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非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~  作者: じょー
第二章 まだまだ共通ルート
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お待たせしました!

二章のラストですね!


よろしくお願いします!(´ω`)



 


「ふんふふんふっふー」


 開店前の掃除時間。静かな店内だと、その陽気な鼻唄がよく聞こえてくる。

 天気も良く、暑すぎず寒すぎずどんよりとした空気感も無い、清々しい日ではある――だが否、スズのテンションが高いのにそんな事は関係ない。

 単に楓ちゃんが来るからだ。ファンクラブである『楓ちゃんを愛でる会』のメンバーだけあって、狂喜している。


「もうすぐ開店時間か。スズ、最終チェックして問題がなければ道具片付けといてくれ」

「はいはい。奥の机って確保しといて良いんでしょ?」

「おう。くっ付けておいても良いぞ」


 結局はノアちゃんに電話を掛けて連絡をし、千夏にも同じように伝えておいた。楓ちゃんに関しては元よりいつも勉強道具を持ってくるため、何も伝えていなくとも大丈夫だ。

 しかし、学年が同じの俺、千夏、スズは良いとしても他二人は学年が違う。テスト勉強の集まりとしてはちょっと仲間外れになってしまわないかだけ、心配である。

 いざとなれば楓ちゃんを先生にして、俺達が教えて貰う形にすれば一体感は出るかもしれないが……。


「スズって、頭良い方?」

「……まぁまぁ、ボチボチって感じ? リョウは?」

「まぁ、悪くは無いってぐらい? 苦手は無いけど得意な物も無いし」

「ふーん。ちなみに、千夏ちゃんは?」

「千夏? 学年でいうと、いつも二十番以内には入ってるな」

「あ、頭良いのね……。まぁ、それなら教えて貰うのは千夏ちゃんが居るし大丈夫か」


 千夏がアホになるのは寝起きの時だけで、平時は頭が良い部類に入る。もちろんウチの学校レベルにはなるが、運動神経も良く、頭も良い。その上、女子に優しいから特に女の子からは絶大な人気があるのだ。

 一般的に誇れる物の中で、俺が唯一千夏に勝てるのは料理くらいになるだろうか。


「幼馴染のスペック高過ぎてツラい件」

「ははっ、頭に『(努力を怠って、ギャルゲーばかりしていたらいつの間にか)』が抜けてるわよ?」

「嫌すぎる……本当だからこそ嫌すぎる……」

「『楓様が尊すぎてヤバくてもう尊い件』……ね」

「頭の悪いタイトルだなぁ」


 何にもならない会話をしつつ、開店の準備を進めていく。

 学校ではクラスメイトとあまり会話をしている様子の無いスズだが、こうして喋ってみると意外と話しやすい。ただ、口を開いても女子高生らしい言葉が生まれないのが残念な部分だろうか。

 オタクが多いか少ないかと言われれば――そりゃ、誰しも何かしらのオタクではあるのだろうが、女子高生ゲームオタとなるとやはり数は少なめになるだろう。

 そりゃ、学校では口数も少なくなるのも頷けるな。

 それに、(みずか)らイケメンじゃないと話し掛けるのも難しい雰囲気を常に醸し出している部分もあるし、余計に会話の機会が減っている気がする。


「椋一、鈴乃さん、来たわよー」


 声が聞こえた方を振り向く。お店の入口ではなく、裏口から通って来た調理場の方を。

 そんな所から入ってくるのは店に慣れた人物しか居ない。慣れた声で振り向く前から分かっていたが、千夏だ。


「おい、千夏。調理場は神聖な場だぞっ! 入る時はアルコール消毒をだな!」

「はいはい、やりましたやりましたよ。シュッとしてササッとね」

「なら良いけども」

「神聖な割りに条件がチョロいわね……」


 まだ開店には数分あるが、来てしまったものは仕方ない。とりあえず席に案内して、先に座っていて貰う。

 そして数分後――十時の開店時間と同時に彼女はやって来る。こちらはいつもと同じタイミングで、なんか安心感すらある。


「いらっ――」

「楓様! いらっしゃいませ。いつものお席は確保してありますよ!」


 なるほど、それで奥の一角を入念に掃除して整えていたのか。


「おはよう鈴乃ちゃん。りょーいち君も! 今日は良い天気だねぇ……あっ! 千夏ちゃんも来てたんだね、早いねぇ」

「おはようございます楓ちゃん」

「楓ちゃんは今日も可愛いですねぇ」

「さん付けして欲しいんですケド! 私、先輩なんだよ!?」


 今日も可愛い楓ちゃんである。

 ぷんすか言いながらも、定位置に座れば足がプラプラ状態になってしまい威厳も何も無い。ただ、スズにとってはクリティカルヒットみたいだけど。


「カハッ……。さ、最高かよ……あたしの命は今日で終わりか?」


(今日で終わりそうだな……うん、ノータッチでいこう)


 いちいちスズにツッコミを入れていたら重労働になる。今日一日はポンコツと化していると思った方が良いだろうな。


「りょーいち君、いつものお願いするんだよ!」

「了解です。千夏は?」

「アタシは……そうね、シュワシュワで」

「はいよ」


 ――カランコロン。


 飲み物を作りに調理場へ……そんなタイミングで入口のドアが開き、息を荒げた少女が入ってきた。


「はぁ……はぁ……ま、間に合ったっす?」

「ノアちゃん。いらっしゃい!」

「はぁ……ふぅ……パイセン!」

「ノアちゃん!」

「パイセン!」

「パ~イ~セ~ン~」

「ノ~ア~ちゃ~ん~」


 調理場と入口。俺とノアちゃんの距離はどんどん縮まり、お互いに両手を広げた。


 ――ギュッ。


「パイセン!」

「ノアちゃん!」

「あたしが言うのも何だけど……言語能力が劣化してるわよ?」


 ふっ……愚かなスズめ。

 むしろこれは、言語能力の限界を超えて対話している超高等テクニックと言える。

 想像力の欠如した普通の人間同士だと、言葉を使った会話は必須だろう。それはもう、仕方のない事と言える。

 ただ、俺とノアちゃんのレベルにもなればもはや言語は不要だ。ハグすればだいたいが理解(わか)るのだ。


「えへへ、言われた通りに勉強道具を持ってきたっすよ!」

「ふふっ、ノアちゃんは偉いな」

「あたしが言うのも何だけど……あんた、ノアちゃんに甘すぎない?」

「愛理っす」

「……何でリョウだけ良くてあたしはダメなの!?」


 変なことを言っているスズはひとまず置いておいて、ノアちゃんも席に案内する。千夏と楓ちゃんとも(ほが)らかに挨拶を交わしているし、今日は和気あいあいとした雰囲気になりそうだ。

 ノアちゃんからも飲み物のオーダーを聞いてから、俺はスズを連れて調理場へと向かった。

 今日は勉強会がメインとなる。そこのオンオフの切り替えはしっかりしなければ、ただただ効率の悪い勉強会となってしまう。

 楽しい会話もたしかにしたいけれど、特にお嬢様の成績が下がれば、集まる機会そのものが減る事だって考えられる。

 休憩のタイミングで提供するおやつについては既に考えてあるし、あのメンバーの中では一番ダラけそうな俺がしっかりすれば、他のみんなだってしっかり集中するだろう。


(頑張ろ……気を抜くと新作の料理とか考え出しちゃうけど、せめて顔に出ないように頑張ろ)



 ◇



「っ、んーーーっ……」


 固まった体を(ほぐ)すように背伸びをする。

 一息入れ様とグラスに手を伸ばしてみるも、中身はあと一口程度しか残っていなかった。

 たまに来るお客様の応対をしながらの勉強となったが、そのお陰で、集中力も断続的にだが続けられた。長く集中出来ない俺にとっては良いやり方だった気もする。

 外を見れば太陽が隠れ始め、オレンジやピンクや群青色が広がる夕焼け空になっていた。


「千夏ちゃ~ん、数学が分からんし~」

「教えてあげるから泣きべそ掻かないの」


 スズはどうやら数学が一番の苦手科目らしく、事あるごとに千夏に教えて貰っていた。


「……なるほど。パイセーン、自分も数学で分からない所があるっす!」

「どれどれ……フッ、なるほど。ノアちゃん? 香華瑠はレベルが高いから帰って千歳さんにでも聞きなさいね?」

「ア、ハイ……っす」


 俺に出来る事なんて飲み物のお代わりを持ってくるぐらいなものだ。


「ノアちゃん、門限は大丈夫?」

「あっ……そうっすね。徒歩っすから、もうそろそろ行かないと怒られちゃうっす……」

「オッケー。じゃあ、送るよ」

「それならアタシが送って行くわよ? 椋一と鈴乃さんは夜からの準備があるでしょ?」

「良いのか?」

「行きは自転車を押して行くし、問題ないわ。愛理ちゃんの安全の為だもの、それならアタシの方が適任でしょ」


 確かに強さだけを見るなら千夏の方が安全だ。ここはご厚意に甘えさせて貰うとしよう。


「楓ちゃんはどうする? 一緒に帰る?」

「そうだな~、千夏ちゃんと一緒なら安全だからなぁ……うん! 私も愛理ちゃんを香華瑠まで送るんだよ! そんで、千夏ちゃんと途中まで一緒に帰るとしようかな!」

「うんうん、それなら準備出来たら行きましょうかね」


 勉強会は今日だけじゃない。言うなれば、今日からテストまでの期間は全て勉強会となる。学校から帰って来てからだから短い時間にはなるし、一人で勉強する日もあるだろうが、一週間と少しは勉強の時間が増えてゲームは控えめになる。

 しばらくヒロイン達とは距離を取らないといけないが、離れてる時間がお互いの大切さに気付かせてくれる……なんて話もあるくらいだし、それを思えば我慢も苦じゃ無くなる。

 成績が落ちると店の手伝いは続いたまま、ゲームの時間だけが削られるし、死活問題なのをしっかり意識して勉強しないとな。


「じゃあ、送ってくるわ」

「りょーいち君、また学校でね!」

「パイセン、またっす!」


 三人が店を出るまで手を振って見送る。


「はい、今日の営業は終わりね」

「スズよ……楓ちゃんにやる気の在り方を依存し過ぎだろ……」

「楓様のコップだ……ゴクリ」

「うん。楓ちゃんが来た日の楓ちゃんが帰った瞬間に度にそのセリフ言ってるけど、それは絶対に駄目だぞ?」

「カエデニウムを……てか、女の子同士だからセーフじゃない?」

「片方が異常者かつ一方通行の狂気だからアウトだなー」

「チッ。何を常識人ぶってるんだか……やれやれ」

「常識人だがっ!?」


 とても心外だ。楓ちゃんと過ごす時間が増えれば、それなりに慣れて落ち着くかと思いきや――結果は真逆になった。

 むしろ、些細な行動すらも観察出来る環境になった事でスズの楓ちゃん愛は深くなっている。キモくなっているとも言える。

 何も出来なかったスズが少しずつ料理も掃除も出来るようになってきて……不思議な事に、それと比例するように変人になってしまった。


「はぁ……。とりあえず食器類は俺が洗うからスズは夜用のメニュー表をテーブルに置いていってくれ……」

「はいはい、やりますよー」


 急いで食器を片付けて、夜に向けて準備を始める。

 料理の準備から酒類の確認。あとは母さんを呼んだりと、お客様が来るまでの短い時間の内にやってしまう。

 明日からの学校の事を考えるとこの時間から憂鬱になるけれど、仕事は仕事としてしっかりとこなしていく。その内、プロフェッショナルとして取材とか来ちゃったりしちゃったり……なんて妄想をたまにしている。


「ふっ……プロか」

「なーに、呟いてんのよ?」

「いやいやなんでも。スズよ、憂鬱な月曜日の朝を乗り切る為に、明日サンドイッチでも作って来てやろうか?」

「はぃぃ? 意味分かんないけど、とりあえず学校で話し掛けて来ないでよ? 男子から『気軽に話し掛けても良い人』って思われたら面倒臭いし。ま、千夏ちゃん経由で頼むけども」

「前々から思ってたけど、男子を避けるのは面倒だからなのか?」


 普通……普通と言っていいのかもよく分からないが、普通の美少女ならカースト上位者同士でキャッキャするものだと思っている。

 だが、スズのスタンスは違って、一人で居ることも多くてキャッキャなんてしていない。

 常にクール&ミステリアスだ。それだとしても、男子を寄せ付けない理由がよく分からない。モテモテなんて羨ましいとすら思えるのだが。


「ま、それもあるけど。それもあるけど……寄ってくるイケメンはただのイケメンじゃない? 話し掛けて来ない陰の男子は陰の男子でしょ? 無いのよ……面白味ってのが」

「お、おぉ……お?」

「だーかーらぁー、女子が一人で居る所に話し掛けて来る奴なんて絶対に変な奴だと思うじゃない? なのに! 普通なのよ! ウチのクラスの男子はッ!」

「え、なに? ヤベー奴が好きなの?」

「勘違いしないでよね……面白味とギャップを求めてるだけなんだから」


 久々に相容れない部分が出てきた。

 イケメンがイケメン。おとなしいタイプはおとなしい……良いことじゃないか。何に不満があるのかすら、俺には分からない。

 きっとギャップが無い事について退屈なんて意見を持っているのだろうが、各々のタイプにはそれぞれの面白さはちゃんとある。求めなくて良いんだよ、ギャップなんてものは。


「いやいや、普通にモテて……それで良いじゃん?」

「はぁー……分かってない分かってない。予想通りであることのつまらなさが。授業に乙女ゲーの科目を追加すべきね」

「言うほどギャップのある男子とか居るか? 『おバカ』で一括りにしても良いレベルじゃない? 男子高校生は特に」

「まぁ、居ないことも……ないとは思うけど。……はいはい、この話は終わり! しょうもない男子は私に話し掛けない事で終了!」


 話が強制的に終わって、スズは仕事に戻った。俺も仕事に戻る。

 しばらくして、千夏から無事に送り届けたとの電話があり、そのまま家に帰るとも言っていた。

 なら後は、昨日と同じように時間まで働いて、スズを送れば終わりとなる。

 明日からは特に予定も入ってないし、更に翌週第四週にある交流会前のテストに向けての勉強に力を入れる一週間になるだろう。千夏には勝てないとしても、スズとは良い戦いをしたいものだ。


「さ、気合いを入れていきますか!」


 ◇◇◇


 ――そして、気合いを入れた日から時間は流れ、テスト期間最終日でもある月末の金曜日がやって来た。


 テストの結果は返ってこないと分からないが、感覚的には今回はそれなりの手応えがありそうでホッとしている。


「それじゃあ、校門前に集合するように!」


 今日はテストだけではなく、ウチの学校の二年生のほぼ全員が香華瑠女学園へと向かう、交流会の日。

 三年生と一年生は早々に部活や帰宅していく中、お弁当を片手に二年の生徒達は移動を始めた。

 先月と同じく団体行動をしながら香華瑠へと足を運び、香華瑠の教頭に出迎えられる。トイレには先に行っていた為、今回は先月の二の舞にはならず、すんなりと体育館へと移動できた。

 ノアちゃんとの出会いを考えると、やはり……とも一瞬だけ考えたが、あれは特殊な状況が重なっただけの偶然の産物なのを思い出して、慎重に行動する事にした。


(相変わらず建物は綺麗だし、広いよなぁ。今日もあのベンチでゆっくりするのもアリかもしれないな)


 そんな事を考えながら、交流会開始のタイミングまで静かに待機していた。

 まさか今日を境に運命の歯車が動き出す事になろうとは……この時、まったく予想にもしていなかった――――。



●幼馴染

◯ロリ先輩

◯美少女

◯後輩お嬢様

◯大和撫子お嬢様

◯ゴージャスお嬢様


次から三章です!

個別ルートですよ!個別ルート!個別ルートに入って行くので、ハーレム的な感じは薄まリマすねぇ……(´ω`)

章ごとのタイトルに悩みますね。ハハッ



誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)

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