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イセカイスリープ  作者: かなかな
第一章 裕翔
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第十話「蟻」

 扉が開いた。


 その姿は、ケンジとは似ても似つかなかった。


 先生の言う通り、普通に暮らしているようだが、何か違和感を感じる。


 違和感を、感じる……。


 裕翔は部屋に入った。普通だ。もっと、こう、病んでいるイメージを持っていたのだが、特に病んでいる人の部屋でもなさそうだ。

 しかし、裕翔は自身の変化にも薄々気づき始めていた。昔だったら、もう立ち直れないだろうということも、今となっては、次の日には忘れてしまっているという具合である。彼は、その変化を恐れていた。そのうち、人の為に涙が流せなくなるのではないかと思う時もある。だから、彼の目には普通に見えていても……ということもあるかもしれない、と彼は悟っていた。


 健太は言う。

「で、何しに来たんだよ」


 裕翔は少し、間を置いたが、優しめの口調で厳しく当たった。

「健太は何してるの」


 健太は胸に手を当てて、「ああ」と声を発した後、布団に戻ってしまった。


「ごめんよ」

 裕翔は布団に向かってそう言うと、

「出てけよ」

 と布団に言われた。


 布団はモゾモゾと蠢き、やがて動きが止まった。


「俺はどうせ皆から忘れられてるんだ。皆よ、私のことなど忘れるがいい。私はそういう運命を背負っているんだ」

 布団からはこもった声が漏れていた。


「俺は、いても、いなくても、変わらない。誰からも、必要とされていない。俺はね、いじめられている人を見ると、羨ましくなるんだ。皆に相手にされてるからね。俺は……? 皆、俺のことを人間だと思ってないのか? 俺はそうやって誰からも相手にされないまま、道の真ん中に取り残された蟻のように、知らない間に踏み潰されて苦しみ、踠き、死んでいく運命——」


「やめろよ!」

 裕翔は思わず叫んだ。


 布団がざわっと音を立てて震えた。


「お前は一人じゃないだろ。今ここに俺がいるじゃないか」


 布団の隙間から潤んだ瞳が覗いている。


 裕翔は「ごめんよ」と言って、健太に背を向けた。


「……?!」


 そこには巴留がいた。


「なんで、ここにいるんだよ……!」


 巴留は裕翔を無視し、健太の方へ近づいていった。


 布団が小刻みに揺れている。健太は息を殺そうとしているようだったが無駄だった。


「健太……くん」


 ——巴留。

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