プロローグ
目が覚めたら、そこは牢獄だった。
「(えーっと……夢だよな……)」
珍しく、夢を夢だと認識した。明晰夢だ。
夢の世界は基本的になんでもアリだが、俺はいつもそれが夢とは気づかず毎朝現実世界へアラームという忌々しいものによって連れ戻される。
夢を夢と気づかずに見るのと、朝暗いうちから起きなければいけないのは同じくらい嫌いだ。
だがしかし——!
俺は今、明晰夢という最高の環境に……!
「(そうか、ここは牢獄だった……。)」
閉じ込められていては何も始まらない。
絶望の淵に突き落とされた彼は、ただ一人で、肌に突き刺さるような風と堅い地面の冷たさを感じていた。
…………。
騒々しい静けさに足音が響いた。
足音は鞭で叩かれているように高く反響し、彼の鼓膜を震わせる。
彼は縮こまり、目を閉じた。
「(うぅ……こ、殺されるッ……! いや、待てよ……殺されたところでこれは夢だ。問題ない。むしろここで面白い展開を希望したいところだが)」
そう思った瞬間、彼の第六感が自身を取り巻く環境の変化を察知した。
同時に、なんかヤバイ気がした——
彼は恐る恐る顔を上げた。
象ほど……は無いが、巨人かと思うくらいの男が刺さるような目つきでこちらを伺っていた。実際結構刺さった。咄嗟に目を逸らした。目があったら殺されると思った。夢とはいえ、やはり恐い。
「おい……」
音声加工ソフトでピッチを下げて、バスブーストしたような声で話しかけられた。イヤホンで音量を最大にして聞いた時と同じくらい心臓が凍った。同時にこれが夢であることをすっかり忘れた。
応えようか否か迷ったが、応えないと尚更死への道は近い、ということで応えることにした。
「は……はい……」
思うように声が出ない。すぐに息が切れてしまう。
そしてうっかり目が合ってしまった。
ヤバイ——
…………。
…………。
「(アレ?)」
その男はどこかで見覚えがあるような顔だった。
でも、男は俺の知っているそれとはやはり少し違う気もしないでもないが。
馴染み深い顔だった。毎日見ていたような顔だった。
明らかにそこらへんの知らない人とは違う感じがした。
俺は、勇気を奮って話しかけた。
「お前、もしかして——」
語彙力・文章力・内容が無いです。すみません……。