Episode:04 天の御柱
4話目投稿です。
やあ、みんなのヒーロー蝗の王SA。今日はアリさんの巣から挨拶するよー。
昨日は予定どおりに皆と合流した後、約束してたアリさんの巣にお邪魔して、
『仲間を助けたお礼』も兼ねた大歓迎を受けましたw。
俺等はアリさんのテリトリーの内、岩盤の固い岩山(かなり巨大な)を丸ごと好きに使っていいと言われ、そのまま住み着いた。
この岩山、岩盤が固過ぎてアリさんには掘りにくいけど、俺らにはスキル
【地中生活のススメ】があるから、硬い岩盤は気になら無いんでお互いに良い取引だったと思うw。
現在、急ピッチで岩山を魔改造中w。
優先順位が高いのは、ルランジェルから貰った種を栽培する為の畑と、燻製肉や酒を造る為の作業スペース(こちらは主にアリさんの為)の2部屋かな。
次点で、音響効果の高い会場だね。こちらは俺らとアリさんの共用。
俺ら軍団は、どうやら主神の影響を強く受けたらしくて、芸術全般
特に音楽が大好きだ。
まぁ、”種族的恩恵”に【芸術神の祝福】や【森の音楽家】がある程だしなww。
ピロリロリ~ン♪
『メールが届きました。』
うお! メール来た!?
…どこでメール受け取るんだよ!
って、”魂太ゼクター”に着信しやがった!!ww
「”魂太ゼクター”万能説!」
「どうやって見ろとw」
「うほっ!いいゼクターww!!」
…藻マエラ、何時の間にww
『メール自体は、ギャグだから気にしなくてもいいじゃんw』
お、ブラッドじゃなイカw。 何のよう?
『おう、ざっくり言うとだなー。 オマエら俺らの祭壇造って、酒やオツマミなんかを奉げるじゃんw』
ホントにざっくり言ったなw。 でも祭壇は【芸術神の祝福】で、立派なの造れるけど、酒とか時間掛かるぞ?
『わかってるって、だから素敵なスキルと”神器”をあげるじゃーん。 【腐蝕神の眷属】と【倍々ハンマー】の2つじゃん。』
2つもかー、気前いいな。
『なら、沢山お供えするじゃんw、スキルと神器の説明するじゃん?』
おkw
『まずスキル【腐蝕神の眷属】は、俺様の眷属になる事で”モノを腐らせる”つまり”発酵”を任意で操れるようになるじゃん。』
なるほど、酒やチーズなんか造り放題だな。
『だから酒の他に”腐蝕”を選んだじゃんw。』
……なんというフリーダムw。
『んで、次は神器【倍々ハンマー】じゃん、コイツで増やしたい”食べ物”をぶっ叩けば、2つに増えるって言うスグれ物じゃん。』
……叩いて、2つに割れてるだけじゃねーの?
『そんな訳無いじゃん!? 失礼すぎじゃん!?』
まあ、何はともあれアンガトなー。 早速祭壇造ってお供えするよ。
『あっさり、スルーされたじゃん…。』ションボリ
『………まぁいっかw、お供え期待してるじゃん!』
立ち直り早えーな、あ、それと!!
『何じゃん?』
…今夜やるから、他の神様達に伝えといて。
『!!………いよいよか。 伝えとくじゃん。』
…ああ、頼むわ。
・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「そんな訳で、”王様命令”!『祭壇を造れ』」
「…唐突だね。」
「イキナリすぎるし。」
「事情の説明くらいしる!」
「我がままだなぁ…。」
「命令来たコレ!」
「藻マエラ、どうせ【テレパシー】で盗聴してたし。」
「「「 まぁ、その通りなんだけどね。 」」」
「今夜は仕事あるし、時間も無いからとっとと造る。」
「「「「「「「 はぁ~いw 」」」」」」」
| <キングクリムゾン !
| ('A`)
/ ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄ ̄ ̄
「出来たw」
「速!?」
「…今、時間 跳ばなかった?」
「気の所為でしょ。…多分。」
「イノシシ狩ってきたよー。」
「早速、お供えしる。」
「「「「 ……………… 」」」」
「藻マエラ、血抜きくらいしる!! 邪神の祭壇にする気ですか!!!?」
「「「「 サーセンw 」」」」
「うぜぇw」
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・
王国暦412年。 【蟻】の月。
王国のみ為らず、大陸中の”ヒューマン”達に衝撃が奔った。
この大陸に住まう、全ての知恵もつ”人族”に『神々の声』が届いたからだ。
『声』は、富める者も貧しき者も、貴き者も卑しき者も、区別する事無く届いた。
声の内容は、
【同じ世界に生まれた兄弟を亜人と呼んで虐げた事】
【世界の一部である自然を破壊し続けている事】
【神の名を使い私腹を肥やした事】
以上、3つの行いについて最早許容出来ないと言うものだった。
特に3番目の行いについては、”裁き”を与えると宣言された。
この声を聞いて尚、『これは、誰か(自分の政敵等)の陰謀では無いか?』
あるいは、『神の名を騙る偽者の仕業だろう』等、この期に及んで、自分の所業を省みぬ者達が大勢居たが、すぐに彼らはそれが間違いだったと思い知る事になる。
大陸中央のカテジナ王国内で、最も大きく荘厳な【神殿協会】の”総本山”でもある大神殿で、それは起きた。
「た、大変です。 神殿の外に出られません!!声も届いて無い様子ですし、外の音も聞こえません!!!」
神殿の警備を統括する神殿騎士の隊長が、あわてた様子で広間に飛び込んで来ながら報告して来た。
清貧を旨とする神殿にあるまじき、豪華な装飾の施された広間では、教皇を始めとして枢機卿、祭祀長等の、神殿内の主だったものが集まっていた。
別に会議とかで集まっていたのでは無い、彼らは『神の声』が聞こえて来る直前まで、この場で贅を尽くした宴を開き、我が世の春を謳歌していたのだ。
王都の民や熱心な信徒から巻き上げた、寄付と言う名の富を湯水のように使って。
そして、『声』が聞こえてからは、疑い半分・動揺半分と言った状態で、効果的な行動や、今後の対策を練る事など、何一つやらない、もしくは出来ないままに、
只、右往左往して、騒ぎ立てる事しか出来ずにいたのだ。
そして、件の神殿騎士の隊長の報告を受け、やはり、先ほどの怪異と思えた現象は『神の御業』であったとか、そんなバカな事がある訳無い、これは何かの間違いだ等と、無意味に騒ぎ立てては、余計に混乱を増していくのだった。
未だ、混乱覚めやらぬ広間に、一つの人影が入ってきたのはそんな時だった。
「な、何だ貴様は? だ、誰の許しを得て此処に入って来た?!」
その人影は彼らの目には、正しく”異形”と映った。
まるで鎧を着ているかの様な黒い光沢の在る甲殻に、”飛蝗”…いやこの場合は黒く不吉な色から、”蝗”を彷彿とさせる姿と、顔の中で結構な面積を占める、赤く不気味に輝く”目”。
先ほどの誰何の声に反応したのか、”ソレ”は徐に言葉を紡いだ。
主
造りし存在に問いたもう
『汝の名は何か?』
彼の存在、答えて曰く
『我が名は軍団、我等 大勢なる故に。』
「「「「「 !!!!!? 」」」」」
「俺は、造物主によって生み出された、最も新しき13番目の民”軍団”の長、”蝗の王”」
「神の下僕の名の下に、…貴様らの命、貰い受ける。」
「く。 ふ、ふざけるな!! 侵入者だ!衛兵、衛兵!!!」
混乱からいち早く脱した騎士隊長の声が響き渡ると、数十人の神殿騎士が広間に雪崩れ込み、一糸乱れぬスムーズな動きで、”蝗の王”の廻りを何重にも包囲した。
「ほぅ、無辜の民から、富を搾り取ってる愚物の割には良い動きだな…。」
「ほざけ! コイツを八つ裂きにしてしまえ!!」
「「「「 はっ 」」」」
騎士隊長の号令の元、騎士たちは一斉に槍を突き出した。
ここに居る者達で、”蝗の王”の言葉に反論出来る者など、誰一人として居なかったので、図星を指された事で、皆気が立っていたのだ。
だが、そんな騎士達も次の瞬間、驚愕に目を見開く事になった。
ガギィイイイイイィィンン!!!
なんの動きも見せぬ侵入者に伸びた無数の穂先は、全てが狙いを外さなかった。
にも関わらず、重複する甲高い響きと共に、ある者は弾かれ、ある者は刃毀れしたり、穂先の半ばから折れ飛ぶ者さえ居た。
そして、肝心の侵入者といえば、”何も変わった事など起きてはいない”といった風情で、自然体のまま、その場に佇んで居た。
「ば、馬鹿な…。」
信じられない光景に唖然と立ち尽くす騎士隊長の横から、一人の騎士が進み出て来て、言葉を発した。
「隊長、お下がりください。 皆も下がれ。」
「おお、副長だ!」
「如何に硬い化物でも、副長の魔法には適うまい!!」
副長と皆に呼ばれたその騎士は、芝居気のある気取った仕草で、
「大方、その固い甲殻を過信したのだろうが、俺の魔法の前には紙切れ同然!! 死ねぃ! 炎系上級呪文・ラメラオン!!」
そう叫ぶと、直径1ダントの火球を頭上に生み出し、”蝗の王”向けて放って来た。
対する”蝗の王”の方は、白く輝く1ダル位の火球を、副長の放った火球の方に”無造作”に放った。
「馬鹿め!そんな”火の粉”で何が出来る!!蹴散らしてくれるわ!!」
だが、そんな自信に満ちた態度も
轟!!!!!
互いの火球が ぶつかり、直系5ダントの白い火柱が上がる光景の前では、擦れ声で呟くのがやっとであった。
「………な、なんと言う威力の”ラメラッテェー”だ………。」
だが、彼を更なるどん底に突き落としたのは、次の言葉だった。
「…どうやら誤解しているようだな、今のは”ラメラッテェー”では無い。」
「”ラメェ”だ。」
「ば、馬鹿な…。」
「見ろ! これが俺の”ラメラッテェー”! Satan of Extinction(消滅を司る魔王)」
そう叫んで”蝗の王”が頭上に右手を掲げると『紫色の炎で造られた、禍々しい巨大なドラゴン』が、顕現した。
「ひ、ひぃ!」
「た、助け・・」
「……さらばだ、穢れし者共よ。」
【 閃 光 】
王国暦412年。 【蟻】の月。
この夜、大神殿を始めとした大陸中の主だった神殿が残らず消滅した。
天と地を繋ぐ紫色の巨大な光柱は、大陸中のあらゆる場所からも観測出来たと言う。
それと同時に、永きに渡って大陸中にその権勢を誇った【神殿協会】は、腐敗した上層部と共に、その300年にも及ぶ歴史の幕を閉じた。
・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
あー、熱かった。
密封された空間で【炎系最上級極大呪文】とか、
本気で無いわw。
今回、シリアス部分多目です。
でも最後の最後でオチをつけるワナw