出会うきっかけ
私(作者)の家で飼っていた三毛猫の記憶を、一部フィクションを交えて書く
小説です。
私自身、かなりの猫好きで、ここに書き留める事としました。
これから、ちょっとした「猫あるある」だとか、少しでもほっこりする様な
気持ちで読んで頂ければ幸いです。
2005年12月29日。
会社も冬季休業の初日。
僕は住んでいるアパートの掃除をしている最中に、携帯電話が鳴った。
それに出て、話を聞くと
愛猫の三毛猫であるモモが、階段から足を滑らせ落ちたという知らせが実家からあった。
僕は急いで支度をして、住んでいるアパートから、実家に帰る。
そして実家に着き、応接間に入ると、愛猫が毛布をかけられて横たわっていた。
顔を覗くと、目を薄っすらと開けたまま動かない。
軽く息遣いがあり、たまにため息をついていた。
僕は親に質問する。
「モモに何があったの?」
「2階のお前の部屋に上がろうとして、階段を踏み誤ったみたいでな。階段から落ちたんだろう。凄い音したよ」
「そんな」
「無理もない。もう、老衰だよ」
親父がいう。
しかし、実際にそうなのだ。
実を言うと、僕の実家は同じ市内にあり、2週間に一度は帰っていた。
この数ヶ月前から、
僕が実家の二階に上がるとき、モモは僕に付いて行き、階段を2段も上がると、それ以上は付いて来ない。
僕が上りきってから名前を呼ぶと、返事をするのだが、自分からはあがって来なかった。
それなんで、僕はモモを抱きかかえ、部屋に連れて行き、愛でていた。
それが今、力なく応接間で横たわっている。
僕は夕食をすませた。
そして親父が
「多分もう、今夜が最後だろうな。ひかる。お前が看取ってやれ」
「うん」
そう言われて僕は、モモを抱き抱えて2階の部屋へ連れて行った。
そして、布団に寝かせる。
僕の布団の中に横たわり、目をうっすらと開けたまま、じっとして
動かなく、最後の時を迎えようとしていた。
朝の5時。
布団で寝ていた僕の目が突然覚める。
その猫の名前はモモ。生まれてから約21年。
人間の年齢に直すと100歳になる。
僕はモモの身体をやさしくなでる。
その手と手首が身体に触れた時、突然、モモは前足の爪を力いっぱいたて、僕の腕に爪が食い込んだのだ。
そして。
その力が抜けて間もなくして、大きくため息をつくと、身体を痙攣させ「カハッ!」という声をだし
そのまま、動かなくなってしまった。
「モモ?モモ?まさか・・・」
僕はモモの頭を顎から持ち上げる。重い。
そして念のため、モモの腹に耳を当てる。
すると、心臓の鼓動、息遣いも聞こえない。
「モモ!」
僕は涙が溢れた。
その声を聞いた親が、僕の部屋に入ってきた。
「モモは?」
「モモが、死んでしまった」
「そうか。天寿を全うしたんだね」
母親が、そう言って涙をこぼした。
暫くして、1階の和室にモモの亡骸を、タオルの上に置く。
「モモ・・・」
僕は、モモが生まれる前からの記憶を辿る。
・・・あれは、僕が小学校3年生の時だった。
その時はまだ、今とは別の所に、家族で住んでいた。
ある日突然、猫4匹が、家の応接間の窓の雨戸のレール部分に座り日なたぼっこをする様になったのだ。
当時、家にはジャッキーという名前のビーグル犬と金魚を飼っていて、飼い犬は猫に反応せず、吠えないし、また、猫も
ジャッキーは無視するみたいであった。
では、何で突然、こんな状況が出来たのか?
実はこの数日前に、白と茶の斑の猫が家に迷いこみ、更にひなたぼっこをしていたそうで、その時に
兄が、何か猫が食べそうな物を投げ与えたそうで、それをきっかけに、いきなり四匹に増えて、餌を
くれるのを待ち構えるように成ったらしい。
そして四匹が揃ったその日。
兄が千切った食パンを、窓を開けて放り投げた。
すると、四匹でパンの奪い合いとなった。
僕はその光景を窓越しにみた。
すると、そこにいた四匹はそれぞれ、白茶の斑、茶トラ、三毛猫、黒がかったトラ猫の四匹であったのだ。
次の日。
朝は猫達は現れなくて、学校から帰ると、その四匹が現れていた。
その内、三毛猫と、白と茶の斑だけが、狭い雨戸のレール部分に乗っかり、対面してじっと待っている。
確かこの日は、父の反対があり、餌を一切与えなかった。
それでも、夜、暗くなるまでの数時間、ずっと待っていた。そして、貰えないと去って行った。
また次の日。
今度は、当時高校生だった兄が、たまたま創立記念日か何かの休みで、昼間っから御飯に鰹節を乗せた
「ねこまんま」を多く作り、4匹に与えたんだったな。
それが効いてか、夜、窓越しに猫4匹が現れ、三毛猫と白茶の斑が、対面して雨戸のレールの上で待って
いる。
その日、少しでも警戒心を解こうと、窓をゆっくりと開けてパンを与えたりした。
猫たちは1度、降りて餌を食べるのだが、食べ終えると再び、レールに乗っかり待つのだ。
その時、その互いの距離が近く、時々三毛猫が、前足で白茶の斑に猫パンチでちょっかいを出したりして、
それが面白かった。
そして、何日かが経った。
この頃には、特に三毛猫が、窓を静かに開けると逃げる事はなく、むしろ餌をくれるのを待ち構える
位に慣れていて、兄の手から直接、パンを与えれば食べるまでになった。
そして日曜日、休みの日。
兄弟で、野良猫である白茶の斑か三毛猫を、家に上がらせる作戦を思いつく。
それは、姿をみせたら窓を開け、餌を与え、猫が入れる位の幅に開いたら捕まえて、家の中に放り込む。
と、いうもの。
まあこれが、三毛猫相手には1発成功した訳で。
入れた途端、三毛猫は訳が分からずに硬直した後、匍匐前進の構えになり、部屋の中をうろつきだし、
妙な鳴き声を上げる。僕が近づくと
「シャーッ!」
と、声を立てて怒ったりしたのだ。
それから、そのままにしておくと、閉じられた窓の前で「アオーン」と声を立てだした。
その時、兄が三毛猫に焼き魚を差し出すと、落ち着かなく、威嚇もしたけど、焼き魚を少し食べた。
その後、兄が「悪かったな」
とかいって窓を開けると三毛猫は、一目散に逃げて行った。
そして、幾日か経って、上がらせる作戦の二回目。
それでまた、三毛猫が成功。
白茶の斑は駄目。
三毛猫が一回目と同じ状況になった。
確かこの時は、兎に角猫の警戒心を解こうと、餌をあげる以外は2時間位ほったらかし。
三毛猫はうろうろするものの、あちこちの匂いを嗅ぎ出し、何か調べる様な仕草とともに、家具に
身体を擦りつけたりしていた。
後は、距離をおいて此方をじっと見たりしていた。
そして三度目。
この頃には兄が、猫それぞれに名前をつけた。
まず、三毛猫を「風太郎」、白茶の斑を「おふみ」、茶トラを「じゅげむ」、黒がかったトラは
忘れた。
今思うとこれが、一番最初に姿を見せなくなったから。
それで、餌を与える際、窓をゆっくり開けると、おふみは逃げるが、風太郎は逃げなかった。
それを見て、皿に餌を盛り、窓より数十センチ内側に置いたりしてみると、風太郎は自ら応接間に
入って餌を食べ始めたのだ。
それで、食べ終わると此方を向いて舌なめずりをするばかりか、顔を洗う仕草までしたのだ。
これはもう、警戒心がほぼ解けた証拠だ。
そして、近づいても逃げはしない。
それで、風太郎をよそに、窓から外をみるとおふみだけが残っていたので、外に餌を出して与えた。
この日、窓を開けても逃げ無くなった風太郎。
近づけば距離を置き、長椅子の下に隠れたり、手を出すと逃げたりもした。
でも、風太郎はじっと此方を見て様子を伺うようであった。
それで、慣らして飼い猫にしてしてしまおうと親に相談し、その日、応接間の扉を全部閉めて部屋を暗く
してから寝床についた。
そうしたら、翌日に、飼っていた金魚に悲劇が。