表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

115/125

115 / ダンジョンで水浴びしてみたい!

「──あ、小川が流れていますね。もしかして、あれが?」


「ああ。前にアーネに鑑定してもらった水の出所だよ」


「えへへ、何度か水浴びもしたなー。リュータがね、上流のほうで、川の水をぬるま湯にしてくれるんだ。冷たくなくて、いいんだよ」


「なるほど、さすがリュータですね」


「六層まで来るパーティも増えただろうから、もう水浴びはできないけどな。拠点のあたりって、階段の目と鼻の先だし」


「残念です……」


 本当に残念そうだ。


「七層への転移陣を設置すれば、わざわざここで水浴びをする必要もないさ。それをするくらいなら、竜とパイプ亭に戻って風呂に入ればいいんだし」


「もう、リュータはロマンをわかっていませんね。ダンジョンの中で水浴びをする。その非日常がいいんじゃないですか」


「……そうなの?」


 フェリテを見る。


「アーネの気持ち、わかるよ。とっても気持ちよかったもん」


「羨ましいです」


「うーん……」


 ロマンと言い切るほどなら、させてあげてもいいだろう。


「下流のほうに物陰の多い場所があるから、そこで浴びてみるか?」


「いいのですか?」


「今日は、アーネの初めての冒険だろ。最初くらいは純粋に楽しんでほしい」


「ならば、是非お願いしたいです」


「わかった」


「わーい! 一緒に浴びよう!」


「ええ、もちろん」


 意識野の地図を参照しながら、小川の下流へと下っていく。

 第六層には傾斜が多く、小川もまた自由自在にその流れを変える。

 しばらく進むと、小川の水が一時的に溜まるくぼみのような場所があった。

 周辺には遺跡が多く、非常に見通しが悪くなっており、水浴びをするには最適な場所と言えるだろう。


「ここならいいんじゃないか?」


「ええ、とても最高です。ナイスです」


「よーし、軽鎧(メイル)脱いじゃお」


「服は脱ぐなよ、まだ」


「脱がないよー……」


 脱ぎかねないと思ってしまうのは、普段の言動のせいである。


「──よっ、と」


 脳内に命令文(コマンド)を走らせる。

 くぼみに溜まった水が、40℃前後にまで一気に加熱されていく。

 小川の水が流れ込んでいるため、アーネとフェリテが水浴びの準備を整える頃には、適度なぬるさになっているはずだ。


「じゃ、俺すこし離れるけど、魔物が出たら叫んでくれよ。すぐに処理するから」


「うん、わかった」


「すみません。ありがとうございます」


「いいって、これくらい」


 肩越しに手を振ったあと、小川の上流へと移動する。

 二人から見えない位置に小さな橋があったため、そこに腰掛け、火炎呪で徐々に水温を上げていった。

 魚がいれば気も遣うが、この小川に魚影はない。

 生態系を気にする必要は、さしてないだろう。


「──…………」


 二人の会話が漏れ聞こえてくる。


「──ふふ。こんな場所で服を脱ぐなんて、なんだかどきどきしますね」


「わかるー。いいのかなって気分になるよね」


「でも、いいのです。ここはダンジョン。治外法権なのですから」


「うんうん。それにしても、この場所、水浴びにちょうどいいや。あのあたりなんて、お風呂くらいの深さありそう」


「浴びるだけでなく浸かれるなんて、素晴らしい環境ですね」


 ちゃぷ、ちゃぷ。

 二人が小川に入っていく音が耳に届く。


「あ、ぬるくて気持ちがいいです。さすがリュータですね」


「リュータ、川の温度ちょうどいいよー!」


 フェリテの大声に、こちらも返す。


「おーう!」


 あとは、この水温を維持すればいいだろう。

 気楽なものだ。


「私たちが上がったあと、リュータも浴びますかー?」


「あー、俺はいいよ。まだ大して汗もかいてないし」


「そうですか、わかりましたー」


 火炎呪で水温の操作しながら、光の蝶の群れを見上げる。

 本当に不思議な場所だ。

 子供の頃に見た夢の世界を具現化したようで、俺はこの第六層がたまらなく好きだった。

広告下の評価欄より【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、執筆速度が上がります

どうか、筆者のモチベーション維持にご協力ください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ