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噂の猫

ちなみに、家の環境と言えば、住んでいる町内会は、当時ある有名百貨店がその土地を買って整備、分譲したものらしく、

町名には、その百貨店の名前がついていた。

また、隣の町会は不動産屋が分譲したもので、造られた年代に4~5年の差があり、町会の境目には

2メートル近いブロック塀が建っていて、それで区切られていた。

そして、およそ10軒にその塀があり、段差はあっても10センチ程だった。

そこを、飼い猫や野良猫が往来する。その場所は正に「猫街道」であった。

それから良く、家の擦りガラス越しに猫の通る姿が見れる。

それは、外にでた三毛猫の風太郎を始めとして、実に様々な猫達が通るのだ。

ある日、兄がこんな情報を持ってきた。

「なあ、ひかる。隣の町会のダチから聞いたんだけどさ。隣町会には、名前を呼ぶと、その場で

頭から寝転がる猫がいるんだってさ。ただし、ちゃんとした名前を呼ばないと無反応なんだってさ」

「じゃあ、その猫の名前を言い当てればその仕草をしてくれるんだね?かわいいじゃん。それで、ど

んな模様の猫なの?」

「・・・それは、聞き忘れちまったな」

「えー?それじゃ、塀を通る猫に片っ端から言うしかないじゃん。ただでさえ種類多くて、決まった時間に

通る訳じゃ無いのに」

「すまん。でも、呼んだら呼んだで面白い事になるからな」

こうして、長期に渡る、作戦が始まったのだ。

普段は学校があるから昼間は無理。

だから、学校帰りの夕方から夜にかけて、偶然通る猫に、名前を当てずっぽうに言うしかない。

特に夜は、影が出来ず、気配を感じれない事から、ひたすら窓を眺めて、猫が通るのを待つしかないのだ。

それでも、何とか通りすがる猫は数匹確認出来た訳で。

先ず、一匹はシャム猫。首輪を付けている。何処かの飼い猫。

試しに呼んでみる。

「シャムー?シロー?」

無反応でその場から去った。

数日後。

今度は太目の斑まだらの三毛猫。

「ブチー?三毛ー?タマー?」

この声に、一瞬立ち止まって振り返ると、目が合った時に一目散に逃げられた。

この猫も違う。

そして、今日の二匹目。

通ったのは白茶の斑まだら。そう。モモの父親と思わしきブサ猫。

しようがないので、名前を言ってみる。

「ブチー」

無反応。

「タマー?」

無反応。

「トラ吉ー?」

やっぱり無反応。そしてゆうゆうと去って行った。

一方のモモは、風太郎とじゃれ合ったり、一緒に御飯を食べたりで幸せなものである。

そしてまた数日後。

今度は黒トラ模様のが通りすがる。

「タマー?」

こう呼んだら動きが止まった。

「ゴロー?」

首がこっちを向いた。

「トムー?」

こう呼んだ瞬間、その猫は塀の上で寝転がる動作をして、塀から落ちた。

「この猫だったか!」

兄と僕は大爆笑した。

こうして、とうとう噂の猫に会ったのである。

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