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過去篇 第二節:惨劇の始まり

「明日もう帰りかぁ」

寝袋に入って寂しそうにそういう鈴の隣でリリがむくりと上半身を起こす。

「ふむ・・・・今のままじゃなーんか足りないと思わない?なんというか、せっかく一番運動神経のいい詩架の動きを見ていないというか。ねぇお姉ちゃん?」

含みのあるリリの言葉に鈴は顔を真っ赤にして寝袋の中に潜り込む。

それを見て何かを理解したのか、由佳が付け足した。

「そうね・・・そうよあれやりましょう!夏の夜のキャンプといえばお決まりの!」


****


「肝試し?」

既に半分寝かかっていたところを無理やり起こされてかなり眠たげな男子諸君を前に並べ偉そうにその疑問に答える由佳。

「ええそうよ、この夏の真夜中のキャンプでやることといったら一つでしょ?肝試しよ肝試し!」

その由佳の言葉に未だに頭の動いていない男子諸君がまぁ・・・やるならやるか・・・というレベルで賛同した。

「じゃあクリア条件を言うわね。胎内めぐりとか大仏とかガマ石とかポイントの要所要所にここにゃ普通に考えてねーだろっていうものが置いてあります。それを探して持ってくるのが条件ね。全部回るとなると時間がかかりすぎるから一つだけでいいわよ。」

由佳が自慢げにそういうのを聞いて、やる気のなかった男子諸君もだんだんとワクワクしてきたのか、それとも眠気が覚めたのかテンションがあがったように笑顔が浮ぶ。

詩架は未だに眠そうだが。

「じゃあー・・・ふむ・・・まず詩架と鈴ちゃん先発ね。後から来た人を驚かすのもありよ?」

由佳のその言葉に鈴はやっぱりかーっと小声で呟いて顔を抑えてしゃがみ込む。

一方詩架にいたっては反応は無い。

「へーい起きてるぅ?」

由佳がペチペチと頬を叩くとやっと詩架は反応したように目を開けた。

「んあ?なんだっけ肝試しか。まぁいいかいくぞ鈴。」

そう言ってスタスタと歩き始めてしまう詩架に慌てて付いて行く鈴をみて由佳は心の中で思った。

(ムードの欠片もありそうに無いわね・・・詩架も鈴も心霊系はぜんぜん大丈夫そうだし・・・)


****


「ありそうにないものってかなりあいまいだよな」

詩架がハンディライトで地図を照らしながらどこのポイントへ行くか見ながら鈴にそういう。

「そ・・・そうね」

なんだろう。

いつもは普通に会話しているのに今はそうは行かない。

割と真剣にそんなことを考えている鈴に気付かずにそのままスタスタと歩く。

「あ、ここいいんじゃね?胎内巡りって所」

そう言ってライトを照らしながら指し示すポイントは胎内めぐりという岩の形がどうのこうの言ったようなところだ。

正直なんで胎内の必要があったんだと聞きたいところはあるがそこは気にしてはいけないのだろう。

まぁなんにせよ異論は無い。というよりもそれなりに遠いために少し嬉しかったりする。

「そ、そこでいいんじゃないかな?」

「何だお前怖いのか?」

いつもと違う口調に違和感を感じたのか、詩架がたずねてくるがそれを首を振って否定する。

実はちょっと怖い。

「夜の森って雰囲気ぜんぜん違うね・・・」

怖さから来るのか、それとも違うものから来ているのかわからない高鳴る鼓動をごまかす様に少し大きめの声で詩架に問う。

「たしかになぁ」

そういいながら周囲を見渡す詩架をみて、鈴は思うのだった。

(あぁやっぱり・・・私は詩架のこういう雰囲気が好きなんだ・・・)


****


「爆発しろ」

「え?」

唐突にそういう悠介に少しびっくりしたように聞き返すリリを適当にごまかして再びリリに聞く。

「鈴は詩架のことが好きなの?」

その問いに、かなり嬉しそうにキャッキャッキャと答えるリリ。

「そうなのよーあの昼行灯みたいなお姉ちゃんがねぇ」

あらあらうふふという言葉が浮ぶかのようなその表情に呆れながら悠介は心の中で初恋の相手を想った。

(鈴は詩架がすきなのかぁ・・・・)


****


「ここか」

詩架がハンディライトでチラチラと胎内廻り岩を照らす。

「普通にはありそうに無いもの・・・由佳がリュック以外に何も持ってなかったことを考えてみればそんなに大きくなさそうね」

そう言う鈴の言葉に頷きながら外から内へと探っていく。

(そろそろ、切り出そうかな)

早鐘を打つ心臓を必死になだめてさも平然としているかのように振る舞いながら、心の中ではそんなことを考えていた。


「あ、あのさ」


「ん?」

必死の思いでかけた声はしっかりと詩架に届いて詩架は聞き返してくる。

そして続ける。


「聞いて欲しいことがあるの」


その言葉に詩架がこちらへ振り向く。

それを見て続きの言葉を口にしようとするが、バッと物陰から何かが飛び出してくるのが視界に見え、思わず小さい悲鳴を上げる。

「な、何?」

訳も分からずそう詩架に聞くと、詩架は闖入者を掴み上げて答えた。

「キツネだ」

ぶらぶらと首の後ろの皮が余っているところをもって揺らすと、すこし嫌そうにキツネが身じろぎする。

「んだよお前が最初に飛び込んできたんだろ?」

詩架はそう言ってキツネを放してやると、再び鈴に向き直って聞きなおす。

「なんだって?」

詩架がそう聞いてくるが、正直タイミングを逃してしまった今もう一度切り出す勇気は無い。

ということでそこらを見渡して目に入った黒い何かを指差して言った。

「あ、そ、それ、なんじゃないかな?」

ん?と訳が分からそうな顔をする詩架に、口だけで言う。

あ い て む

鈴がそういうと、あぁ、という顔をして詩架は鈴の指指した方向へとライトを向ける。

するとそこには、真っ黒なドアノブのようなものがあった。

「んだこれ」

訳が分からない、といった表情だが、小さく「確かにこんなところにドアノブがあるわけねーわな」と言って持ち上げようとすると、案外それは重かったらしくすこし力をいれる。

すると、ギィ・・・という鈍い音を立ててドアが”開いた”

「は?」

詩架が間の抜けた声を発した一瞬、視界が黒く染まる。

そして次の瞬間には。

惨劇が始まった。

日常パートの少なさに定評のある私です。

次回より割りと欝展開です

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