もありゃ、最低限は身につくだろ」


 アーネが俺を見上げる。


「リュータはどう思いますか?」


「そうだな。あればあったで困らないと思う。避けることも逃げることもできない場面ってのがないとは言い切れない。そのときに命を繋ぐのが、こういう道具だろうからな」


「そうですね」


 納得したように頷き、アーネがおじさんへと向き直る。


「では、いただきましょうか。なるべく軽くて丈夫なものがいいです」


「まあ、まかせとけ」


 武具屋のおじさんが見繕ってくれたものは、鋼鉄でできた薄手の丸盾だった。


「軽くて丈夫ってのは、基本的に両立しねえ。それこそミスリルみたいな特殊な素材でなければな。だから、今回は、最低限一度は防げりゃいいってコンセプトで選んだぜ」


「最低限一度は、ですか」


「ああ、そうだ。そもそも、ヒーラーが延々と魔物からの攻撃を凌ぎ続けるような場面ってのは、たいてい詰んでる。要は、前衛が助けに来るまでの繋ぎができりゃいいって考え方だな」


「なるほど」


 フェリテが鼻息荒く言う。


「絶対助けに行くからね!」


「ええ、頼もしいです」


「バックラーなんてのは、常に腕に装備しておくもんだ。こいつが重いと、歩けば歩くほど体幹が歪んでくるんだよ。そうなりゃ、最悪、腰痛まで出てくる。両腕に装備してバランス取るって手もないこたないが、さすがに邪魔っけだろ」


「あー……」


 体幹の歪みは、節々の痛みとして如実に表れる。

 左右のバランスを取るのは大切なのだ。

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