暗澹前夜
なかなか寝付けぬものだから、明かりは暗うてたまらぬと。
古美術雑誌が山積みに、仇なす廊下の這うところ。
そっと背負わぬものならば、たちまち鎌首取られるぞ。
あっという間に取られるぞ。
鉛丹色した表情が、むっとまばゆき威を放つ。
粗忽、儚き、暗澹前夜。
田螺の殻も捩花も、巡るわが身を憂うのだ。
ずっと暗うぞ、ここよりも。
ああ、高枕よ、藁の記憶が染みついて。
夢を見せるな、さもしくおもひし。
兵児帯揺らした、よたよた歩き。
右手にゃ風鈴、手持無沙汰な左手よ。
横溢してゆく母形見、鈴の音たまらぬ銀鼠。
暗澹前夜。
暗澹前夜。