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第六幕 第六部:神話の終結

この世界は、二週目・・・?

にわかには信じがたい言葉を聞いて、ホレイムの弟のフレイルアは耳を疑う。

火大陸の評議会軍を制圧し、一息ついているところで、火大陸の火山に隠居していた世界大戦終結に一役買った一人の男性・・・レイグにその言葉を聞いた。

「ハッハ。そんな馬鹿な。そんなファンタジーな事があってたまるもんですか」

苦笑いして、この人も冗談を言うんだなといった様子で笑っていたのだが、レイグの様子はいたって真剣。

いやいやいや、この世界が二週目って、それってつまりタイムトラベラーって事だろいやそれ、ないって無い無い無い。

「私たちに身に覚えがないが、しかし彼等・・・詩架達には、如実な変化が出ているはずだ。決意どうこうで特殊な力が目覚めるわけ無かろう。ここは漫画ではないのだから」

レイグの言葉に、脳裏にこの間であった少年と少女達を思い起こす。

彼らは、確かに能力を纏っている雰囲気があった。

しかし異邦人だと言う。

それは・・・どういうことだ?

「恐らく。時間の境目は・・・・」


****


「ここか」

今あのタイミングで踏み出すか、踏み出さないか。

踏み出していたなら、あのまま全員が殺され、二週目の世界。

つまりこの世界に何らかの原因で戻る。

それが解る根拠としては、この聖紋。

全員死の危機に瀕した、または何かしらの決意をしたときに発生している。

しかしそれはただのファクターに過ぎない。

それだけで、能力を手に入れられるほどにこの世界は簡単にはできていない。

あの世界には確かに魔力が充満していたかもしれないが、俺たちがそれを当然のように享受するには少なすぎた。

俺たちがこの溢れる空気の中の酸素だけを使っているように、魔力を排他していると考えるのが普通だろう。

あまりに突然な現象を受け入れ、順応するのには二週間は、短すぎる。

順応できるようにしたとしても・・・

かつて生物が猛毒だった酸素を生活の必需品として使うようになったように、新たにソレを使いこなすには。

ソレが充満している場所に・・・つまりここに来るしか、無い。

つまりソレが意味するのは。

ここに来たのは。俺は二度目ではない。

そして、由佳や、琉雨達も初めてではない。

「仮説・・・だが。これは・・・・二週目、そういう・・・ことか?」

信じたくないその仮説は、今まで道理だと信じていたソレよりも説得力がある。

あっちの世界なら信じれるようなことでないが・・・

この世界には魔法と言うものがあり、そして更に―――


鋭敏化された視界をヒナへと向け、そしてシャイナに向ける。


過去に遡れる。その手段が確立されている。


「ふん・・・さて・・・ソレが本当に正しいかどうか・・・教える義理はないのう」

ニヤ、と不敵に笑ってヒナは言う。

「まぁ・・・そうだろうな」

この世界がもっと複雑な出来事で危うく成り立っているとしても。

もっと単純で余裕を持って保っているとしても。

関係ない。

今の目的はこの目の前の人間を殺し、自分の守りたいものただソレだけを守る。

他に理由は、必要ない。

「第二ラウンドだ、ジジィ!」

ダン!と地面を吹き飛ばしながらヒナに突進し、右手に持った剣に白い気を纏わせて突き出す。

そして黒い気とふれあい、再び潰される、周囲にいた兵士達は誰しもがそう思ったが、詩架は違った。

「つら・・・・ぬけえぇぇええええええぇええええ!」

キィィィィィィィィィィィィン!

と耳を劈くような甲高い音が鳴り響く。

同時に、バチバチと火花が激しく踊る。

一発目は面での攻撃で、失敗した。

ならば次は、その硬い岩を貫くために、点で勝負。

圧力10tというレベルの力で押し合うその二つの力の余力で、すでに城はその形を保てずにボロボロに崩れ去っている。

「貴様のその程度の力じゃ・・・わしの鎧は貫けぬよ」

余裕を持って詩架の攻撃を受けていたヒナは一転。

右手を翻して体に纏っている影を操って詩架の腹部へとめり込ませる。

「ギッ・・・」

ヒュ、と一瞬だけ片方の力が緩まったことで崩れた均衡は、全てが詩架へと襲い掛かる。

黒い影に覆われ、流されるようにして詩架は城の瓦礫が山積みになっている場所へ叩きつけられる。

「畜生が・・・やってくれるじゃねぇか」

ヒュ、ヒュ、と短く息をしてかろうじて搾り出した声は、詩架がすでに限界を超えていることを悟らせる。

また。

また負けるのか。

迫り来る第二波の影を見て呆然とそう思っていると、ふと視界の前に見慣れかけた小さな影が入り込んだ。

「短い、付き合いだったけど。私は愉しかったよ。君達のその希望は、私たちが食べて良いものじゃない。それは君たちが、しっかり持ちなさい」

その影は、尻尾と耳を生やしたシャノアだった。

「私はね、とっても辛い渦の中に居たの。そこで一筋の光を見て、それに縋った。憎しみを糧とする影が、よ。珍しいこともあったもんだわ。でもその気まぐれはとっても良い方向に転がったの。」

景色が灰色に、スローモーションに流れる中、彼女の動きだけは正常で、その言葉をつむぐ。

「一度言ってみたかった言葉があるの」


彼女はそう言って、恥ずかしそうに耳を伏せながら小さく言った。

「愉しかったよ、また会いたいよ。愛してるよ。パパ。もっと長く、永くこのままでいたかった。でも、だめだよね。やっぱり私が、私みたいな影が、日の当たらないところが相応しいモノが、こんなこと思っちゃいけないんだ。」

でも、光あるところに影はあるの。

だから心配しないで。

私はいつでも。

あなたの足元で、あなたを見上げて、うらやんで、生きているわ。

後半は声にもならなくて、かすれた声だった。

でも、詩架には伝わる。

それだけで十分。

かっこよさなんて棄ててしまっていいんだ。

潔さも、棄ててしまおう。

全てを捨てても、彼を救う。

これが、私の、決意。

「止まってもらうわよ・・・私の・・・同類っ!」

一瞬で色が戻った世界で、シャノアは何かをしながら、影に呑まれる。次の瞬間に脳裏に響く、二つの声。


『光の力、来ます!急激な力の増幅に備えてください!』

リリの声と

「あと、五秒。五秒だけなら、保てる!倒して!ラストチャンスよ!」

シャノアの声が脳裏に響く。


影の向こうに驚愕に歪むヒナの顔が見える。

今まで、ありがとう。

心の中でそう呟くと、体で溢れるほどの力が暴走をはじめる。

一瞬うろたえるが、しかし脳裏に力の使い方がインプットされる。

「あぁ・・・・」

そう言うことか。

捻じ曲がって伝えられた霊光の地の伝説は、ここで集結する。

おれが、終わらせる。

この悲劇の伝説を、悲劇で終わらせてたまるか。


*******


ここから先は、新たに書き直された伝説を交えて話そう。

誇張もあるが、勘弁してほしい。


簡潔に言えば、大地が割れた。

力を得た詩架はまず、地面を叩き割った。

ものの一撃で、風の大地は粉々に砕け散った。

そして落下するハイナは、二人の会話を聞いた。


「これが二週目の世界・・・この仮説は、ある意味あっていて、ある意味間違いだったんだな。ヒナ」

そう言う詩架の表情はとても穏やかだった。

「そうじゃのう・・・一週目で貴様を殺してから、この世界はたいそうつまらなくなった。だから暇つぶしにと戻ってきたらこのざまじゃ。全くお主は最後までわからない男じゃのう・・・」

感慨深げに言うヒナに、詩架は笑って言う。

「馬鹿言え。お前は曲がりなりにもこの世界を、この世界と俺の世界を守ろうとして行動して、今があるんだろうが」

「・・・・当の本人には隠しとうせぬか」

「当たり前だ。馬鹿が。お前が”子”を殺さないために行動していることなんざ百も承知だ」

「・・・”子”は、元気か?」

ヒナの言葉に、脳裏に四人の顔を浮かべて、頷く。

「一人は最近あってないからわからねぇが・・・三人は少なくとも、有り余るほど元気を持ってるぜ」

「そうか・・・・霊光の地の人間がそう言うなら・・・そうなのじゃろうな・・・」

ヒナはそう言って、最後に一仕事あるじゃろう。と言って影の刀を握りなおす。

「あぁ、解ってるさ。伝説の最後の・・・一仕事だ」

「転生・・・上手くいくといいのう」

「転生なんかしたかねぇがなぁ・・・」

面倒そうにグシグシと頭を掻く詩架をみて、呆れてヒナは笑う。

「一週目で貴様がそんな怠慢な性格をしているからわしが二週目をめぐることになったんじゃぞ。こんな影を背負ってまでのう」

「・・・悪かったよ」

詩架がそう言うと、ヒナはゆっくりと詩架の腹部へ影の剣をめり込ませていく。

「ぐっ・・・・」

ポタポタ、とヒナの顔に詩架の口から出る血がかかる。

「せいぜい痛がれ、ざまぁみろじゃのう」

ケッケッケ、と笑い、ヒナは言う。

「殺してくれ、わしはもう疲れた。生きるのにも、殺すのにも。」

そう言って、二人の会話は途切れる。


そして場は変わり、地大陸地上。


死に際の最後の命を振り絞って影からシャノアを救出した詩架は、ぐったりとした様子で壁に寄り添って座っている。

そこに、驚く様子も無く立つ笠花の人間と、哀しげな目で詩架を見るハイナと、泣き喚くシャノアの姿があった。

「なんで・・・なんで私なんかを救うのよ!わたしなんて・・・わたしなんて・・・!」

生きる価値も無いのに・・・!

そう続こうとした言葉をさえぎって、詩架は言う。

「馬鹿言うな。お前に生きる価値が無いなんてことはない。少なくとも、お前にしなれたら俺が嫌だってぐらいにはあるさ。気にするな。お前が思っているほど、お前は軽い存在じゃないんだ」

詩架はそう言って、ポケットから透き通ったタグを取り出してシャノアに渡す。

「まだ、渡してなかったな。これ、お前の名札だ。大事にしろよ」

ふざけた調子でそう言う詩架からタグを受け取ると、シャノアの体が発光し、そして耳と尻尾が消えた。

「これでお前は晴れて人間だ。立派に生きろよ、俺の娘」

笑っていって、詩架は口から血を吐き出す。

「まぁ、なんだ。色々あって、こんな世界になっちまったがまぁ・・・お前等なら生きていけるさ。お前等なら、やっていけるさ。大丈夫だ、大丈夫」

そう言う詩架から何かを感じたのか、礫が言う。

「お前・・・俺たちの記憶からも消えるつもりか?」

礫の言葉を聞いて、詩架はかなわないな、全く。

と言って苦笑しながら続ける。

「まぁ、なんでもいいさ。またな」

詩架がそう言った次の瞬間に、詩架の体は粒子となって消えた。

それを見届けた。

そう思った次の瞬間には、礫たちは元の場所へと戻っていた。

元の、笠花孤児院へ。

おきてしまった事実を変えてしまっては、意味が無い。

彼らが生きて、苦しんで、耐えて、過ごした時間は、消してしまってはいけない。

決して、無駄なことじゃない。

そう伝えたかったのか、は。今はもうわからない。

そうして、伝説の主役たる笠花 詩架の一生は、伝説と共に幕を閉じた。


*******


「いいの?あんな中途半端にやっちゃって」

呆れたように、懐かしい顔がそこにあった。

「よぉ、鈴」

「ま、あの子達ならなんとかなるでしょうけど」

「あいつら程度の年齢なら、もう自分で自分を育てないとなぁ」

そう言って、二人は笑う。

「ま、行きましょうか」

「あぁ、随分永い間待たせたな」

「馬鹿ねぇ。恋人を待つ時間なんて一瞬に決まってるでしょ?」

「嘘付けよ、あのとき死んでとか言ってたくせに」

「死んで・・・・?あぁ。あのときは好きよって言ったのよ。ひどい勘違いね」

そんな風に喋りながら、二人はどこかへと消えていった。


******


影が消えてから四年、異世界から戻って一年の月日が流れた笠花孤児院。

そこでは、今年も平和でしたね、という意味をこめて祭りが開かれていた。

ワイワイとにぎやかなそこは、あれからまだ四年しか経っていないことを微塵も匂わせない。

その祭りの中に一人、鼻歌を歌いながら男と歩く顔の整った美女が一人、歩いていた。

「あ、いた♪」

フン、フン、と調子を踏みながら琉雨に歩み寄って、琉雨に話しかける。

「こんにちわ。私はアンジェル・・・うん、元気にしているようね。貴方達も・・・・後ろのあの人も」

フフッと妖艶に微笑むアンジェルを不思議そうな顔で見ていた琉雨は、何を思い至ったか、一つ、聞いた。

「後ろの・・・あの人?」

今、自分の後ろには壁しかない。

何の話だろう、と聞き返すと、アンジェルと名乗った彼女は微笑んでいった。

「うん。あなたたちの命の恩人で、神様の遣いの、詩架。元気でやっているようでよかったわ」

アンジェルはそれだけ言うと、再び鼻歌を歌いながらその場を離れていった。

そして取り残された琉雨の胸の中で疼く感情は、恋焦がれにとても似ていた。

「あぁ・・・詩架・・・なんだかとっても・・・懐かしい響き・・・ね」

それが何か、はわからないが、しかしもうその名前のものは手に入らない気がする。

もう、あえない気がする。

心の中で何か決心がついていて、それはもう触れるべき事柄ではないと自分で決めていたらしい。

・・・・・

うん、今日も私達は、元気です。











**************




パタン。

「・・・ふぅ。やっぱり何度読み直しても信じがたいのう」

白髪の老婆は、温かい日差しの中で、手に持っていた古びた本を閉じて、瞳を閉じると、脳裏に懐かしい男の声が響いた気がした。

「・・・・まったく。あの世でもはっちゃけているのかのう・・・あの男は。」

何故、自分に記憶が戻ったのかはわからない。 

しかし、そのおかげで頭にずっと引っかかっていた違和感の正体がわかった。

「あらハイナお婆ちゃん。どうしたの?」

すっかり大人になったシャノアが、ハイナの顔を覗き込みなが聞く。

「何、君のお父さんとお母さんのことを思い出していただけさ」

ス、と上半身を起こして日差しに眩しく照らされたシャノアを見る。

「のう、詩架・・・・お主の娘は・・・こんなにも大きくなったぞ」


またな


あの言葉を実現するために、いつかあいつは戻ってくる。

そんな、気がする。

そう思って再び目を閉じると、ふと声が聞こえる。


「ただいま」


聞きなれたその声に、日常を感じてハイナは微笑む。


おかえり

長い長いこの話もこれで完結となります。

いろいろと説明不足になってしまいました。

書いている途中にまさかタイムリープもののアニメがこんなに出てくるとは思わなくてなんとか路線変更しようと苦心したのですがどうにも難しいですね。

結局余計に物語をこんがらがらせてしまっただけでした。

シュタインズゲートは観ていてもう感動してしまってだめですね。

アニメ化すると聞いて原作ひっぱりだしてもう一度やっても飽きませんし。

いつかああいう作品を造れるようになりたいです。


なにはともあれとても長い間ありがとうございました!


実は次のをすでに描き始めています。

主人公は相変わらずのものですが。

毎度本で終わるこのパターンも意味はあるのです。とか妙な伏線貼っておきます。

ありがとうございました!

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