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過去篇幕間 現在の状況Ⅰ

「くそっ・・・」

ハァハァと肩で息をして胃から逆流してくるモノをつばと共に押し戻す。

(体力が追いついてこねぇ・・・)

久しぶりの長い戦闘はきついな。と右手に握った剣をゆっくりと構えなおしながら礫は思う。

敵は聞くところによればこの世界での選りすぐりの連中六人が相手だとか。

笠花の技術で最大限に体を補助しても苦戦するレベルの人間達相手に詩架は一瞬で二人をやったとか。

(相変わらず化け物だな・・・)

ダラダラと滝のように流れる汗を拭いながら思う。

「あらぁ?もうこの玩具は終わりなのかしらン?」

「おもちゃ・・・ね」

詩架を連れて行った由佳達が戻ってくれば逃げることは出来るだろう・・・が。

「いつまで止まってるんだい!」

女がサッと右手を振り上げたと思えば次の瞬間には足元の家の屋根に使われていた鉄板がこちらへ向かって真っ直ぐに飛んでくる。

あぁ。

面倒くせぇ


****


「あーあぁ全く。面白みもない事やってくれちゃってぇ」

頭上から突如降り注ぐその声に一同は一瞬で脚を止める。

(どこだ・・・っ!)

悠介が声のした頭上を見上げて敵を探す。

「いた・・・っ!」

艶やかな露出の多い衣装に身を包んだ女性を見つけた瞬間に、その人間が詩架を運ぶ由佳の邪魔をしないように悠介が飛び上がって蹴りを放つ。

が。

「あらン、血気盛んなボーヤねん?」

す、と女性は上半身をそらすだけでそれをかわす。

(どーいう論理で飛んでんだあいつ・・・っ!)

心の中で毒づくと、更に追撃を加えるために腕と脚を駆使してさらに右拳を女性の腹部へむけ一直線に放つ。

「激しいのが好きなの?」

捕らえた、と思ったのもつかの間、その放った右拳をいとも簡単に掴まれるとぐるりと右拳を回転させて悠介のバランスを崩させて地面に叩きつける。

「がっ・・・」

肺から空気が押し出されて息が出来なくなる。

が、由佳達を追わせないという目的は達した。

後は。

「勝つだけさ・・・」

そう言って不敵に笑う悠介は久しぶりの戦闘に全身が雄たけびを上げているのを感じていた。


****


「ここから」「先へは」「「行かせません」」

眼前に降り立つ容姿もそっくりのその二人はとてもじゃないが耳だけでは二人の声だと気付かないほどに滑らかな喋りで続ける。

「その方の」「身柄を」「渡してください」

由佳が自分の仕事をわきまえて下がり、その後ろから出る二つの影があった。

「ここはあたし達の出番何じゃないかね?」

「そうね、梨魅お姉ちゃん久しぶりに意見が合うわね」

「あら、珍しく毒を吐くわね」

「それはおねえちゃんが気付いてないだけだって」

「そりゃ失敬」

軽い調子でそう言うと、ス、と敵を合わせた四人は同時に剣を引き抜いた。

「奴<<やっこ>>さんの息の合い方気持ち悪いほどね・・・」

梨魅がそういうと、魅麗も呆れるようにうなずく。

「あれ筋肉の加減まで同じなんじゃないの・・・?」

魅麗がそういうと、眼前に立つ少女達は答えた。

「幼き」「頃から」「二人で一人」「鍛え抜かれた私たち」「貴方達に」「「勝ち目はない」」

「ハッ!言ってくれるねぇ!さぁ・・・・ゲームタイムだ!」

梨魅のそのことばを境に、殺し合いが始まった。


****


「礫さん・・・無事だと良いんですけど・・・」

ハッハッとリズムよく呼吸をする氷見が言った。

私たちをここへ呼んだ個々の住人との落ち合い場所まであと少し。

今は足止めをしてくれる彼らを信じるしか、ない。

「大丈夫よ」『礫さんはあれでいて中々強いですからね』

由佳とリリが合わせた様に言うので、思わずその通りなのではないのかという思考が自分を埋め尽くす。

そしてチラ、と由佳のほうを見れば、何時かの状況程にボロボロになった詩架の姿がある。

ズキ、と心に痛みが走るが、今はこの痛みにかまけている所ではない。

「来たようですね。」

わずかに感じる殺気に、氷見は敵がやってきたことを把握して神経を尖らせる。

「私が相手します。由佳さんは詩架さんを頼みます。」

そういう氷見に、由佳は何かをいいたそうな表情を向ける。

それも分かる。なぜならば氷見は笠花の人間の中ではダントツとも言えるほどに実力が低い。

しかし。

「大丈夫ですよ。私も一応あの戦闘を生き残ったんですよ?しぶとさに関しては自信あります。出来るだけ時間を稼ぐので・・・できれば仲間を連れてやって来てください。あの日みたいに詩架さん連れて来られても困りますけどね」

そんな軽いジョークを交えてそういうと、氷見は下半身から大きな薙刀を取り出した。

あの人から教わったこの大きな力の使い方。

今度こそ、最後まで人を守れますように。


****


「全く・・・面倒な・・・」

琉雨が大きくため息を吐くと、目の前にいるギムニが困ったように斧を構える。

「悪いがお前等をここから出す訳にはいかなくてな・・・っ」

「ホレイムさん達は先にやるべき事をやってください。私より貴方達の方が個々の連中をどうすればいいかは分かっているはず。」

琉雨がそういうのを聞いて、ホレイムは躊躇いながらも歩みを進める。

「本当に大丈夫なのか・・・?」

「ええ。暇つぶしに聞かせてくれたあの三年前の話、楽しかったですよ。それと・・・記憶を思い出させるのに一番効率的なのは、そのハイナさんの言葉だと、私は思いますよ」

その何かを知ったような態度に疑問を抱きながらも、ホレイムは駆け出した。

(私の予想では、今尖鋭兵士となっているチェイサーズの人間は全員三年前の災厄で活躍した英雄達のはず。戦乱から三年で彼女があそこまで畏怖するに値する人間は育たない。ということはつまり三年前の戦乱で培われた能力に違いない。そして記憶があるならば異世界侵略という馬鹿げた夢に付き合うほど楽な人生を送っていない事は三年前のことで確実。このことから言えるのは)


彼らは記憶を奪われた上に都合のいいように記憶を上塗りされていいように操られている。


「まったく腹立たしいことをしてのけるわねあんたのトップは・・・っ!」


****


「この門は究極的に言えばただの転移魔法だ。」

ハイナの言葉で説明が始まる。

由佳が来る前に説明を終えたいらしい。

「由佳が来てしまえば詩架の治療に専念しなければいけない。今は大分余力があるが、コトリが詩架の治療を始めればゲートを維持するのは至難の業だ。それも一人でやる必要がある」

ハイナはそう言ってフィルンへと顔を向けて言った。

「出来るか?」

「出来ないとはいえないよね、この雰囲気」

「いい答えだ。じゃあわしはこのゲートを通じてかつての隠居している仲間達に一斉に話しかけるからその間維持していてくれるかの」

ハイナはそう言うと、着々と地面からダイヤを抽出して装備を整えていく。

「今残っているチェイサーズは私の知る限りでは六人。恐らくもっといるだろうがな。あと評議会のムィヌとヒナはまさに一騎当千の力を持っている。この面子を退けるには、奴の・・・いや、彼等の力が必要じゃ。」

キュ、と篭手を締め直したのと時を同じくして、由佳は到着した。

「早く詩架を・・・っ!」

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