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非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~  作者: じょー
第二章 まだまだ共通ルート
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お待たせしました!

よろしくお願いします!



 


 今度はよく分からない事を叫んだ彼女に母親達からの視線が飛ぶ。それも一瞬の事ではあったが。

 楓ちゃんの可愛さは老若男女を問わないと思っていたが、まさかこんな近くに危険思想の持ち主が居るとは思わなかった。距離を取るべきか迷うところだ。


「まさかお前……あの『楓ちゃんを愛でる会』のメンバーなのか?」


 噂でしか聞いたこと無いが、楓ちゃんを敬愛しているという新名鈴乃がそのメンバーという可能性は低くないだろう。


「もちろん。当たり前じゃない」

「当たり前なのか……無知で悪いんだけど、どういう組織なんだ?」

「知らないとかありえないんだけど……。『楓ちゃんを愛でる会』ってのは、今や人数の把握も難しい程に拡大していて、その活動内容は――『楓様を愛でる事』。それだけよ」

「キモいな」

(ピー)すわよ?」


 ニッコリと笑いながらとんでもなく怖いことを言ってのける。

 やはりヤバイ人しか所属してないのではないかと、心配になってくる。


「楓ちゃんはその会の事を知ってるの?」

「楓()ね? もちろん本人は知らないに決まってるでしょ? 陰から見守ってるんだから」

「そうか……」

「それより、どうして北上みたいなのが楓様の電話番号を知ってるの? 事と次第によっては粛清なんだけど……」


(怖っ!? なんだよ粛清って……それを何も変だと思わずに言うとかヤバすぎるな)


 目が血走り始めている。答えを間違えると本当に粛清されそうだ。


「あー……ただの先輩と後輩だが?」

「粛清」

「友達……」

「粛清」

「実は恋び――」

(ピー)す。絶対に(ピー)す」


 楽しめる雰囲気じゃなかった。コレハマジナヤツダ。

 俺は慌てて両手を上げて敵意が無い事を報せる。その上で、今のは嘘だと彼女の握りしめた拳が解かれるまで必死になって伝えた。


「本当は、ここの常連なんだよ楓ちゃん」

「……常連? 楓様がこの店の?」

「分かってると思うけど、楓ちゃんの邪魔されても困るから極秘案件ですよ? 気軽にメンバーの誰かに話そうとか思わないでくださいね?」


 楓ちゃんはこの店にゆったりするつもりで来てくれている。

 それなのに、変な組織のメンバーのせいで人が増えでもしたら楓ちゃんは来なくなってしまうかもしれない。

 常連のお客様が居なくなる事は店側としても避けたい案件。それに、楓ちゃんが悲しむ事は共通認識でタブーであると思いたい。危険思想の連中が何を考えているかはまだ分からないけど。


「それは分かってる。それはそうと……」

「さ、バイトの面接は終わり! ついでにこの話もおしまいにしましょうか!」

「き、北上ぃぃぃ!」

「働く気なんて無かったんだろ! 浅ましいぞ!」


 気配を察知して、早めに切り上げようとしたのは正解だった。

 楓ちゃんに電話をしたのが良かったのか悪かったのか、今は微妙な感じになってきている。


「仕方なく働いても良い」

「何が仕方なくだ。楓ちゃんを危険に(さら)す訳にはいかないだろっ」

「楓様だ!」

「ふんっ、俺はちゃん付け出来てお前達は出来ない。それがお前達の限界だ!」


 今度は楓ちゃんについての言い争いが激化していく。

 より一層、新名鈴乃という人物が分からなくなってきているが、働かせる訳にはいかないというのはハッキリとしてきた。


「くっ、粛清を……」

「良いのかなぁ~? 俺を粛清すると回り回って楓ちゃんが悲しむぞ? 何せ、ここの常連ですからな! おーっほっほっほ」


 楼王院麗華に倣って、声高らかに笑って見せる。

 完全に楓ちゃんを盾にして石ころを投げている状況ではあるが、勝てば官軍負ければ賊軍が世の(ことわり)だ。


「北上、あんたみたいな最低な男を楓様の側に置いておく訳にはいかない」

「いや、楓ちゃんみたいな純真無垢な子の近くにお前みたいな男を取っ替え引っ替えしている奴を置く方が危険だ」

「さっきからちょくちょく言ってるけど『お前』って言うのは止めて」

「……それはごめん。今後は気を付けるから、今日はもう帰って大丈夫ですよ」


 攻防は一進一退。

『雇いたい』と『働きたく無い』という最初の関係とは入れ替わり、今は『雇いたく無い』対『雇って欲しい』の構図が出来ていた。


「私の素を口外しない事。私の素を許容する事。学校じゃ北上から話し掛けて来ない事を条件に雇って」

「おい、何で俺が条件を飲む側なの? 普通逆じゃない?」

「分かった……渋々だけどタメ口は許可してあげる」

「なんなの? もう、本当になんなの?」


 この状況が既に特殊と言えるのに、まさかの雇って欲しい側が要求をしてくるという意味不明な状況。

 図々しいというか、遠慮が無いというか、一言で言うなら個性が強すぎる奴だ。


「料理は?」

「出来ません」


「洗い物は?」

「手荒れがちょっと」


「接客は?」

「愛想笑いは一番の特技かな」


「働く意欲は」

「楓様が来ない日は無い」


 雇うメリットがひとつも無い。正直なのは良いことかもしれないが、やはり雇うメリットが無いと決定はできない。

 今のところ評価ではマイナスで、それを覆す何かが無いなら採用は難しい。


「何か……無いの? 好きな事とか、得意な事とか」

「……絶対に口外しない?」

「まぁ、言われたくないなら努力はするけど」


 言いづらい事なのか、口をモゴモゴとさせてはいるが言葉が出てこない。

 もう何を聞いても驚きはしないと思う。ギャップも行き過ぎると驚きを越して引くという事が分かった今日だ。


「私、家に帰ったらすぐに部屋に引きこもるじゃん?」

「知らないけど」

「で、すぐゲームをし始めるじゃない?」

「知らないけども?」


 話し方に引っ掛かりを覚えるが、ゲームという魅力的なワードが聞こえてきた。

 俺は(もっぱ)らギャルゲーをやっているけど、他のゲームも嫌いという訳じゃない。

 アクション、パーティー、対戦、RPG、シューティング、スポーツ、ゲームとざっくり言ってもジャンル別にすると幅が広い。


「ゲームって……ジャンルは?」

「ネトゲ……と」


 ネトゲ……ネット上でのオンラインゲーム。ハマると危険という情報を見て手を出さなかったジャンルだ。

 男子も女子も関係ないと分かってるつもりでも、女子高生がそれに手を染めているということは、結構なガチ度合いなのではないだろうか。


「と? 他も得意ジャンルが?」

「………………乙女ゲー」

「は? え? ……なんだって?」

「知らない? 男側でいうギャルゲーみたいなものだけど」


 違う、そこじゃない。俺がポカンとしていたのは、別のポイントだ。

 乙女ゲーの存在くらいは知っている。それこそ新名鈴乃が例えた通り、主に男がプレイするのがギャルゲーであり、女性がプレイするのが乙女ゲーだ。


「お前は……ビックリ箱みたいな奴だな」

「お、ま、え!」

「ごめん、うっかりだ。でも……あれだな。乙女ゲーって、彼氏持ち女子高生がやるイメージは無かったなぁー」

「え? 彼氏? 何が?」

「いや、新名さん彼氏持ちなんでしょ? だから、今のところ全部が意外というか、予想外な感じだよね」


 俺が言い終わると、今度は新名鈴乃がポカンとしていた。


「え? 北上、あんた勘違いしてない?」

「勘違い……とな?」

「そうそう。彼氏なんて中学の時に告白されたから付き合ったけど、イキリ出したから三日間で終わった人しか居ないんだけど?」

「――ちょっと待って? いろいろ気になるが……さっき、新名さんはモテるし彼氏の一人二人は居るって話、したよね?」

「あれは……売り言葉に買い言葉ってやつよ。 あははー……ま、乙女ゲーの男達は旦那な訳だし一緒じゃん?」


 恋愛に関するダメ出しをされた事を、俺は忘れない。

 でもまずは、混乱する頭の中を整理する必要がある。

 俺はまだ、新名鈴乃という存在を把握しきれていないのかもしれない。

 彼女は女子グループのトップに位置しており、話し掛けるには男子グループ上位に位置していないと躊躇われる存在だ。

 明るく元気で可愛い系というよりは、美人でクールでミステリアス……香華瑠女学園が鳳千歳を出すのなら、こちらは間違いなく新名鈴乃で対抗するだろう。


 それが、なんだって? ――ネトゲ? 乙女ゲー?

 いや、それはあまり問題ではない。むしろゲーム好きというのは個人的に好感が持てる。なら、何が問題なのか。

 それは、腐った性根。裏表の差。家事炊事をやる気すら無い精神――総じて『コイツ、さてはポンコツだな?』と思われても仕方ない中身だ。

 楓ちゃんを敬愛しているのは、まだマシだ。だが、イキったとはいえ三日と我慢出来ない堪え性の無さもヤバイ。


「俺さ、やっぱり王道が好きなんだよ」

「なになに? ゲームの話? だとすると失格ね、やはりギャップこそが正義。むしろ、ギャップがあって然るべきでしょ」

「……いだ」

「ん? なんて?」

「やっぱり! 俺は! 嫌いだッ!」


 新名鈴乃にそう言い放つ。

 何で彼女には熱くなってしまうのか分からなかったが、たった今、ハッキリした。

 ――(ことごと)く、とまでは言わないが相性が悪い。同じ場所に立っている様に見えて、実は全く違う方向を見ている。

 趣味嗜好が近いが故に、相容れないみたいな感じだ。


「はっ! 三次元の男よりも二次元の男の方が良いに決まってるし、別にどう思われても!」

「その考え自体は理解できる。二次元の女の子の方が理想的だしな 」


 ここまではいい。こういう考え方は流石、ゲームやってるだけはある。

 もしかすると、俺よりも更にオタクだったりするのかもしれない。

 ここまではいい。ここまでは凄く好感が持てるのだ。


「何言ってんの? ギャルゲーみたいな女子が居るわけないでしょ? 二次元の女の子より、むしろ楓様の居るこの世界にまず感謝しなさいよ。それと、まだ雇われてないからタメ口は許可してないんですけど」

「あ~あ、言った! 言っちゃいイケない事を言った! 乙女ゲーだって似たようなモノだろうがっ」


 これである……。急激な落差が唐突にやってくる。投手でもやれば奪三振王にでもなれるレベルだ。

 ケチ臭さも一級品。もしかすると、中学の時の彼氏も三日で逃げ出した、というのが真実という可能性もある。


 新名鈴乃。十六歳――ギャップ『無遠慮ポンコツゲーマー』(改)


 俺は、もう人を外見で判断する事は今後無いだろう。

 新名鈴乃――こいつは美人で器用なだけ。

 短時間であれ、俺が見付けられた長所はその部分のみ。


(それだけでも生きていく上で問題無いかもしれないけど……人間、プラス要素が二個は少ねぇよ……こいつぁ、ダメな奴だぁ)


 俺は話を切り上げて、母親達が移動した席に報告しに向かった。





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)



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