思い出の翼
飛行機を飛ばそう 遠くへ
あの広い空き地の先にあった あの工場煙突の先の先まで
飛行機を飛ばそう 遠くへ
あの続く地平線の先にあった あの時の僕らのままで
大人になった僕らを 誰かが指差す
君たちは馬鹿だと 君たちは大人だろうと
大人になった僕らを 誰かが笑いだす
君たちは無意味だと 君たちは大人げないと
知っているさ 僕らがやっていることが馬鹿なことぐらい
知っているさ 僕らがやったことが無意味なことぐらい
でも僕らは帰りたかった どうしてもあの頃へ
懐かしくて 楽しくて ほろ苦くて 浸りたくて 逃げ出したくて
僕らを指さして笑った 大人な大人たちも
皆本当は帰りたいんだ 心の中で黙っているだけで
だから僕らは大人なのに飛行機を飛ばした あの頃と同じように
離せば悠々と空に向かって飛翔する 発泡スチロールの翼
ネクタイを緩めた白いYシャツを 汗まみれにしながら
思い出を確かめるように 空を飛ぶ木製のボディを見つめる
飛べ もっと飛べ
遠くへ もっと遠くへ
僕らを縛るのは 口やかましい親の門限だけだった あの頃の記憶
日の沈むのが遅い夏の日に 日が暮れるまで遊んだ あの頃の記憶
紙と木で出来た僕らの思い出が ゴム動力の飛行機に乗って飛んでゆく
飛べ! 飛べ! 飛べ!
高く! 高く! 高く!
でも 飛行機は僕らの思い出よりも 遠くへは飛ばなかった
でも いつの間にか僕らの顔は 懐かしい笑いで満ち溢れていた
【終】
ゴム動力飛行機の翼の材質が発泡スチロールだと、なんか遠くまで飛ばないんですよね。
あ、世代にもよるのかな。
ちなみに自分は懐古主義者です。