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人類は魔族に負けました  作者: よす
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3話 魔族と文化

「私たちは魔王様に生み出されて長いものでも30年しか生きていない。」


 確かに、魔王が生み出した何十万あるいは何百万もの魔族がいたとしても、魔王より長生きしている魔族はいないということになる。


「私たちには知恵が与えられ、動物や植物としての本能に従って生きることはない。しかし、元になったモノの特性は引き継いでいるものが多い。」


「元が狼ならば鼻が利く。元が魚ならば水中で活動できる。とかですね。」


「ああ、そして、生き物が元になったものは年をとり、子を残す。」


「魔王様に作られたわけではない、第2世代が生まれるというわけですね。」


「実際にもう多数の子供が生まれているし、大人と同じような大きさまで育った者もいる。年の取り方も違うようでな、少し早いものもいるし、極端に遅いものもいる。」


 子供の教育をしていた身とすれば、発達の早さは人の中でも個人差が大きいのだ。同じ年の子を集めたからと言って同じ難易度の問題ができるわけではない。ましてや種族が違うというならなおさら違いが出てきそうだ。


「短命な者と、長命な者の傾向などは分かっているのですか?」


「虫や草などを元にした者は短いものが多いな、すでに寿命でなくなっている第1世代も多い。逆に木や大型の動物を元にした者は第1世代がまだまだ元気だ。小型の動物は人の寿命とあまり変わらないのだろうな、老いてきたものも出始めているよ。」


「石や水を元にしたものは老いないし子も残さないのですか?」


「老いはほとんど感じないな。ただ、わずかな変化はあるようだ。子も、非常にまれだがいるようだ。」


 エリアル様も魔王に生み出された第1世代の魔族なのだろうな。そして、年はほとんど取らないようだ。ご主人様がいつまでも若々しくて美しいというのはとてもうれしい。


「さて、ツバサよ。偉大なる魔王軍の直面している問題とはなにか分かるか?」


「種族間におけるトラブルと生まれる文化の違い、そして授かった知恵の使いどころでしょうか。」


 今の話だと、肉食の魔族は肉を食うだろうし、草食の魔族は草を食べる。魔族同士で食い合うことは無いと思いたいところだが人は食われるのだからそこは分からない。だか、そんな緊張感のある種族間で仲良くするというのはとても難しいんじゃないだろうか。

 子を残すのなら同じ種族じゃないと難しいとは思う。できるかできないかは知らないが。

ならば同じ種族が集まって集落ができるだろうし、そこではその種族なりの文化が生まれるだろう。文化は習慣や環境から自然と生まれることもあるし、仕掛人が生み出すこともあるが今の魔族は文化を生み出すにしてもまだ30年。支配が確立してからまだ1年だ。文化の形成はまだまだだろう。そして、エリアル様は言った。人のような知恵と体を授かったと。

 しかし、知識の伝達が行われていないのではないか?すなわち、文字の習得と知識の蓄積、教育の不足だ。それならば外の木や葉でできた家もうなづける。人の生み出したものは利用できても、どうやって生み出すかは文字が理解できなければわからない物も多いだろう。


「そうだ、我ら魔族は人に勝利したが文化や文明を持たぬ者が多い、人の文化を学び利用すれば我らは自分たちの文化を生み出すことができるのではないか、そう思ったのだ。」


「つまり、私の役割は。」


「私の知り合いの者たちの教師をしてもらう。小さな集落のリーダーとなるべきものだ。文字の習得が大切だとか意味があるなど思っているものは少ないが私の意見に賛同してくれたものたちだ。」


「人の文化や文字でいいのですか?」


「それ以上を私は期待しているよ。ツバサ。」


そう言ってエリアル様は席を立つ。


「ああ、この家の1階はこのエリアル一家の共有スペースだから、どこかに適当に自分の寝床か何か作ってくれ。」


 それだけ言い残すと振り向かずに手を振りながら部屋を出て行った。


「え、あ、はい。わかりました。」


 多分2階はエリアル様の部屋があるのだろうが、他にも家族がいるんだろうか。聞きたいことは多いが、とりあえず優しい主に恵まれたことに感謝しよう。とりあえず家を探索するにもグリフさんの許可をとるべきだろうし、あわよくばエリアル一家というのも聞きたい。教えてくれるかなぁ・・・?そんなわけで、私も応接間から出て、グリフさんの立っている玄関に向かった。

次回 「グリフとルミナ」です。

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