第四幕 第三節:苦楽
「チッ・・・!」
散らばる銃弾をすれすれでかわし続けながら、姿の見えない敵を探す。
「どこにいるか探索は!?」
リリに叫ぶがリリはこの筑波山は磁場が強すぎて生体反応が上手く使えないとの事だ。
生き物ではないものの相手をずっとしてきていたことが今になって技術に響くか・・・っ!
脳裏で毒づきながらも平行して今出来る最高のルートを探る。
相手はこちらを完全に殺す気。
なら・・・っ!
「人間相手は心躍らないねぇ全くよぉ!」
後ずさりしながらかわしていた動きを止め、地面を蹴り一瞬で弾筋をたどって元へと飛び込む。
するとそこには、驚愕に目を見開いた一人の男が居た。
「そぉら!」
とてつもない勢いで放たれた拳は男の顎に直撃し、そして男の意識を途絶えさせた。
「あー礫だ。一応一人は気絶か絶命させた。他に居るかも知れねぇ。こいつらはためらいも無く銃撃ってくるぞ。平和ボケした頭を再起動させろ。」
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「そういえば、火の大陸に行かずともそいつから火の宝玉奪い取ればいいんじゃないかのぅ?」
全身に小さい傷を作り、さらに肩で息をしている詩架に向かってハイナはおっとりとした口調で言った。
「あぁ!?ンな事出来んのか?」
詩架の怒号交じりのその声にハイナは冷静に答える。
「ま、そいつほどの腕の持ち主ならできんでは無いとは思うがのぅ。しかし水大陸の居ない今、本気の火大陸の人間の相手はちと・・・面倒じゃぞ?」
ハイナ言葉に少し表情が柔らかくなった詩架は、コンタクトを外して笑いながら言った。
「いいねぇ、やっと死の行軍が終わるらしいじゃあねぇか。どうせなら長いダルさよりも短いきつさってなぁ!」
ドッ!と地面を蹴って跳んだ詩架は先ほどまでのスピードとは比べ物にならない速度でフィルンの脳天に剣を振りかぶる。
「いきなり早いな・・・っ!」
その速度にワンテンポ遅れながらもしっかりとガードする。
ギィン!と金属と金属が擦れる嫌な音が耳を占めるが、戦闘モードへと突入した詩架たちにはその音は一切聞こえない。
「っらぁ!」
縦一文に切り裂かんと振り上げたフィルンの懐に潜り込み、動きにおいつけていない剣をそのままに右手で拳底を食らわせる。
さらに続けざまに遅れて動きについてきた剣を胸に突き立てんとばかりの勢いで突き出す。
が。
ゆらっ・・・・
「んあ?」
左手で思い切り叩き付けた剣は全くの無感触で空を切る。
そこに敵は居るのに。
一瞬何が起こったのかと疑問になるが、次いでフッ・・・と消える敵の姿をみて一瞬でその事態を把握する。
「蜃気楼・・・か。」
「へぇ・・・これ蜃気楼っていうんだ。知らなかったよ。」
少しはなれたところにめがねを掛けなおしながら言う男の表情には先ほどの驚きの色はなりを潜めていた。
「なんだよ知らねぇで使ってたのか?いかにもながり勉そうなめがねの癖に。」
「めがねは関係ないだろう。」
「残念、実はあるんだよ。」
詩架は心外そうに言うフィルンを見ながら軽いノリでそう言うと、右ポケットに入ってるモノをさりげなく確かめるようにして触る。
(さて問題は・・・蜃気楼を吹き飛ばす風があればいいんだがこれ・・・使えんのか?)
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「人は自分を確認するためには影を見るしかない。」
『何の言葉ですか?』
「詩架の言葉だよ。」
突然語りだした礫にリリが疑問をぶつける。
「詩架が前に・・・な。ちょっとしたことがあったときに言った言葉何だが・・・まぁ俺も気に入ったわけで。」
『ちょっとしたこと・・・やっぱり三年前のときですか・・・・?』
「ああ。」
ずるずると動かない体を引きずりながら答える礫の息が段々と上がってくる。
「畜生こいつ重いな。」
ドサッと手を離して地面に置くと、適当な場所の石に腰掛ける。
「近況どうだ。なんか居たか?」
ネットワークに問いかける礫の問いに答えるものは居ない。
「ない・・か。」
はぁ、ととため息をついて再び麓へと降りるために立ち上がる。
『頑張ってください、あと三合程で着きますよ!』
「嫌な現実を突きつけてくれるね・・・・まったく・・・」
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スッ・・・・
空気の異常を皮膚で感じ取った瞬間には、そこに居てはいけないと本能が警鐘を鳴らす。
(逃げ切れるかっ)
咄嗟に地面を蹴って離れようとするがそれを上回るスピードで大気が轟音を立てて爆発した。
「く・・・そっ!」
爆発の中心に居たためにいかれた三半規管を必死に立て直しようとしてもなかなか上手くいかない。
「どういう原理で・・・」
そう愚痴をこぼすがその先の言葉はフィルンの攻撃によってさえぎられる。
「その程度でよく四大陸を敵に回そうと思ったね!」
フィルンはそういうと右手を高々と上げて炎を纏わせて勢い良くこちらへ振り下ろす。
「これで終わりだ!」
煌々と光を放ちながら迫る火球をみて、詩架は何を思ったのかポケットからおもむろに宝玉を取り出した。
「あんまし右目にゃあ頼りたくねーからな・・・」
そして詩架はそれを握りつぶす。
すると次の瞬間には眼前の火球は消え去っていた。
さらに。
「なんだこれ・・・」
詩架を取り巻く周囲の風は青白く輝いている。
その現象に一瞬何事かと全員が色めき立つが一方でハイナの顔は青白くなっていた。
「馬鹿・・・ものが・・・っ!」
ハイナは小さくそう叫ぶと次いでフィルンに向かって声の限り叫ぶ。
「逃げろ!死ぬぞ!」
「はい?」
そんな間の抜けたフィルンの答えを聞いてフィルンが状況を掴みかねていると判断したハイナは一瞬でフィルンの目の前へ移動する。
「自分の持ちうる全ての力をもってして受け止めろ・・・・っ!」
次の瞬間。
世界の色は消えた。




