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第一幕 第五節:花を守る笠のように

「君たちには今から風大陸に住む部族を救出した後、その足でそのまま魔物退治をしてもらう。」


どこぞの司令官のように手を組み机に肘を突きながら風大陸の評議会議員は言った。


「部族救出?」


俺がそう聞くと、ヒナはゆっくりと頷き肯定して返した。


「ああ。今魔物の住む塔へと向かう途中にある風大陸の遊牧民達の村がいま魔獣に囲まれているとの話が入った。君たちにはただちにソレの排除に向かってもらいたい。」


腕鳴らしに加えて魔獣ってやつがどういうものか分かるってことも考えれば不利なことは無い。


それにこの城から出られれば何かと名目をつけて由佳を探す事もできる。


「断る理由はないな。」


俺がそう答えると、ヒナは満足そうに頷いて近くに控える例の老人給仕に詩架たちを武器庫まで案内するように促した。


かしこまりました。と丁寧に答えた彼はゆっくりと歩き始めて俺達を後ろに従えて武器庫へと歩き始めた。


****


ゴ、トンという重い音を響かせながら開いた扉の向こうには、薄暗い巨大な部屋に幾百種とも言えるほどの大量の武器が置かれていた。


図書館にあるような棚に飾られた大量の武器は全て綺麗に管理されており、サビ一つ見当たらない。


「この中から自由にお選びください。」


その老人の声に反応するようにゆっくりと歩みを進める。


何かが歩きがした。ただの武器ではなく何か。だった。


右目が言う事を聞かない。


何かにすいつけられるように、右目はある一点を見続けていた。


自分の右目のはずなのに右目は既に自立しているかのような動きを見せる。


一瞬右目に抵抗を覚えるが、しかしこの右目は自分でも分からない不可思議さがある。


それに何かがあるという直感は俺にもある。


それらの事がありその右目に従い、ひたすらにその右目の差すほうへと歩みを進める。


もう100~200Mほどは進んだだろうかという距離の場所にソレはあった。


扉とは一番遠い壁に掛かっているその細身の剣は特に豪華絢爛な装飾が施されているわけではない。


むしろ質素と言ってもいいほどだった。


必要最低限の柄。刀身。鍔。


一瞬日本刀かと思えるようなフォルムだが、よく見てみれば反った刀身はつばから刀身にかけて少しずつ太くなっている。


遠心力を主に使う剣なのだろうか。


剣先が太いといっても5~10cmほどなのだが。


手に取ってみればまさにあつらえたようにしっくりと手にはまる。


「これだ。」


他の武器には目もくれず、将来俺がこの世界で戦う時にはこの剣を使っているビジョンしか思い浮かばない。


そうだ。


あの文字を、入れよう。


****


武器の耐久性を削るのになぜ、わざわざ武器や機械にその”KASAHANA.project”という言葉を入れたのか。という学者の問いに少年達は答えた。


『武器は直せばすぐにまた使えるが、心は一度折れてしまえば治すのにとても時間がかかる。もしかしたら治らないかもしれない。そういう事さ。』


この言葉は学者に疑問を抱かせたが、民衆には理解が出来た。


つまり。


”KASAHANA.project”という作戦名を掲げることで絶対に生きてかえるという心の支えに使ってきたのだろう。


武器に書かれたその名前を見て何度でも闘志や生きるための希望を見出す為に武器に書いたのだ、と。


つまり。


”KASAHANA.project”の最終目標は茨城奪還でも日本への正体不明の敵の進出を防ぐことでもない。



『生きて帰る』



ということなのだと。


****


「おい詩架のやつ行方不明になったんだって?」


右足からモーター音を発するその青年は椅子に腰掛けて少し笑いながら言った。


「そうみたいねぇ。」


その青年に話しかけられた眼鏡をかけて本を読む少女は生返事を返した。


ここは笠花孤児院だ。


かの茨城の災厄を生き抜きそして生還した少年少女達の住む施設だ。


先程からなにを話しかけても生返事しか帰ってこないもどかしさに多少イラつきながらもめげずに再び何かを話しかけようとすると、制服を着た青年が静かに施設の玄関を開けて疲れたようにカバンを床へ放り投げる。


「行方不明なのは詩架だけじゃなくて由佳もだろ?」


制服を着た青年は左足からモーター音を発する青年へと呆れたように話しかけた。


その声を聞いた青年は顔を綻ばせてやっと話が出来る人間が帰って来たという風に意気揚々と言った。


「よぉ悠介、随分疲れてんな?どうした悪さが教師にばれてこってり絞られたか?」


ケラケラと笑うその青年に悠介と呼ばれた青年は呆れたため息をついて答えた。


「お前じゃないんだから・・・そんな悪さはしないし、したとしてもバレないようにやるって。ソレより僕が疲れてるのは情報収集で頭使いすぎたからだよ。」


悠介のその呆れた答えにさらに笑い声を大きくしながら青年は言った。


「ただでさえすくねぇ頭脳絞りすぎて知恵熱でもでてんじゃねぇの!」


そう言ってゲラゲラと笑い転げていると、先程からうんともすんとも言わなかった少女が眼鏡の上から目を覗かせて冷たく一言。


「うるさい。」


ぴしゃりと言葉を叩きつけられて青年は一瞬で押し黙り、大人しく座りなおしてばつの悪そうに言った。


「すいませんでした。」


どうやらこの青年は少女に頭があがらないようだ。


年下の少女に五つ以上上の青年が従えられ・・・もとい素直に謝っているというなんとも微笑ましい光景を眺めつつ、悠介と呼ばれた青年はしみじみと考え直した。


詩架と由佳の突然の失踪。


二人の共通点は同じ高校に通っている事ぐらいだ。


目の前の右足をなくして義足を使っているれきも同じ高校なのだが、右足が義足。加えてこの世界に普及している技術では何時不具合を起こしてしまうかも分からないような適当なメンテナンスしかできないという事がありこの施設から離れられないのだ。


たまに寂しそうな顔をするが仕方ないだろう。


あの技術達は葬ると決めたのだから。言いだしっぺは礫だし。


となると二人が一緒にいる時間。それも目撃証言がないことからおそらく二人っきりの時。


二人の行動から察するに恐らく下校時か登校時。


最後の授業までの目撃証言はあることからいなくなったのは下校時だろう。


なんだろう。


嫌な、予感がする。


何かあの災厄の前に感じたような不吉な予感が背筋を襲う。


おそらく勘の鋭い礫は前から気付いていたのだろう。


しかしその予感に面と向かうのには多大な努力・・・精神力が必要となる。


まだ僕たちにはそんなものに向き直ることができるほどに回復してはいない。


いや回復しないかもしれない。


目の前で死んでいった、喰われて行った仲間達の絶望に満ちた顔は未だに夢に出てくるほどだ。


そういう意味では詩架は僕達とは違い、割り切ることが出来ていた。


僕達の手前そういう風に振舞うしかなかったのかもしれないけれど。


何にせよもう仲間を失いたくはない。


今出来る事はこの嫌な予感に再び仲間と一緒に向き直りそして詩架と由佳が今どこで、なにをしているかの情報収集。


この二つか。


悠介は心の中でそう結論付けると手に持っていたコーヒーカップをキッチンの洗面台へ置いて礫とその対面に座って本を読む少女へと声をかけた。


「”KASAHANA.project”をもう一度やるよ。」


僕がそういうと、二人の・・・正確には礫の目の色が変った。


少女は災厄とは関係ないがしかし”KASAHANA.project”の名前は知っている少女だ。


僕の言葉を聞いた少女は本を閉じて僕に問いかけた。


「詩架と由佳は、どこにいるの?」


そういえば彼女は詩架と由佳にとてもなついていたのだった。


だからさっきから何処か反応が乏しいのだろう。


「今二人は・・・・」


一瞬はぐらかそうかとも思ったのだがこの少女はどこか聡いところがある。


はぐらかして妙な不安を与えるよりも真実を話したほうがいいだろう。


「今二人は何かしらの事件に巻き込まれている可能性が高い。それも笠花と苗字のつく二人が巻き込まれたとなればそんなに小さなことではないはず。僕達は二人をここへ”生還”させるために再びあの作戦を再稼動させるよ。」


その言葉に少女は一瞬ショックを受けたが、あの二人は大丈夫だという信頼からか、安心したように再び本を開いた。


その少女の行動を見て、礫は安堵のため息をついてから疲れたように言った。


「ああ、やるからには全力で、花を守ろうじゃないか。」


花・・・少女を泣かせないためにも。


この”KASAHANA.project”を成功させようじゃないか。


花を守る笠のように、在ろう。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

やっぱりテンプレの武器が人を選ぶは欠かせませんよね、なんか違うような気もしないでもないですけどね!


感想・評価ありましたらよろしくおねがいします

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