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お待たせしましたぁ~
最近はもうゲームばっかりしてる!
それで更新が少し遅れるという……ね(´ω`)
ワイワイと二階の方から声が聞こえだした。もう間もなく降りてくるらしい。
(思ったより時間が掛かったな?)
普通に着替えて戻ってくる程度なら、遅めに見積もっても一〇分くらいだろう。それがどうしてか、十五分は過ぎている。
あまりにも来ないから、ついついネットで情報を集めすぎたまである。
まず最初に顔を見せたのはスズで、その顔は、柔らかいバットでフルスイングしたくなる程のニヤニヤとした顔だった。
「センス(笑)」
「こいつッ! 開口一番それかっ!」
俺がいくら憤慨しようとスズはただ小バカにしたかの様な顔をするだけであった。
さっきスズ自身も言っていた様に、自分で言うなればまだしも、他人に言われるとムカついて来る。
「ふんっ、全部がダサい訳じゃないし? コーディネートが下手なんじゃ無いか?」
「いやいや、ダサTとジャージの組み合わせでオシャレにする方が難しいから。お嬢様オーラ消えてるから……二人とも! 出て来て良いよ~」
スズの声で、階段からヒョコッと二人が姿を現す。
「……え?」
Tシャツ姿で出てくるとばかり――思ってた姿とは違い、二人はパーカーを纏っていた。俺の持つ中で最も無難な二色。無難グレーと無難黒を。
「私、パーカーというのも初めて着ましたわ!」
「動きやすいですし、なんと言いますか、こう……気軽に着れるお洋服と言った感じですね」
大層ご満悦なのは良かった。それに、女の子がパーカーを着て萌え袖になるというのは、大変素晴らしいと思う。
ただ、俺の自慢のダサTがまったく見えていない。それはどういう事なのかと、スズに視線を送る。
「二次元ばかり見ているリョウの目に毒になると思ってのパーカーよ。二人ともスタイル良すぎて……なんというか、普通にTシャツだけだとエロい」
「お、おぅ……あ、そういう事ね。うん。ま、そういう事なら……」
「はい今、絶対に二人のあられもない姿を想像したでしょ。これだから男子は……あーやだやだ」
「は、はぁ? 何も想像してませんけど? 別に何も想像してませんけど?」
顔には出してない筈なのに、どうしてバレたんだろう……。これが女子の超直感というやつか。
(そもそもスズがエロい……とか変なことを言うからだ。そんな事を言わなければ……)
やけに強調された胸元。パーカーはまだしも、下に着ているTシャツは伸びてしまうのではないか、と思わされる。
特に鳳千歳よりも楼王院麗華の方が、やはり凄い。
鳳千歳は凹凸のバランスが良い体型をしている……とパッと見で判断がつく。鍛えてたからスタイルの良い千夏とは違って、より柔らかそうな、女の子らしいバランスの良さだ。
スズもスズで整った体型をしているとは思うのだが、流石に楼王院麗華と比べると――特に胸元が――普通と思ってしまう。
そんな事を考えていると、視界の端に居た鳳千歳が体を丸めているのに気が付いた。
「椋一様……やはり……」
「……――待って! その、見てないからっ! エロい目でなんか見てないから! 本当にっ!」
不思議なことに、否定をすればするほど見ていた感じになっていく。鳳千歳もそんな俺の反応を見て、腕で胸元を隠しながら楼王院麗華の後ろに隠れていった。
(あぁッ!! 盛大に好感度が下がっていくのを感じる!)
ジィィ……と俺のことを訝しみながら見詰めてくる。
その反応から、まだ完全な拒絶はしていない――と、思いたい。たぶんまだ、大丈夫。ギリギリの所で踏み留まれている……のかなぁ、これ。
選択肢ウィンドウが視界に現れてはくれないが、好感度が下がる選択をしてしまった感がある。
「おーっほっほっほ! 北上椋一、私は見られても困りませんわぁ。いつでも楼王院家の娘として私は在りますので!」
「いや、なんで逆に胸を張れるんですかね……ていうか、見てないですけどっ!」
(ちくしょう、スズと楼王院麗華め……鳳千歳のテンションを読み取ってくれよ)
このままでは、二人の余計な一言で、男を苦手とする鳳千歳と距離が開いてしまう。
だが、たしかに見ていたのは事実だ……。悪いとかそんなのを思う前に、ほぼ反射的に胸元を見てしまっていた。
それをまずちゃんと認めなければ……今から、嘘で突き通すしか選択肢が無くなってしまう。
体裁を良くしようと「見ていない」と言ってしまっているが、それも失敗だったかもしれない。
男が苦手となった理由を考えると、せっかく友達になれた俺が男としての誠実さすらも欠いてしまえば……。
(良く、ないよな……)
鳳千歳は俺の知っている女子の中で、特に距離の詰め方が難しい子だ。思わずやってしまった自分の行動に嫌気が差して、ため息が漏れ出そうになる。
好感度が見えれば、きっとまだ一〇くらいなのに……いきなり六〇、七〇くらいの無遠慮さで接すれば引かれるのは当然だと言うのに。
ノアちゃんや楼王院麗華はグイグイ来てくれるタイプ。一番ありがたい。好感度も上がりやすい。
千夏やスズは同じくらいお互いに歩み寄るタイプ。一番多いタイプだろう。努力すれば好感度もそこそこ上がる。
鳳千歳は――俺から、歩み寄らなければ行けないタイプ。一番難しいやつだ。自分が頑張らないと、好感度は決して上がらないし上昇する値も少ない。
どのくらい詰めれるのか、どれくらい詰めよったら怖がられるのか。本人すら曖昧だろうその精神的な領域に、俺もまだ軽はずみで踏み込めない。
どうやら友達作りを怠って来たツケが、こんなところで回ってきたらしい。みんな、どういう風に友達とのスレ違いを解消しているんだろうか。
……謝る? 何を? 怖がらせたことを? ――罪悪感が薄い今の状態で?
鳳千歳に謝るのは簡単だ。嫌な思いをさせてしまったというのも理解している。
それでも……それほど大層な罪悪感を抱えているかと言えば、そうじゃない。
笑って済ませる程度の意識しか無い――無かった。
(あぁ……そうか。この『差』がまだあるのか。どれぐらい怖いのか、どれぐらい嫌な気持ちなのか……それが俺はまだ分かってないのが駄目なのか)
「あ、あれ……リョウ? 何か表情が暗いケド? じょ、冗談よ? 今のは、冗談だからね?」
「いや、うん。悪いのは俺だから、たしかに胸元を全然見てないかと言えば嘘になるし……ごめんなさい、鳳千歳さん」
深々と頭を下げた。とりあえず、コレが今できる精一杯だ。鳳千歳をスズみたいな普通の相手と思ってはいけない。男が苦手というのがどれ程のものなのかを、今一度認識から改めなければいけない。
胸元を見たことに対する謝罪というよりは、気持ちを理解しきれてない事に対しての謝罪をする。
みんなが裏の意味に気付くことは無いだろうけど、俺はちゃんと覚えておかないとな。
後で、楓ちゃんにいろいろ相談してみるのも良いかもしれないな……。
「おーっほっほっほ。鳳千歳は何も分かっていませんのね? 男性が『見ている』のはいつだって魅力的な女性だけですのよ! つまり北上椋一が私と貴女を見ているのは魅力的に映ってる証ですわ」
頭を下げたまま、楼王院麗華のフォローを聞く。
「あー……たしかにそうかも。男子なんて自分が可愛いと思う子しか見てないし。後は視界に入ってるだけ~って感じだから……鳳さん、そんな引かないであげて」
頭を下げたまま、スズのフォローを聞く。
楼王院麗華はいつも通りの持論によるフォローを。スズは流石に俺が頭を下げたのに驚いたのか、すかさずフォローを入れてくれた。
ありがたい援護ではあるけれど『いや、そもそも誰のせいで……』という言葉が脳裏に浮かんでくる。
たぶん、こういう浮かんできちゃうところが俺の良くないところなんだろうな。
「椋一様……頭をお上げください!」
「いいやッ! まだ、あげませんっ! ちょっと自分を許せないというか!」
「えぇ!? いえ、大丈夫ですから。私も過剰に反応してしまっただけですし……」
「そういう部分まで想定していれば良かったんです! 結局は友達として……まだ鳳千歳さんを理解してあげられて無かったんです。ごめんなさい」
ちょっとだけ、気持ちが軽くなる。
自己満足ではあるけれど、認めて、ちゃんと謝れば……次にやるべき事が少しは見えてくるものだ。
「えっ、えっ……も、申し訳ありません!」
「なんで鳳さんまで謝ってんの?」
「謝らせてごめんなさい!」
「謝罪への謝罪!? リョウ、それはもう訳分かんなくない?」
それから少しの間、俺と鳳千歳はお互いに頭を下げ続けた。スズが去り、楼王院麗華が飽きて仲裁してくれるまで、二人して調理場でペコペコと謝り続けていた。
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