121 / 装備を整えよう!(2/6)
「ほら、つまらないこと話してないで、着いたぞ」
武具屋の扉を開き、二人を待つ。
「ありがと」
「ありがとうございます」
二人が扉をくぐるのを確認し、俺も店内へと足を踏み入れる。
その瞬間、怒声が轟いた。
「──売れねェってのは、どういうことだ!」
「売れねえってのは売らねえってことだよ! 言葉わかんねえのか!」
「わ」
二人と顔を見合わせる。
「喧嘩、でしょうか」
無数の武具が展示された店の奥で、武具屋のおじさんと見覚えのある長髪の男が睨み合っている。
「……お、おい、やめとけってえ」
こちらも見覚えのある禿頭の大男が、戸惑うように周囲を見回した。
店中の冒険者たちの視線が彼らに集中している。
「あいつら、また……」
思わず眉根を寄せる。
竜とパイプ亭でアーネに絡んでいた二人だ。
「いいか、ここに金貨六枚ある。てめェみたいなボロ武具屋の半年分の売り上げだろうが! いいから寄越せ、偏屈ジジイ!」
「おめえみたいな態度の悪い冒険者に、うちの家宝を売ってたまるかよ! だいたい、こいつは予約済みだ! そんなにミスリルの長剣が欲しけりゃ、別の店行きな!」
「こンのクソ田舎、ここしか武具屋がねェだろが!」
「街から出てけってンだよ!」
「なんだとごらァ!」
「やンのかおらあ!」
「──…………」
溜め息、一つ。
「ちょっと止めてくるか」
「あたしも行く!」
「ええ。このままでは暴力沙汰になりかねません」
数名の客を掻き分けて、武具屋のおじさんの元へと歩み寄る。
「──どうも、おじさん。何か揉め事ですか?」
俺が声を掛けると、大男を含めた三人が一斉にこちらを向いた。
「……げッ」
長髪の男が、俺を見て、明らかに動揺する。
「あっ、怪力女!」
禿頭の大男がフェリテを見て目をまるくした。
「こんにちは!」
フェリテがにこやかに返すと、大男の口角がひくひくと震えた。
「よう、兄ちゃんたち! ちょっと待ってな。こいつら追い出しちまうから」
「い、行こうぜえ……」
「……チッ」
長髪の男が舌打ちをし、足元に置いてあったラウンドシールドを蹴り飛ばす。
「あ、てめえ!」
「──…………」
立てた指先から、炎を螺旋状に走らせる。
炎が掻き消えると同時に、長髪の男を指差した。
「仕置きが足りなかったか?」
「す……ッ、すみません! イキりました!」
長髪の男は、慌ててラウンドシールドを拾い上げると、元の場所に丁寧に戻した。
「し、失礼しまーすッ!」
「お、おい! 置いてくなあ!」
お騒がせ者の二人が、どすどすと武具屋を後にする。
「──……はあ」
どこへ行っても騒ぎを起こす連中だ。
今度、あいつらのリーダーに忠告しておくことにしよう。
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