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第三話 異世界トリップ

「ん………っ」

気が付くと私は、コンクリートでない土の上に転がっていた。

「ここって……っつ。」

手をついて身を起こそうとしたら左腕に激痛が走った。

右手を使ってその場に座ってよく見ると左手首からひじにかけて大きく腫れていた。


周囲を見渡すと鬱蒼と生い茂った木々。近くにあるものは私のバックから散らばった教科書やノートだけ。


こんな場所には来たことがない、そもそもなぜ地面に寝ていたのか。

確か、私は、病院に向かっていて、急に車が…


「…おかあさん!!」

はっと私は後ろ歩いていたはずの母のことを思い出した。

近くに母の気配はない。それどころか人の気配すらない。


森は不気味に静まり返っていた。これだけ緑があるというのにまったく生き物の気配を感じない。

「っ…おかーさん! おかあさん!?」

私の声だけが誰もいない木々の間を虚しく響く。

「そんな…だってっ、さっきまで、一緒に…」

心配と不安で心臓が高鳴る。私のケガは左手だけだが、すぐ後ろにいた母はどうなったのだろう。

ここがどこなのか、どうしてこんな風に放置させられていたのかはわからない。

だがそんなことよりも私は母が心配だった。私以外とはろくに話すこともできない母がちゃんと助けられたのか、治療は受けられているのだろうか。


右手でカバンを引き寄せ、携帯を取り出す。焦る私を嘲笑うかのような圏外の二文字。

「ああもう!!…なんでっ!?」

携帯の時計が正しければあれから5時間ほどたっている。


携帯が通じないなら近くの家まで走って電話を借りればいい。

そう自分に言い聞かせ、急いでカバンに荷物を突っ込んで私は立ち上がった。


とりあえず斜面になっている方に下って行けば、そのうち道路に出られるだろう。

そう思った私は、枝や下草が肌を傷つけるのも構わず密林を駆け下りていった。





おかしい、もう1時間も下っているのにまったく密林を抜け出せない。

これまで母の安否が知りたい一心で走ってきたが、さすがに限界が近づいてきた。


走るたびに左腕に振動が響く。

なれない地形を制服の革靴で走ったため、靴擦れができて非常に痛い。


立ち止まって息を整えようとするが膝の震えが止まらない。


少し休もう。私は近くの倒木に腰掛け、鞄をおろす。

靴を脱いで足の状態を確かめながら、私は森で気を失っていた理由を考えた。



たとえばそう、私が死んでしまったと勘違いして運転手か他の誰か都合の悪い人間が

私の死体を捨てに来たのなら森深くに持ってくるのは分からなくもない、

だが、そんなに用心深い人間が死体を埋めずに放置するだろうか。

そもそも死んでしまったなんて勘違いするほど焦っていたのなら荷物まで持ってくるものだろうか。


いや、信号待ちをしていたのは私だけではなかった。

周囲に人がいるのに簡単に死体を持ち去れるだろうか。

答えはおそらくNOだ。

だいたい目撃者がいる時点で死体遺棄なんてほとんど効果はなくなってしまうだろう。



謎について考えているうちに、日傾いてきた。


闇雲に走っていてもこの森は抜けられない、森を抜ける前に日が暮れたら

どうする。私がここにいることは警察は知っているんだろうか。それなら捜索隊を待つか。

……


なんにせよ今は情報が足りない。


方向を間違えていたとしたらかなり奥地に入ってきているはず。

夜が明けてからもう一度進んでみて何もなかったら引き返そう。

何より早く母の安否が知りたかった。

そう決めた。



普通女子高生が密林で身を守る方法なんて知るわけがない。

私はとりあえず手ごろな大木の根の間に挟まるよう寝転がり、身を縮めた。

精神にもかなり疲れていたのですぐに睡魔に襲われ眠りについた。


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