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非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~  作者: じょー
第二章 まだまだ共通ルート
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よろしくお願いしますぅ!




 


 ――お昼も過ぎて夕方。

 離れた場所に居る女子会にも動きがあったみたいだ。

 ゲームも一時中断して、学生らしく課題に取り掛かっていた俺も母さんに呼ばれて合流する。


「僕くん、今日はご馳走してくれてありがとうね。あと、スズの事も」

「いえ……」


 どうやら今日はもう帰るらしい。

 娘さんの働き口が本当にここで良かったのか、俺には分からない。ま、本当にちゃんと働いてくれるのかも分からないが……。


「北上」

「なんです?」


 真っ直ぐ視線が交わる。だが、何かを言う前に視線を逸らした……俺の方から。

 腐っても鯛。ニートでも美少女。真正面から顔を直視出来るのは四・九秒が限界だった。

 見慣れればもう少しタイムは伸びるかもしれないが、新名鈴乃の外見に騙されない為にもあまり目は合わせない方が良いかもしれない。


「ありがとう」

「…………いえ」


 何に対してか、それは分からない。

 けど『ありがとう』は伝えたい側の満足を表す時の言葉だ。今日一日、スズの中で何かが満足したのだろう。

 伝えられた側がするべき事は、それをただ受け取るだけであり……心当たりが思い浮かばなくとも詮索する必要はあまり無い。


「鈴乃さんの初出勤は日曜日なんだよね? 私も様子を見に来ていい?」

「駄目って言っても勝手に来るだろうよ……」

「まぁね! 鈴乃さんも別に良いよね?」

「あははー、ちょっと恥ずかしいけどねー」


 スズに関して言うならば、四月のクラスメイトとして過ごした一ヶ月を、今日の一日が軽々と凌駕(りょうが)していった。

 知りたくなかった事の方が多くて、同じクラスになった喜びは早々に無くなったけども……。

 それでも、ゲーム好きという点においては同志を見付けたという気持ちだ。ただ、ギャップを王道とするその考えは正反対になるけど。

 母親同士が従姉妹じゃなければ、きっと関わる事はなかっただろう。学校で属しているコミュニティ、学校外での生活スタイル、趣味……ほぼ接点は無い。

 ただのクラスメイトだったのに……そう考えると、これはアレみたいだと意識してしまう。


「ふっ……まるでギャルゲーみたいだな」

「ハッ、まずは前髪伸ばしてコミュ力高めたら?」

「…………え? 鈴乃さん?」


 ――新名鈴乃が、ミスを犯した。

 俺のどうでもいい独り言に完璧に近い返しをしてしまったがばかりに、その完璧さが故に、千夏がナニカを感じ取ってしまった。

 おそらく、千夏以外なら一瞬くらい気にはなっても気にしない程度の事。だが、俺がギャルゲーをずっと話してきた千夏は止まってしまう。

 スズが内心でダラダラと汗を掻いているのが、手に取るように分かる。


(しかし、いつもどう誤魔化してたが分かるいい機会かもしれないな。ここはお手並み拝見といきますか!)


 あれだけ擬態をしていれば、ボロが出た回数もまったくのゼロでは無いはずだ。

 それなりに取り繕って来たからこそ、こうして今日までミステリアスで無愛想なキャラを守り抜いてこれたのだろうし。


 ◆


「えっと、その……前髪がどうとか、コミュ力とかって言うのは……」


 あびゃびゃびゃびゃ……やばいやばいやばい。ミスったミスったミスった。

 この私とした事が……くそっ、リョウのせいだ。ちくしょう。

 千夏ちゃんは学校での人気が高い。変な人というイメージを持たれてはならない重要人物だ。可能なら仲が良い友達とかになっておくのがベストな子。

 そもそも何が『ギャルゲーみたいだ』だ! 私を攻略するつもりか? 


 ………………いや、いやいや。いやいやいや。


 ならば最低限、経済力と包容力のパラメーターを極めてから出直して欲しい。うん。


 ――そんな事はともかく。千夏ちゃんへの誤魔化しだ。

 大丈夫、大丈夫。まだ表情筋は耐えている。だが、時間の問題。そんなに時間はない。

 頼みのリョウは……駄目だ、(だんま)りを決め込んでいる。普通はフォローすべき時に黙りだ。

 今日一日、いろんな事で驚いたけど分かった事がある。


 ――リョウ(こいつ)とは相容れない。


 自分で言うのもなんだけど……私は一人だと、何にも出来ない。

 学校の勉強はそこそこ出来る。両親のお陰で顔が整っていて、スポーツは苦手だけど女子としては問題じゃない。

 だから、学生としては何も問題はない。あるとすれば嫉妬や陰口とか告白される事くらいだけど、いちいち気にしてはいられない範囲の事だから大丈夫。

 生きていく上で問題は無い。

 乙女ゲーさえすれば、そんな気疲れは吹っ飛んでいくしね。


 問題は、家での事だ。

 帰ったらさっさと着替えてパソコンの前に座り、動かない。動くとしても、ご飯とトイレと風呂の時くらいだけだ。

 乙女ゲー、ネトゲ、乙女ゲー、ネトゲ……そんな毎日。正直に言えば、太りにくい体質を遺伝してくれた事にお母さんへの感謝が絶えない。

 だから、自分で家事炊事をした事がほとんどない。料理はしない。洗濯もしない。掃除は面倒だから自分でするのはコロコロだけ。

 お母さんが居なければ……どうやって生きていくつもりなのか、そう聞かれたら答えを返せない。


 だから……そもそも。そもそも私は――働きたく無い。

 今日だってお母さんにお小遣いを減らすと言われ、仕方なく来ただけだった。

 楓様の件が無ければ働く気なんて無かった。どうせ、私みたいなのが居ても迷惑にしかならない。……何も出来ないんだから。

 なのに、リョウも恵里さんも受け入れてくれて、一周回って本当に申し訳ない気持ちだ。


 私は何も出来ないのに、どう? リョウは全てを自分でやっている。正反対だ。

 料理も出来る、片付けも出来る。学校ではあまり目立ってない。私とは逆だ。

 何より、一番逆なのが『好み』だ。

 私が乙女ゲーの攻略キャラに求めるのは『ギャップ』だ。容姿は基本的にみんなイケメンだからあまり拘ってない。

 だからこその内面の話になる。


 強いのに心は弱いとか。

 普段は弱そうなのにいざって時は男らしいとか。

 見た目チャラいのに一途とか。

 人当たり良いのにドSとか。


 ……とにかく意外性が欲しい。そっちの方が面白いと思う。

 なのに、リョウは王道がどうたら言っている。


 強そうな奴は心も強い。

 気弱そうな奴は気弱い。

 チャラい奴はチャラい。

 人当たり良い奴は当たりが良い。


 つまりは、こういう事。うん、やっぱり相容れない。

 やはりギャップがあるからこそ面白いと私は思うし、実際に面白い。

 そもそも、ギャップなんてみんなそれぞれ何か持っているはずだ。だからむしろ『ギャップこそ王道』と私は言いたい。リョウに、強く強く。


 そもそも、人にはギャップが潜んでいる。特に女の子には。

 男子が勝手に理想を描いてしまうのは仕方ないのかもしれないけど、それで勝手に落胆されても困ってしまう。リョウは落胆というか、発狂してたけど……あれは傑作だったわね。

 そんなリョウにだってギャップはあった。

 私に対して私の事を『イヤ』とか『キモい』とか堂々と言える男子は居なかった。

 私の素を見ても驚きはしても引かなかったどころか、むしろ軽口を言い合えた。

 それが、リョウみたいな普通の男子というのはギャップと言え――。


 いや、違う(・・)認めては駄目なやつだ(・・・・・・・・・・)

 ギャップじゃない。そう、リョウにギャップなんて無い。

 女子に対して酷い言葉を吐く男子なだけで、ギャップじゃない。


 とりあえず相容れない。今も困ってる私を察して助け船を出さない所とか、本当に相容れない。


 ……そう。そうだ! どうにかしてリョウに全部を押し付けてしまえば良いんじゃない?

 私を困らせた原因はリョウにあるんだし、リョウのせいにしてしまえば丸っと解決する。

 簡単な事だったのね。最初から思い付いていれば変な空気にならずに済んだし、テンパる事もなかった。

 まずはいつもの淡々とした大人びた私に切り替える。


 困り気味の「あははっ」感情薄めで平たいトーンの「あかさたなはまやらわ」……よし。大丈夫。いつも通り。


「あのね千夏ちゃん。今のは千夏ちゃんが来る前に、北上が私にギャルゲー? というものについて説明してきたから、そう返しただけよ?」

「あぁ~、なるほど!」

「北上が熱く語っていてね? 北上っていつもこうなの?」

「そうねぇ……時たまにキモいくらい饒舌になる事があるのよね。なるほどなるほど……キモキモ状態で鈴乃さんにも話しちゃった訳ね!」

「キモキモ……ふふっ。まぁ、聞くだけでも楽しかったから良かったけどね。北上って意外と笑わせてくれるんだね」


 リョウは本当に笑わせてくれる。主に鼻でだけど。

 千夏ちゃんの幼馴染がリョウというのは学校でも有名だし知っていたけど……なるほど。

 こんなに明るくて元気で可愛くて良い子が隣に居たら、そりゃ再従兄妹なんて忘れますよね。小さい頃に一日ですものね。


 …………ふん。

 何か私だけ覚えてるのも(しゃく)に思えてきた。学校で話し掛けて来ても十回に九回はとりあえず無視してやろうかしらね。

 はぁ……特定の記憶だけを忘れられる機械とかないかな。


 ◆





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)



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