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人類は魔族に負けました  作者: よす
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5話 仕事の準備

 荷物を置いて帰ってきたルミナと共に倉庫の横の部屋に入る。部屋にはメイド服がいくつかある以外簡素なベッドが一つあるだけだった。


「多分倉庫に毛布が何枚かあるからそれで寝床を作ればいいよ。」


「ありがとう。できれば俺も服を着替えたいんだけど、男物の服はありそうかな?」


「このお屋敷の前の持ち主がかなりの着道楽だったみたいだから、大抵の服は揃うと思うよ。倉庫に行くついでに服の入ったあたりを一緒に探そう。」


 着道楽か、確かにそういった人の家にはいい服がたくさんある。主に主人のだけだが。

部屋から出てすぐ隣の倉庫に向かう。


「エリアル様の衣装も倉庫から?」


「あはは、あの方はねー。気まぐれでその時の気分で衣装を選ばれるからね。今日はタンクトップだったよね。昨日は花柄の白ワンピースだったんだよ。」


 白ワンピースのエリアル様を想像してみる。うん、似合いはするんだろうな。だけどあの口調だからなぁ。どうも違う気がする。


「今、エリアル様の一番の関心はニンゲンの文化の研究だから色々試してるんじゃないかな?」


 ごそごそと倉庫内の木箱をあさりながら話していて気付いたことがある。ルミナはニンゲンの文化をかなり深く知っている。自分の服装にわざわざメイド服を選ぶ辺り、仕事に合わせた服選びができるのだ。


「なぁ、ルミナがニンゲンの文化をエリアル様に教えたのか?」


「んー、それは正確じゃないね。僕がニンゲンの知識を利用してるのを見て、その利用価値に気付いたってくらいだよ。」


「ルミナ、実は文字も読み書きできるんじゃないか?」


「猫にそこまで教える飼い主がいるかい?キャットフードくらいは読めるけど、知識もせいぜい物の名前や使い方がわかるくらいだね。」


「つまり、読み書きは魔族の中でもニンゲンの知識を持ってるルミナですらそのくらいってことか・・・」


 エリアルに命じられたニンゲンの文字と文化を教えることについては、学校に入門したてのレベルに合わせないといけないわけだな。


「あ」


 そこでふと気が付いた。インクとペンがない。文字の練習だけなら木の棒や地面でできるが、記録媒体を作らないとどうしようもないぞ。いや、最低限木炭や木簡で字を書くことはできるが、保存がしにくいし何より重い。できれば紙を入手したい。とは言っても製紙工場なんて動いてるわけもないし、インクも探しても残ってるかどうかだな。インクさえあれば羽ペンを使えるだろうし書くことはできるんだけどな。

 そんなことを考えながら毛布とシャツとベスト、そろいのズボンを見つけた。ついでに下着も結構手に入ったのと、カミソリやハサミなんかも手に入れた。着替える前に何年振りかにヒゲをそってルミナに髪を切ってもらった。さすがに僕も髪を切るなんてしたことないよーといいながらも上手に切ってくれた。庭のポンプで水をくみ上げて体を洗い、さっぱりしてから服を着る。うん、エリアルの従者ツバサの正装はこんな感じだな。


「似合ってるではないか。」


 ふいに二階から声がする。エリアル様が窓から乗り出してこっちを見ている。


「ええ、倉庫にいいものがあったので使わせていただきました。」


「そうか、では私からも贈り物だ。」


 手のひら左右にひらひらと降ったかと思うとそこから緑の光の粒か飛んできた。そしてベストの胸のあたりに触れるとそこに紋章が浮き上がってきた。中心に丸があり、そこに向かって半円軌道で線が集まっていくような形だ。


「これは?」


「我が従者の証のようなものだ。武器や道具に刻む事が多いが服でもまあ、問題はあるまい。」


「仕事はいつごろになりそうですか?」


「ああ、知らせをやったら、それぞれの集落からこっちに向かわせるそうだ、順次到着するだろうから来たらお前とルミナで面倒見てやってくれ。」


「かしこまりました。」


 いったいどんな人たちが来るのか全く教えてくれない辺りはやはりエリアル様のいたずら心なんだろうなぁ。

次回「一家の晩餐」です。

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