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イセカイスリープ  作者: かなかな
第一章 裕翔
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第十三話「女神様の腐卵臭スープ」

「お姉ちゃん、おはよう。今日は探しに行くんでしょ? お母さんを」

フローラが、原稿に埋もれて寝ているスピカの耳元で囁く。

「んあ……。ふぁーあ……。ああ、そうね。うん」

スピカはそう答えると既に寝ていた。

「ねえ! お姉ちゃん! そもそもお母さんなんて探してどうするの? くれぐれも『川』は渡っちゃダメだよ?」


スピカは片目を開けて応える。

「お母さん? もうお母さんがいないことなんてわかってるわよ。さすがの私だって」

フローラはスピカの顔を覗き込む。

「じゃあ誰を探すの?」

「裕翔」


……。


「ねえ、ちょっと……! え、これなんで開かないの? ふぅちゃん、出して!」

スピカの部屋の前には本棚が横に置かれ、扉はガムテープで完全に閉ざされてしまった。



玄関先ではケンジがげっそりとしていた。一晩を野宿で明かしたらしい。耐えられない空腹感に駆られスピカの家の扉をノックした。

「朝ごはんを恵んでくれ……もう我慢できん」


フローラは扉を開けた。

「ご飯だけですよ?」

「女神様!」



出されたのはたまごスープだった。

ケンジはあからさまに嫌な顔をした。いや、してしまった。顔が自然とそうなってしまったのだ。くどいようだが、これに建前は通用しなかった。

「これは本当はお姉ちゃんの分だったのだけれど、良かったら食べて」

「スピカさんはどうしたんだ?」

「裕翔を探すとか言ってたから閉じ込めたわ」

「ええと、裕翔を探すことの何が問題なんだ?」


フローラはケンジのたまごスープを取り上げた。

「本当に鈍感ね! それともバカなだけ?」

フローラの口調が一変したと思うと、少しずつケンジに近づいた。

「いきなりなんだよ……悪かった、俺が悪かったから!」

フローラはため息をつい言った。

「もう、私の前で裕翔の話をしないで!」



結局、ケンジはたまごスープを完食したが、とにかく腐卵臭がえげつない。口臭が気になるところである。

「ごちそうさまでした」

「はい、じゃあもう出てってね」

「スピカと話だけでもいいからさせてくれないか?」

「裕翔の話以外なら」

「わかりました。さようなら」

ケンジはスピカの家を出てしまった。



スピカは彼女の部屋の窓からケンジが出て行くのを見ていた。

「(はぁ、私のネタが……)」

しばらくの間窓の外を眺めていたら、ルクスが歩いて来た。



ルクスはドアをノックして

「ラピスの山のアシンメトリーの者です」


フローラが扉を開けた。

「ルクスさん、もうその変な合言葉(?)やめたら?」

「スピカに用があって来たんだが」

「裕翔?」

「裕翔って、誰のことかな?」

フローラはルクスを中に入れた。



スピカは静かに喜びの舞を踊った。

「ルクス、ナイス! ナイス、ルクス!!」

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