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過去篇 第九節:始まる反撃

「ぐっへぇ」

割り当てられた部屋に入るなりドサリと体をベットに預ける。

「あー・・・きっちぃ・・・」

一応の手当てはされたが完全に満身創痍だ。

体のどこを動かしてもどこかしらに痛みが走るというのは精神的にも体力的にも結構きついものがある。

「全身が痛いなんてそーそーなくねーか・・・?」

あっても筋肉痛ぐらいじゃね?などととてもたった今まで命のやり取りをしていた、先日まで平和な高校に通っていた学生とは思えないことを考えていた。

「まぁ、取り留めのないことは実は大事だったりするわけですし」

などと若干のキャラ崩壊が危ぶまれる台詞を言って静かに瞳を閉じる。

体はほこりっぽいし、汗かいたし血やらなにやらわからんものまで色々染み付いてはいるが正直今風呂に入ったら水に命ごと意識を掻っ攫われかねない。

そんな言い訳をしながら薄れていく意識にその身を任せた。


****


「ここにはいないって事は分かったけど・・・流石に影と戦っていたっていうのは予想外ね・・・」

ゴクリと喉を鳴らしながら信じられないことを聞いたと呟いている琉雨。

「俺も正直逃げの一手じゃなくて俺が引き止めるなんて事を言われたときは心底びっくりしたっつの・・・」

礫も呆れたようにため息をつく。

「でも詩架がそんな・・・なんていうか自己犠牲といっちゃ聞えは悪いけど、とにかくそんなことをするなんてね?」

由佳がそういうと、礫は小さく笑って答えた。

「まぁ、あいつはなんだかんだいって色々考えてるんだろうさ、色々、な」

礫がそういうと、それぞれに何かを受け取ったのか全員が頷く。

「ま、俺達はどーすればいいのか、なんて事は面倒なことに早めに答えを出さないといけねぇな」

そう言ってパカリと携帯を開くと、いつものように掲示板を開いた。

そしてしばらく掲示板を見つめていた礫はふと、口を開いた。

「そーいや、俺達普通に銃使ってたけどよ、銃とかどうやって補給すんだ?」

礫のその問いは青空に響き、近くに居た軍人の男の耳に届いた。

「あぁ、その話なんだがな、今の銃は弾を作るのが難しくなってるんでなるべく節約、といった方法でしか解決できないんだとさ」

男の答えに礫は納得しかけたが、疑問が口をついて出る。

「あんま解決策になってなくね?」

「あぁ・・・まぁ・・・な」


****


「それなら私が立とうじゃないか!」

夜九時ごろ、突然琉雨がそう叫びながらガタッと椅子を鳴らして立ちあがった。

「とりあえず何の話か聞いてから否定しようか?」

由佳のその冷静な答えにすこし心外そうな顔をして琉雨は説明を始めた。

「まず、私が超一流高校のしかも学校第一位だということは分かるわね?」

琉雨のその言葉に由佳が頷く。

「しかも頭脳明晰愛嬌もいい容姿もいい体系もいい『自慢なら他所で』ごほん。分かったわよジョークが通じないわねぇ。とにかく私がなんとかして戦闘方法を考えると言っているの」

琉雨のその宣言に、顔には出さないし言葉にもしないが、由佳とリリは半分呆れ混じりに頷いた。

「でね?」

そういって両手をグッと何かを固めるようなジェスチャーをして縮めながら説明をする。

「まず、どこでも補給できるものが何かって言うのを探したの」

そして再び手のひらを開くと、そこには何もないように見えるが、琉雨は言う。

「ここには厳密には”空気”があるわよね?それをかなり圧縮すればもしかしたら爆弾が作れるんじゃないかな、とか思ったりしたの。気化爆弾のように可燃性の液体なんて使う爆弾作ってたらすぐになくなるし、普通の手榴弾にしたってそう。なかなか火薬って手に入る物じゃないのよ。軍基地があるような県ならまだしも、少なくとも私のしる茨城には無いわ」

琉雨のその言葉に、リリは納得仕掛けたが、疑問を口にする。

「それって・・・爆弾として機能するんですか?」

「うん。するのよ。爆弾はそもそも衝撃波が主な攻撃手段だからね。熱もあったほうがいいかもしれないけど、実際問題だとすぐ回復するし痛覚も無い影に対して熱をわざわざ攻撃に取り入れるのも微妙な所よね」

琉雨はそう言って一拍子置いて、溜め息と共に言葉を吐き出す。

「ま、理想論なのよねぇ。実際そこまで爆風が起こせるほどに空気を圧縮することが出来る技術なんて夢のまた夢ってレベルだし。それにミサイル弾頭とかに出来たとしてもそもそもそれを発射する火薬が必要になっちゃうから本末転倒・・・なのよねぇ」

「それは、礫の使ってる掲示板で聞いてみればそれなりのきっかけはつかめるんじゃないの?」

琉雨の言葉に由佳が質問をすると、琉雨は首を振って否定して答える。

「今まで学会トップの人間が幾百と集まって、しかも何百年と考えてきたことがすぐに出来ちゃあ困るわよ。人間の今動いていない残りの95~90もフル回転させられたらできるかもしれないけど、残念ながら出来ないのよねぇ」

琉雨の言っている内容を少し思案して、結局つまりどういうことなのかと気化爆弾やら痛覚やらミサイル弾頭やら空気圧縮やらの単語で頭が一杯なリリと由佳は考えるのを諦めて適当に相槌を打つ。

「そんな・・・もんかねぇ」

「そんなもんなのよ・・・」

はぁ、とため息を吐いて椅子にドサリと沈み込む琉雨は再び思考に意識をうずめた。


****


「寝てやがる。しかも俺のベットでかよ」

男子に割り当てられた部屋に入ると、真っ先に目に入ったのは礫のベットに横たわる詩架の姿だった。

一瞬倒れているので死んでいるのではないかと気が気でなかったが、寝息を立てているから生きているのだろう。

「ふぅ、疲れた」

小声でそういいながら小脇に抱えていた荷物をドサッと椅子に投げ置く。

そしてその隣に置かれた椅子に座ると椅子の上に投げ置いた荷物の中にある資料の一枚を取り出して読む。

(影は自動治癒能力を持っていて生態に寄生することが出来る)

分かったのはこれぐらいか。

勝てなくね?などと口の中で呟きながらその資料をとりあえず脇に置いて、明日の予定が大まかに書かれた紙を取り出す。

(まず全員に親に連絡を取らせて・・・その次は避難民捜索隊に参加して・・・やること沢山あるなぁ)

多少気が滅入りそうになりながら心の中でそう言うと、礫が入ってきたことに気がついたのか、詩架が目を覚ました。

目を覚ましてこちらを見る詩架の視線はとても鋭く、とても仲間を見るような視線ではなかった。

「なンだよ」

若干巻き舌になりつつ言うと、詩架は鋭い視線を丸くして、気だるげに答えた。

「いんや、別に」

そう言って再びバタリと倒れる詩架に歩み寄って首根っこを引っつかんでもう一度座らせて言う。

「自分のベッドで寝ろよ、お前のベットすぐ隣じゃねーか」

礫がそういうと、詩架は借りてきた猫のようにおとなしく自分のベットに潜り込む。

素直だな、などと少し微笑ましくなったのもつかの間、ベットにもぐりこんだ詩架から言葉が飛んでくる。

「こまけぇこと気にする姑みてーな奴だな」

(これは怒っていいのか?いいんだよな?)

心の中で反撃はするが、これ以上突っかかって再び詩架の傷が開いても仕方ない。

おとなしく引き下がることにして静かに部屋を出て悠介の部屋へ向かわんとして脚を踏み出した。

「さて、と。わがままお坊ちゃまをひっぱたきに行くかね」

いい加減面倒だし。と言って礫は他の仲間の下へと歩みを進めた。

遅くなりましてすいません。

そろそろ一つの壁がやってきそうな予感がやってまいりました。


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