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第四幕 第十二節:薄れゆく意識の中での再会

「やぁまったく偶然なことに元気になってしまったよ」

「なんだよあの妙な感傷返せよこら」

若干険悪なムードを漂わせる詩架に、フィルンは軽快な笑みで返す。

結局、チェイサーズは二人失って一人はトラウマを抱える人間が生まれ、そして退散していった。

詩架が突き刺したフィルンにいたっては刺さったところが良かったのか、既に起き上がることすら出来るようになっている。

「まぁまぁ良かったじゃない。ね?」

三年前のあのことを指して言っているのか、と安易に把握できた詩架はため息をついてどさりと座り込む。

門も開くには開けたのだがなんでも場所指定を間違えて遠いところにしてしまったために一瞬通信が出来るようになっただけらしい。

なんだこのグダグダ感。

そんなこんなでフィルンの部屋に護衛として詩架と由佳とシャノア。あとは買出しだ。

由佳が窓を開けて空気を入れ替えようとすると、コンコン、と大人しめのノックが響く。

「誰だ?」

まさか襲撃者か、とも思うがどうやら相手方に殺気は無いようで、警戒する必要もなさそうだ。

ガチャ、とドアを開けると、そこには二人の少女がたっていた。

「こん」「にちは」

あまりにきれいに揃った声に一瞬何も疑問を感じずにスルーしそうになってしまうが、よく考えればおかしいと言うことに気付く

「面倒なしゃべり方するな・・・」

思わずそんなことを言ってしまうが、少女達はなれているのかそれを華麗に聞き流す。

「あなたたちに」「用があってきました」

言葉のつなぎ目も綺麗だし、声色も全く同じなために目を閉ざせば全く違和感はない。のだが。ふと二人の口の動きを見ればどことなく違和感がある。

「用とは?」

詩架が聞くと、少女達は答える。

「いままで」「手荒に捕まえようとしてきましたが」「今度は交渉によって」「つれてこようと言う事です」

「交渉・・・?」

「ええ」「端的に」「言うと」「貴方の仲間の」「琉雨が」「捕虜になりました」

交渉、と言うだけでは何の話か分からなかったが、琉雨が捕虜になったと言う言葉は少女達が評議会の人間・・・おそらくチェイサーズであろうことが容易に想像できる。

「それで?」

内心冷や汗だらだらだが、表面上はいかにも平静にいるという風に保つ。

「裏切り者」「フィルン」「の身柄と」「貴方達の同行」「これが条件です」

「それをクリアすれば琉雨は返すって事か」

「「はい」」

少女達の肯定を聞くと、詩架は由佳に一瞬視線を投げて答える。

「考えるまでもねぇな」

詩架がそういうと、フィルンは同調してその先を続ける。

「ああ。早く僕を連れて―――『断る』え?」

フィルンの言葉をさえぎって出た詩架の発言に目を見開いて驚く。

「い、一体何を―――『ばぁかが、琉雨が俺達にそんな要求呑むことを願うわけがないだろう。むしろアイツは傲慢にもこう言うさ』」

さっさと助けろ、ってね。

詩架がそういうと、無表情だった少女達の表情に幾分かのかげりが生まれる。

「交渉」「決裂ですね」

「もちろんだ。先手は打たせてもらうぜ」

詩架はそういうと、外に待ち構えるチェイサーズのいるであろう場所・・・大まかに言ってしまえば全ての壁めがけて風の刃を飛ばす。

スパッと軽快な音を立てて壁を切り裂きながら進むその刃はあろう事か建物の支柱全てをも切り裂いた。

「さぁ逃げろっ!」

バッと風で少女達を壁に押し付けると勢い良く立ち上がる。

未だに状況が飲み込めないフィルンの首根っこを掴んで窓から飛び出すと、眼前に二人のチェイサーズがそびえ立つ。

「どきな」

詩架は低い声でそういうとあらん限りの力を振り絞って風を圧縮させて吹き飛ばすと、右側に立つ華奢な人間は吹き飛ぶが、左側の人間は恐らく風大陸なのだろう。風を上手く操ってその爆風をやりすごした。

「いい加減学習してきやがるな」

チッと心の中で舌打ちすると未だ硬直するフィルンを屋根つたいに走る由佳に放り投げる。

「しばらくは俺が持ちこたえる。その足手纏いどっかに置いたら応援引き連れてきてくれ」

詩架はそういうと、思い切り屋根に足を突き立てて勢いを殺す。

「さぁ、ショウタイムだ」


****


「く・・・ぉっ」

メギ、と梨魅の硬い拳が腹部にのめり込む。

「いって・・・っ」

容赦ないその一撃に苦悶の表情を浮かべてねじれ倒れこむ。

「雑魚ね」

「おっしゃる通りで・・・っ」

「よし終わったなら次は俺か?」

苦悶の表情を浮かべる悠介を礫がどけると、両手をだらりと下に下げて構える。

「相変わらず妙な構えねぇ」

「構えなんてやってる方がナンセンスなんだよ」

「まぁたしかに構えなんて微妙なものよね」

その梨魅の言葉を皮切りに、両者間の間に真剣な雰囲気が漂う。

先に動いたのは礫だった。

ギュ、と地面を踏みしめて真っ直ぐに梨魅に突撃をかけるが、梨魅はそれをあろう事か上から殴りつけて地面に沈めると言う方法で礫を止めようとした。

しかしその拳はすれすれで礫の後頭部から外れて地面に突き刺さる。

はずだった。

接地するはずだったこぶしは、早すぎる動きによって生じた風の障壁によって地面を抉り、拳はどこにもぶつからなかった。

「う・・・うぉう・・・」

間一髪で一命を取り留めた礫は全身の毛穴が開くのを感じる。

これは本気の戦いか。

今まで心のどこかにあった余裕は今となっては吹き飛んでいた。

「「聖紋・・・解放・・・っ!」」

両者がその言葉を放ったのは同時だった。


****


「チッ・・・」

心の中にしまうこともなく盛大に舌打ちをする。

「私がついていながらこんな事に・・・」

ガシャガシャと手首を動かしてそこに対魔手錠がつけれているのを再び確認する。

「何回やってもかわんねぇよなぁ・・・」

そうため息をついて何もない天井を見上げる。

ここは地下牢。

まぁ地上の施設は琉雨がぶっ壊しちまったんだがな。

そんなことを思ってあんな脅威的な兵器を平然と使ってのけた少女を再び見つめる。

すると眠っていた琉雨も視線をかんじたのか、居心地が悪そうに寝返りをうつ。

「こんな状況でよく寝られるよな・・・」

彼女の図太さにため息を吐いて感心のような呆れのような感情を諌める。

コツン、と壁に寄りかかって体重を預けると、ふと寝台からゴソゴソと布がこすれる音がする。

「起きたのか?」

ホレイムがそういいながら寝台の方へと視線を投げると、そこには予想通りに琉雨が上半身を起こして伸びをしているところだった。

「ふぁぁあ・・・」

「良くこんなところで寝られるよな、お前」

「あっちの世界でいろいろとゴタゴタがあってねぇ。しばらく寝付けなかったのよ」

「だからって見知らぬ世界の地下牢で寝られるわけでもないだろう」

ホレイムはそう言ってふと、違和感を感じる。

何故伸びが出来るんだ?

そう思って再び琉雨の手首へと視線を戻すと、そこには手錠の跡こそあるが、手錠そのものはなかった。

「お、おまえぇ!?」

ホレイムが驚いて思わず大きな声を出してしまう。

「あぁ、これ?こんな脆い手錠なんか使ってなにがしたいんだか分からないわね」

彼女は平然とそう言ってホレイム、老執事の手錠も次々と破壊していった。

本来魔力を封じ込められたら力も弱くなるはず・・・なのだが・・・

異世界人にこの世界の常識を求めるのも可笑しな話か。

ホレイムはそう開き直って鉄格子へと手をかける。

ジュ、と小さな音を立ててドロリとたれる溶けた鉄が地面に溜まるのをそのままに、一番大きいい自分が出れる程度には出口を確保する。

以前までの自分なら出来なかった芸当だが、爆発で命の綱渡りをしたら昔の記憶が甦って来たようで炎の扱いは以前のそれとは全くの別レベル。もはや別次元といってもいいほどに雲泥の差が出来た。

まぁ記憶が甦っている間につかまっちゃあお話にならないのだが。

何はともあれ脱出は成功した。

「あとは異世界侵略なんていう病気はいった連中をぶっ飛ばせば丸く収まる・・・のかねぇ」

ほ、と小さく吐いたため息はそのまま薄暗い地下牢に消えていった。


****


シャン、と聞き心地のいい音を伴って出現した風の刀は詩架の手にぴったりの造形をしていた。

(俺用に俺が作ったのに俺が使いにくいなんてことがあっちゃあどうしようもないけどな)

心の中でそんなことを言って苦笑して視線をあげると、今度は別の意味で苦笑したくなる現実が待っていた。

総勢六人のチェイサーズ対一人の少年。

(正直負け戦的なものはあるよなぁ・・・)

既に愛刀となりつつある左手に握られた剣と風で出来た剣を握り締め、相対する六人の人間をにらみつける。

「簡単には死なないぜ・・・?」

不敵に笑ってそういう詩架だった。

しかし。

二十分後。

「クソが・・・おせぇよあいつら・・・」

ゲホッと肺から血を吐き出してガクガクと震える足を押さえつける。

流石に聖紋・魔法をフルに使ったとしても相手は洗練されたチェイサーズ。

到底敵う相手ではない。

しかし詩架もただやられていたわけではなく、相手のそこかしこに傷をこしらえさせるという偉業ともいえることをやってのけている。

「正直俺たち六人が一人を狙ってここまで苦戦するとはおもわなんだ」

これまた軽薄そうな口調でそういうと、ゴッと詩架の空気を燃やす。

さらに。

「ええ、全くだわ」

唯一の逃げ道である上下から屋根に使われている瓦から生成された分厚い板に押し潰されそうになる。

それをない力を振り絞って魔法を駆使し、かろうじて受け止める。

「正直俺もびっくりだぜ・・・」

詩架はそう言って更に力をこめて鉄板と火を押し返そうとするが、その力を入れた瞬間の隙をつくようにして、腹部に強い衝撃が走り、そして後方へ吹き飛ばされる。

「っつぁ・・・っ!」

駄目だ。

意識が朦朧とする。

ここまでか・・・・

遠のいていく意識。

意識を手放す直前に聞こえるのは。

「おい!めぇ覚ませ!おい!」

どこかで聞き覚えのある憎たらしい声だった。

最後までよんでくださってありがとうございます。

こんな終わり方ですが四幕はこれにて以上となります。


次回!詩架達笠花の人間の過去&度重なる戦 の二本立てです!


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