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これでほぼほぼ10万字!やっほい!
ではでは、よろしくお願いします!
「えっと、話は変わりますけど……昨日の今日で、どうしてここに?」
「そうでしたわ。昨日、交流会が行われたでしょう? そこで、私達は出会った訳ですわよね?」
「そうです……ね?」
昨日の交流会からまだ一日。むしろまだ一日しか経っておらず、昨日の続きみたいな感覚でいるから気楽に話せているのかもしれない。
これが一ヶ月間隔で話していたとするなら……微妙な距離感を埋められないまま終わっていたかもしれない。そういう意味でも、ノアちゃんに番号を教えて貰っていたのと、楼王院麗華に店の場所を教えていたのは良かったのかもしれない。
「それで私は気付いた訳です」
「……気付いちゃった訳ですね?」
「えぇ! 庶民の方を知る事が目的の交流会が……毎月一度だけというのは少な過ぎると!!」
「な、なるほど!」
力説してみせる楼王院麗華の圧にやられ、言っている事が正しいか間違ってるかの判断をする前に頷いている自分が居た。
「そこで、北上椋一を使って非公式でありますが庶民を学ぼうと思ったのですわ。どうです? よき考えでありましょう?」
「え、あー……非公式交流会ってことですか? それが、今日訪れた理由で?」
「午前中はお稽古等で来れず、こんな時間になってしまいましたけど……そういう事ですわ。私と致しましては、鳳千歳とその後輩の子が居ることに驚きを隠せません」
非公式な交流会……そんな事をして良いのだろうか、俺には判断が出来なかった。
だが、何はともあれこうきて来てくれた事に関しては素直に嬉しさがある。彼女の強烈なインパクトは不思議とクセになってくる。
「二人も昨日知り合ったんですよ」
「そうですか。人と人の繋がりは人生を豊かにしますからね、喜ばしい事ですわ」
「……良い言葉ですね」
「祖母がよく口にしていた言葉です。……それで! 私が提案し、北上椋一が命名した『非公式交流会』、どうでしょうか?」
どう、と言われても何もピンと来ていない。それを正直に伝えると、楼王院麗華は不敵な笑みを浮かべた。
「大丈夫ですわ。簡単に説明致しますと、空いてる日、空いてる時間……もちろんお店の事も考慮致しますけど、ここに集まりお喋りをするのです。たまにはお外に出掛けて見聞を広げるというのも良さそうですわね」
「平日は……学校終わりだと忙しいのでは?」
「……そうですわね。なら、休日の暇な日に訪れるというのはどうでしょう? まずは北上椋一が迷惑じゃないかの確認をしないといけませんが……」
年がら年中、基本的には空いている店だし、来てくれてお金を使ってくれるのであればこちら側に文句は何一つとして無い。
提案を受け入れるメリットはあって、断った時のメリットは何もない。
(あとは……)
チラッと千夏達の方を見てみると――全員聞き耳を立てていたのか、目が合う。
何も言わずに楼王院麗華が店に居る状況だと、また千夏が怒るだろうし、どうせ説明が必要になると思っていたのだが……その必要は無さそうだ。
「どう、思う?」
俺の問い掛けに真っ先に答えたのは、鳳千歳だった。
「麗華さんが、私達の参加を認めてくださるのなら……是非ともその素敵な提案に参加させて頂きたく」
俺の中ではここに居るみんなが参加するものだと勝手に思い込んでいたが、確かにこれは楼王院麗華の提案であり、そこに他の人が参加する余地が含まれているのかどうかを聞いていない。
アイデアは早い者勝ちがルールであり、思い付いた人が全ての決定権を持つ。
楼王院麗華が良いと言えば良くて、駄目と言えば駄目。とてもシンプルな話だ。
「そんなの……」
だが、俺の考えは杞憂に終わった。楼王院麗華の懐の深さ、器の大きさを俺はまだ測りきれていないのかもしれない。
「当然皆様も一緒に決まっているではないですか。非公式とはいえ、交流会ですわよ? より多くの人……北上椋一とお店に迷惑の掛からない程度の人数は参加して貰わなければ、実りのある交流会にはなりませんでしょう? 鳳千歳、貴女もまだまだですわね! おーっほっほっほ!」
やはりこの人は、どこまでも優雅で豪快でゴージャスな人だ。まだまだと言われた鳳千歳も、楼王院麗華に向ける表情はどこか優しい感じがした。
楓ちゃんとノアちゃんの二人は、学年が違うことを気にしていたみたいだが、「そんなの関係ありませんわ!」と楼王院麗華は言ってみせた。
これもカリスマというやつだろうか。やはり財閥のご令嬢ともなれば品格が違うな。
「では、全会一致でよろしいですわね? 千夏様もよろしくて?」
「はいはい、良いわよ。簡単に言えば休日に予定が合えば遊びましょうって事でしょ? それくらいなら、まぁ……クラブ活動の延長線みたいなもんだし?」
ここに居るみんなの賛同を得て、楼王院麗華が代表を務めることになった『非公式交流会』もとい『非公式交流クラブ』が発足する事となった。
内容は千夏の言った事が全てだと思う。要は、遊びましょうという交流会になる。
(昨年よりも忙し……騒がしい一年にはなりそうだなぁ)
自分の部屋へと戻り、卓上カレンダーを持ってきた。何日に誰が来るかを、予定として書いて貰う為に。
来る人の好みのお菓子を作ったりするのが、俺の役割になるだろう。まだそれぞれの好みを把握はしていないが、それしか出来ないしな。
カレンダーの土日の欄が埋まっていく。
わいわいとしたこの感じ、この店の雰囲気からすると浮いているけれど、とても学生らしく良い雰囲気に思えた。
先に予定を書き込んだのか、鳳千歳が寄ってくる。
「そういえば私の勝ちですね、椋一様?」
「えっと……何が?」
「麗華さんもプリンは数千円と仰っていましたし、椋一様のスイーツにはそれ程の価値があると証明されましたでしょ」
言い争いの決定打が楼王院麗華の何気ない一言というのは何とも腑に落ちないが、うん……悪い気はしない。作った甲斐というのがある。
「……分かった。負けを認めるよ。でも、お金は適正料金を頂くからな? それ以上は貰わないぞ?」
「それでは勝負した意味が……」
「代わりに、美味しかったとか言ってくれれば……作った側としては満足なんだよね。そっちにお釣りを渡したい程に」
お嬢様の金銭感覚とはいえ、評価してくれている事に対していつまでも俺自身が自分を卑下していては、きっと失礼になる。
値段を変えないという譲れない部分はあるけれど、負けを認めて鳳千歳との言い争いに終止符を打った。
「おーっほっほっほ……あら? もうこんな時間……すみません、私これから予定がありまして、短い時間でしたが失礼させて頂きますわ」
「マジですか……あっ、ちょっと待ってて下さい!」
思ったより滞在時間の短い楼王院麗華に、お土産として持っていって貰おうと俺は調理場に向かった。急いで仕上げた抹茶のガトーショコラをラッピングして、またすぐに戻ってくる。
「これ、食べてください」
「まぁ! これはお幾らでして?」
「あー、はい。今回限りのサービスで」
「あらまぁ! なら、遠慮なく貰っていきますわ。では、次の機会に」
一礼して、彼女は店を後にした。
もう夕方に差し掛かっており、そこそこいい時間だった。ノアちゃんと鳳千歳もこのタイミングだと思ったのか、帰る準備を始めていた。
「門限があるんすよ! 歩いて帰るので……そろそろなんすよね」
「そっか。抹茶のガトーショコラ……要る?」
やれカロリーの話をしていただけに、遠慮がちに聞いてみた。
ノアちゃんも鳳千歳も少し迷っている表情をしていたが、歩いて帰る事でチャラになると自分の身体を信じたのか、持ち帰る事に決めたらしい。
「じゃあ、私も帰るとするんだよ! りょーいち君、私のガトーショコラもね」
「了解です。千夏は?」
「ママさん、椋一をちょっと借りても良いですか? 二人だけで帰らせるのはアレですし……」
千夏は俺の母さんに許可を取って、お嬢様に対する気遣いをしていた。これに関しては、巻き込まれたなんて思わなかった。むしろ、全然気が利いてなかった事に恥ずかしさすら覚える。
たしかに平和な町とはいえ、制服のお嬢様二人だけだと歩いて帰るのには少々不安が付き纏う。
これが千夏が女子からモテる理由の一つなのだろう。男の俺から見ても、こういう所はイケてる奴だと思うし。
「そうと決まったら、行きましょうか」
「そうだな」
楓ちゃんとは店の前で別れ、俺達は香華瑠女学園に向けて歩き出した。
途中までらいつもの学校への道を進み、そこから道を変えて学園の坂の下までやってくる。
「パイセン、千夏さん、ここまでで大丈夫っす! 後は坂を上れば着くっすから」
「愛理、学園に入ったら言葉遣いを直しなさいね。椋一様、千夏様、送って下さりありがとうございました」
「別にいいわよ、これくらい。二人に何かあった方が目覚めが悪いし?」
ね? と問い掛けてくる千夏に頷き返す。
二人だけで帰して変態に遭遇した……なんて事があれば、後悔が一生付き纏うだろう。二人にもしなくていい怖い思いをさせてしまう事になる。
楼王院麗華みたいに送り迎えなら安心して見送れるが、二人については今後も送り届ける様にした方が良いだろうな。
「じゃあ、俺達も帰るよ。またな」
「じゃあ、バイバイ」
「はい! また今度っす」
「ありがとうございました」
鳳千歳の深々としたお辞儀を最後に、俺と千夏は踵を返して帰路に着いた。
まだカレンダーを確認しては居ないが、これから忙しくなりそうな予感がする。楽しくなりそうだとも思っている。
「椋一、ちょっと寄り道して良い?」
「寄り道? まぁ、少しくらいなら大丈夫だと思うぞ」
「そ。ほら、私達だけで散歩に行ったでしょ? もう公園の桜も散り始めてたから……ちゃんと見ておこうと思って。どうせ椋一のことだし、今年の桜見てないでしょ?」
たしかに景色の一部としてなら桜を見ているが、じっくりと桜を見ようとはしていなかった。明日になれば今日の桜の事など忘れてしまう程度にしか、認識していない。
千夏に誘われでもしなければ、今年も同じ桜の印象しか持てなかっただろう。いつの間にか咲いて、いつの間にか散っていた……みたいな、何の印象も残らない悲しい桜に。
「そうだな。見に行くか、桜」
「そうこなくっちゃ! ふふっ、二人で花見なんて久々じゃない?」
数歩進んで振り返り、そんな事を言う千夏。
花見なんて、いつ以来になるだろうか。それすらも今は曖昧だ。少なくとも、俺が店を手伝いだしてからは花見はおろか、海も紅葉も雪合戦すらも……しなくなっていたと思う。
先んじて歩いていく千夏を追い掛けて横に並び、大きな桜の木がある公園に向けて俺達は移動していく。
(今年は……やはり遊びたいしな。母さんに相談して早めにバイトを雇って貰ったり、少しくらい休みを貰ったりしてみようかね)
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