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非公式交流クラブ~潜むギャップと恋心~  作者: じょー
第二章 まだまだ共通ルート
28/71


お待たせです!

よろしくお願いします!



 


「い、いきなり叫ばないでよ……危ない人?」

「す、すみません。ただ……聞きたくない言葉が聞こえて来たので……」

「あぁ、キャラ作ってるってやつ? あんなの女子の中じゃ当たり前の話でしょ? 男子は不思議と気付かないけど、むしろ素顔を出してる女子の方が少ないでしょ?」

「イヤだぁぁぁそんなの聞きたくないぃぃ!!」


 畳み掛けてくる様に、新名鈴乃は俺の理想を壊そうとしてくる。

 どうにか立て直そうと知ってる女子を思い浮かべるが、駄目だった。千夏はクラスの女子に見栄を張っているしノアちゃんも学校ではお嬢様として過ごしている。


「あのねぇ、全員が全員そうとは言わないけどさ、クラスで大人しい子だって仲良しグループだけの時はよく喋ったりするものよ? 処世術っていうの? 私ら側からするとそういうのを身に付けてるだけ」

「…………」

「はぁ……あんた、さては彼女の一人も居ないでしょ。理想を押し付けるとか女子からすると迷惑よ? 逆に女子から『こうあって欲しい』とか毎回言われたら面倒でしょ?」


 ぐぅの音も出ない。女子が言う女子側の意見に返す言葉が見付からなかった。


「じゃあ、愛想良くしてるのも……」

「人に嫌われると面倒でしょ?」

「全員そうなの?」

「九割くらいじゃない? 素直な人だってもちろん居るでしょうし。ま、ただあたしは学校で面倒を起こさない為にキャラ作りしてるけど。どう見えてる、学校のあたしは」


 学校での新名鈴乃のイメージを、クラスの男子から盗み聞きした意見も取り入れて伝える。

 彼女は満足そうに笑った。全て計算通り、と言わんばかりに。


「ふふっ。やっぱり見た目しか気にしてないっていうのが丸分かりね。貴重な意見をどーも、男子代表の北上君」


 男子代表とか言われるのはちょっと心外だけど……美人を遠巻きにしか見てなかった自分が居たのも確かだ。

 遠くから見て、美形は良いよなぁ~と思うだけ。それだけだった。そう考えると彼女の言ってる事は何も間違ってない様にも思える。

 ただ……現実的(いや)な事ばかり言うのはいただけない。むしろ嫌いである。

 現実は見ないといけない――それは分かっている。分かった上で、俺は夢も見ているのだ。女の子に憧れを持ち続けている。

 女子代表格である新名鈴乃がそれを迷惑というのなら、ほとんどの女子は迷惑と感じるのだろう。でも、だからと言ってブレたりしたくは無い。


「新名さんは美人だし、さぞおモテになるのでしょうね」

「ま、まぁね? それなりにはねぇ」


 嫌みに近い言い方でしか出来ないが、もうこれっきりになりそうであるなら、言いたい事は言っておいた方が後悔も少なく済むだろう。


「彼氏の一人や二人くらい当然(・・)にして当たり前の様に居るのでしょうね」

「ま……まぁ?」


 おそらくは小学生の頃からモテて、中学でもモテて、今現在高校でモテている。今まで、何人のイケメン達と付き合ったのかを察するのも難しい。

 それに今も、誰かと付き合っているかもしれない。

 素直に祝福すべき案件なのかもしれないけど、それは数刻前までの彼女なら、の話になる。今はどうも素直になれる気がしないでいる。

 理由は単純にして明快――。


「ふんっ、モテるのは凄いと思うけど! 人の理想を壊してくるし、なんかイヤ! 可愛さ余って憎さ百倍!」


 結局はそこになる。俺の信じる王道を新名鈴乃は作り物と言い放った。

 例え一〇〇対〇で彼女の意見が正しかったとしても、問題はそこじゃない。気持ちの問題であり、つまりは俺がイヤと思っただけ。

 子供っぽいと言われても仕方ないが、誰だって自分の信じているものを嘘と言われたら悲しくなるはずだ。いくら正しくても。


「なんかイヤって何よ……あたしは間違ってるつもりはないし! あんたがお子様過ぎるだけでしょ? どーせ、普通の恋愛とかした事ない非モテのくせに!!」

「う、うるさい! 普通の恋愛は……とにかく! お前みたいに誰彼構わず付き合う価値観を持ってないだけだ!」

「ははぁ~ん……さては、最初に付き合った人が運命の相手とか思ってるパターンでしょ。今、この国だけでも何人居ると思ってんの? 狭い! あんたは圧倒的に視野が狭い!」

「言ってろ。そして、ずっとハズレを引いてろ! 視野を広くし過ぎて細かい所を見落とさなければいいけどな」


 お互いに口が悪くなっていく。

 普段通りの自分なら女性に対して強く出れないはずなのに、新名鈴乃に対しては口が悪くなっても止まらなかった。

 再従兄妹という関係がそうさせてる、と言うにしては関係を知ってからの時間は短い。

 それでも、やはり幼馴染の千夏とはまた別の何かとなれば再従兄妹という関係性しか俺と彼女には無いのも確かだ。


「言ってくれるじゃない……あんた、敬語はどうしたのよ?」

「お前こそ、学校で見せてる落ち着いたマドンナキャラはどこに落としてきたんだ?」


「「ぐぬぬぬぬ……」」


 お互いに悪意を持って、相手に向かっていく。

 ゆるふわ系ではなくミステリアス系で、可愛いより美人と評価される彼女が顔を(しか)めて睨んでくる。


(くそっ、美人は変顔でもしない限りそれなりに見れるのかチクショウめ)


 店に来た時よりもずいぶんとキャラが変わった……というよりは、仮面が剥がれたと言った方がいいかもしれない。

 遠慮が無く、現実的な事しか言わず、口が悪い。その上、働く気が無く、家事炊事も出来ない(母親談)。

 逆も逆、真逆のキャラクターをよく演じていられるとすら思えてくる。これはもう、あれだ――。


 新名鈴乃。十六歳――ギャップ『無遠慮ニートリアリスト』


 これは、ここ最近で一番ショッキングだったと言える事件だ。


「ちょっと、待て」

「……何よ」


 俺はスマホを取り出して、とある人物に電話を掛ける。


『あ、楓ちゃんですか?』

『もしもし、どーしたの? りょーいち君』


 ――ガタッ。そう音が聞こえ、音のする方を見ると新名鈴乃が立っていた。

 その表情はただ驚いているというよりも怯える様でもあり、信じられないものを見るかの様でもあった。


『もしもーし? りょーいち君?』


 彼女の意図は読み取れなかったが、今は楓ちゃんだ。

 新名鈴乃によって荒んだ俺の心を癒すには、浄化作用のある人物と話すしか無い。


『忙しい中すみません。ちょっと心が荒れそうでして、楓ちゃんのお力を借りたく……』

『そうなの? う~ん……あのね、お姉さんは思うんだよ? 心が荒れちゃう原因と解決は同じ場所にあるんだって。お姉さんを頼ってくれるのは嬉しいけど、まずは、寛容になってみたらどうかな?』

『なるほど。さすが楓ちゃん。頼りになりました!』

『うん! りょーいち君ならきっと大丈夫だよ! 優しいのはお姉さんが保証してるんだからっ』


 最後にお礼を告げて、電話を切った。心がスッキリとしていくのを感じる。

 やはり、何かストレスを感じた時は楓ちゃんに頼るのが一番。あれだけモヤモヤとしていたのに、今なら何を言われたって笑って流せる程に心にゆとりがある。


「すみません。待たせました」

「あ……あ……」

「ん? どうしました?」

「か、楓って……今、言わなかった?」

「あ、流石に同じ学校ですし知ってますよね。楓ちゃんですが……それが何か?」


 様子が、どこかおかしい。それは電話をしている時から感じていた事だが、新名鈴乃の様子がおかしい。

 楓ちゃんと知り合いの可能性もあるが、そういう反応ともまた違う気がする。

 何かと聞いてもすぐに答えは返って来ず、目頭を摘まみながら何かを考えている。


「ちょっと確認していい?」

「どうぞ?」

「北上が言ってる楓ちゃんって……もしかしなくとも綾織先輩の事か?」

「そうですよ」

「なんという……いや、待って待って……待って? いやー、これは待って?」


(待てと言うなら待つが、いったいなんなんだ……)


 頭を押さえたり、頬を押さえたり、ウロウロとしたり。とにかく(せわ)しない。これじゃまるで……。


「まさか……好きなのか?」

「はっ! 好きとかやめてくれない?」

「そ、そうか。ごめん」

「――敬愛なんですけどッッッ」

「――――(白目)」


 俺にはもう、彼女の事がよく分からない。


 ◇◇





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)



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