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イセカイスリープ  作者: かなかな
第一章 裕翔
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第十四話「俺の胸に飛び込め」

「スピカ、スピカ君」

ルクスの声が階段を昇って近づいてくる。

「ルクス! こっちよ!」

スピカは扉の奥から囁く。

「言われなくてもわかるよ、そのガムテープを見ればね。小野寺君の件なんだが……」

「部屋から出して……! お願い!」

「そうだね、わかったよ、では、この本棚を……」

扉の向こうから聞こえる本棚から本を抜く音。バタン、バタンと派手な音を立てて少しずつ本棚が軽くなっていく。


「ふう、次は扉のガムテープか」

へばったルクスの声の後ろから高い声が聞こえる。

「ルクスさん何してるの?」

フローラの声だった。

スピカは思わず「あっ」と声を発してしまった。

「あ……まあ、書物を読み漁りたいという衝動に駆られたもんでね……つい……」

スピカはルクスに詰め寄る。

「その部屋、何の部屋か知ってる?」

「んー、書物庫かね」

「ある意味書物庫ね。でも、そこにはお姉ちゃんがいるのよ。お姉ちゃんに用があるのならそのくらい知ってて当然よね?」

「まあね……だが、それとこれとでは話が別だ」

「でもとりあえず本は戻しておいてね。私はずっとここに立ってるから」

「書物庫に入らせてはくれないか」

「それなら図書館に行ってください」

「はい……」

スピカは扉の奥からルクスを責める。

「んもう! 何やってんのよ!」

「やっぱり、フローラ君には負けるよ」

「ったく、使えないわね!」

「やれやれ、僕は道具ではないのだが……」


「それでは僕は帰ります。さよならー」

「クソが」



その後もしばらく窓の外を眺めていた。

二人の男の姿が見えた。

ルクスとケンジだ。今度は何よ。冷やかしに来たの?

何やら黒い文字が書かれた白い紙をケンジが持っている。

「(俺の胸に飛び込め……?)」

ケンジが「来いよ」と言わんばかりにアピールをしている。

スピカが部屋の窓から飛び降りてケンジが支えるという作戦だ。

スピカは原稿用紙に返答を書いた。

『ムリ、死にたいの?』


ケンジはルクスに耳打ちされ、ページをめくって再び何か書いている。

『お前は軽いから、大丈夫』


「やだぁ、もう。そう言われたらここから飛び降りるしかないわ。はッ、私って単純だわ……!」

窓の外を見ると、ケンジが得意げにニヤリとしていて気持ち悪い。

「わかったわ、飛び込めばいいんでしょ、飛び込めば!」

スピカは窓を開けて足をかけた。

「(やっぱり恐い……。でも、フローラには悪いけど……)」

スピカは思い切って飛び降りた。

「きゃっ!」


目を開けると、スピカはしっかりケンジに支えられていた。

「よかったぁ、生きてた……!」

「どうだ、俺の胸は……」

ケンジの息が顔にかかる。腐卵臭。

スピカは冗談まじりで言った。

「好き……になりそう……」

「え、マジで?」

「(男って単純ね)」

「ねぇねぇ、スピカちゃん、今何て?」

スピカはケンジの顔面にグーをお見舞いした。

「ッ!」

「本当に男ってバカね! バカじゃなかったら、カバだわ!」

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