123 / 装備を整えよう!(4/6)
「んで、今日はどうした。ミスリルの長剣、買いに来たのか?」
「ああ、いや。今回はエーテル製の肌着にしようかと思って」
「なるほどな。まずはそっちか」
「ええ。ミスリルの長剣も欲しいけど、まずは命だ。パーティメンバーも増えましたしね」
「そうかそうか。エーテル製の肌着なら、何着か取り寄せてあんぜ。試着してみるか?」
「お願いします」
「お願いしまーす!」
アーネが、申し訳なさそうに口を開く。
「……私は、その。今は試着は」
「筋肉痛、ひどいもんな」
「寝間着から着替えるのにも十分以上かかったものですから……」
「あたしが入れば、アーネも大丈夫じゃないかな」
フェリテの言葉に、おじさんが頷く。
「もともと大男でも子供でも着られるモンだ。アーネの嬢ちゃんが小柄つっても、問題はねえよ」
「そうですか。なら、試着はフェリテにおまかせします」
「わかった!」
「んじゃ、ちと待ってろ」
武具屋のおじさんが、店の奥から、数着の薄手の肌着を持ってくる。
色合いはどこか青白く、光沢のあるものだった。
「こっちがトップス、こっちがボトムスだ。下着の上から装備すりゃいい」
トップスは普通のインナーシャツ、ボトムスは膝上までを覆うスパッツのように見える。
いずれも、子供用と言われても納得できるサイズだ。
「ほれ、触ってみ」
「どれどれ」
「どんなかんじかな」
「馴染みの薄い素材ですから、気になりますね」
三人で、肌着に触れる。
シルクか化学繊維にも近い肌触りで、心地良い。
「へえー、ちょっといいかも!」
「これが、衝撃に応じて硬化するのですか。不思議なものですね」
「触ってるだけだと信じられないよな……」
「お、試してみるか?」
おじさんが、トップスを両手で掴み、軽く伸ばしてみせる。
「まず押してみ」
「はい」
トップスに触れる。
ピンと引っ張ってはいるが、布は布だ。
それも、驚くほどの伸縮性を誇るため、押せば押すほど伸びていく。
「んじゃ、殴ってみ。軽くでいい」
「わかりました」
拳を握り、さほど力を込めずに右手を振るう。
すると、
──ずむ。
まるで柔らかめのゴムタイヤを殴ったような感触がした。
「て!」
拳に軽く痛みが走る。
ゆっくり押したときとは異なり、肌着はほとんど形状を変えなかった。
「リュータ、大丈夫!?」
「治癒呪は必要ありますか?」
右手を軽く振りながら、言う。
「あー、大丈夫大丈夫。思ったより硬くてびっくりしただけだから」
「ははは、こいつのすごさがわかったか?」
「ええ、わかりました。こんな素材あるんだな」
「衝撃の強さに応じて硬くなるから、魔物の爪や刃物で斬られても死ぬことはまずない。でも、無敵じゃねえからな。これだけ薄手だと衝撃は響くし、痛みだって感じる。致命傷を致命でなくするだけだ。もっとも、それがでけえんだが」
「死ぬような攻撃で死なずに済むんだから、十分過ぎるよね」
「だな」
金貨を出す価値は十二分にある。
「ほれ、袖通してみ。問題ないとは思うが、万が一ってこともあるからな」
「んじゃ、試しに」
試着室で、エーテル製の肌着を下着の上から着用する。
上下共に伸縮自在で、軽く締め付けられる感覚はあるものの、動きを阻害するほどではない。
この程度なら、すぐに慣れるだろう。
「リュータ、いかがですか?」
試着室の中から、アーネに応えた。
「ああ、問題ないよ。着心地も悪くない」
肌着を脱ぎ、元の服装に戻る。
フェリテが入れ替わりに試着室へ入るが、やはり問題はないようだった。
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