またの出産。だが・・・
モモが家に帰ってから、風太郎はモモの事を随分と構う様になった。
普通にモモの側に居るし、結構な頻度でモモの毛づくろいをする様になった。
一方、モモは、生まれて8ヶ月は経つのに、まだ風太郎のお乳を飲む事がよくあるのだ。
暫くは、普通の生活を送っていた。
食事の時は、僕が椅子に座ると膝の上か隣の席に座り催促するし、リビングでゆっくりしている時は
、側に来てさりげなく身体をくっ付けたりしてくれた。
その行為が、家族を和ませてくれた。
でも、月日が経って風太郎が4度目の出産の時期が訪れた。
風太郎はやはり物置の中で出産した。
今回は、いつ産んだかが分からない。
それで、もう産んでいるであろうタイミングで、父が風太郎が物置の外に居るのを確認し、様子を
伺う。
その様子を僕も見ていた。
そして、子猫を発見した父が
「うわっ!?またか!」
と言う。僕が
「どうしたの?」
と質問すると父が
「子猫、みんな殺されてる」
と言う。
僕は少なくとも今回は物置を覗いたりして居ない。でも、みんな死んでいるという。
この時僕は、小学生だが、怖いもの見たさ、そして現実を知る為に、父に見せてもらう様に頼んだ。
「ねえ、お父さん。猫はどういう風に死んでいるの?」
「首が無かったり、内臓がみえたりしてるよ。ひかる。お前は見ないほうがいい。きっとショック
受けるから」
「う・・・でも、現実を知りたいんだ」
「・・・そうか」
父はそう言うと、死んだ子猫が入っているであろうダンボール箱を物置から引っ張りだした。
そのダンボールからは、少し異様な臭いがする。
「ひかる。きっとショック受けるぞ?覚悟はいいか?」
「うん」
僕がこう言うと、父は黙って僕の目の前にダンボール箱を持って来る。
そして僕は、ダンボール箱を覗き込んだ。
するとそこには、凄惨とも言える光景が広がっていた。
ダンボール箱に居たのは四匹。
まず一匹目は、腹が食い破られて内臓が飛び出し、二匹目は首だけが無い。
三匹目は、首はおろか上半身が無くて内臓が飛び出し、四匹目は姿に異常は無いけれど、舌を出して
何か吐いた様な跡があり、死んでいた。
「・・・・・。」
僕は、この光景を黙って見た。当時、小学校高学年になったばかりの僕には矢張りショックだった。
この光景を見てから二、三日頭から離れなかったのを覚えている。