第三幕 第五幕:決戦Ⅰ
「ああああああああああああああ!」
満身創痍となった体を無理やり動かして目の前に居る敵を駆逐すべく右こぶしを振り下ろす。
バガン!という音と共にエントランスホールの地面を抉りひっくり返すと打撃をかわしたモーションのままその地面から離れた石たちをレギンへと叩きつける。
ゴッという鈍い音が響き何かを潰した。という手ごたえを感じるが石が地面に落ちた後のその場所にはレギンは居ない。
どこへ行った・・・っ!
姿を消したレギンを見つけるために視線だけを動かし周囲を見渡す。
が、居ない。
それならば。と索敵の方法を変えた瞬間に攻撃はやってきた。
ヒュッと風が動く音に弾かれるようにしてお辞儀をするように地面へ倒れこむと、ハイナの首のあったところに透明な刃が通り過ぎた。
「あぶな・・・」
一歩遅れれば手遅れだったことに冷や汗を流しながらも、地面に付いた右手で地面を力強く押してレギンへと飛び掛る。
空中で生成したダイヤモンドの剣を振りかぶりレギンを真っ二つにすべく襲い掛かるが、その攻撃は易々とレギンの風の刃に阻まれる。
「おやおやハイナお嬢様。少しばかり・・・力が足りないのではないのですかな?」
ニヤリと嫌な笑みを浮かべるレギンの体を一瞥するが、そこには大した傷はない。
あまりの無力感に奥歯を噛み締めて踏み込みを強くするが、均衡は崩れない。
このままでは・・・・
負ける。
頭に自然と浮かんだその三文字を必死で否定しながら打開策を考える。
おかしい。
レギンは私はともかくレイグがこの男に負けるわけがない。
というか。この男、以前手合わせしたときとは格段に強くなっている。
何故・・・?いや、まさかっ!
心の中で逡巡したその思考に気づいたかのようにレギンは再び口を歪ませて言った。
「おやおや、気付くのが遅いですねぇ・・・?そうですよ私がレイグを倒せる程に実力が上がったのは・・・」
レギンはそう言うと口から漏れ出す黒いモノをちろちろと見せながらハイナに言った。
「この影のおかげですよ。まったく貴方たちは面白いものを作ってくれました。おかげでこんなに簡単に戦闘力を挙げることが可能になりましたよ。」
嫌な笑みでそう言うレギンに露骨に嫌な顔を向けながらハイナは答えた。
「そんな妙な力を”借りて”あたかも自分が強くなったかのように勘違いしてるとは、全くくだらないな!」
「ええ。確かにこの力は借りて居るのかも知れませんが、しかし借りている間は私のものでしょう?それを自分のものとして言って何が悪いんですかね?」
「間違っているわけではないがの・・・それはちと・・・つまらんの?」
ドッ!とダイヤモンドの剣を押し返すと、トン、とレギンは後ろに小さく跳んだ。
「つまらない。楽しいという理論ではこの話は終わりませんよ。それはつまり個人個人の見方によってそれは容易く変貌してしまいますからね。それは面倒だ。」
だからこその世界統一。
「ディストピアか。」
ハイナが小さくそう言うと、レギンは大きく口を開いて笑って言った。
「その通り!弱小な人間は搾取される側、そして私たちのような強い人間は搾取する側。それが一番理想的なのではありませんか?」
「それはお主たちにとっては、じゃろう?搾取される側のことは考えておらんではないか。」
「それの何が、悪いんです?」
そのレギンの言葉に迂闊にも、頭に疑問符が浮かんでしまう。が、一瞬遅れてその言葉を理解してハイナは結論を出した。
「考え方、価値観が根っこから違うようじゃの。」
「そうでなければこんな殺し合いの戦いになんて発展してませんよね?」
「まぁそれも一理あるでの。」
ハイナが呆れたように剣を構え直すと言った。
「しかしわしは・・・私は、ディストピアなんていう自分が頂点に立ちたい奴がやるような自己満足行為は好きではないのう。」
「ええ・・・あまりにレベルの高い考えは貴方のようなレベルの低い人間には理解されないものですよ。」
レギンのその言葉にハイナは、ニヤリとこれまた下品な笑みを浮かべて見下すような視線でレギンを射抜いて言った。
「知っておるか?他人に守られていると気づかずに可笑しな事を言っている人間ほど・・・滑稽で笑えるものは・・・ないぞ?」
ハイナのその挑発するような言葉に、レギンは一瞬で顔を赤く染めた。
普通、影という負の感情を餌にするモノを宿した人間をあおるというのはやってはいけないのだが。
この場合そういうわけにも行かないだろう。
認めたくはないが、奴の強さは私を凌ぐ。
戦闘が始まってからの経過時間は約20分。
頼んだぞ・・・ホレイム。
ハイナが心の中で戦友に色々と頼んでいると、目前のレギンの体の節々から黒い”何か”が吹き出しているのが見て取れる。
「孵化、か。」
人の心に巣食う影は、その人間の憎悪が一定以上の量を影に与え続けると、その影は孵化する。
どうやら信じたくなかったがこれは・・・事実だったのだろう。
あまりに残酷なために発表しなかったが・・・
「仕方ない。ここでわしが決着をつけて一気にこの戦いを、終わらせよう。」
ハイナはそういうと身に纏っているダイヤモンドを一旦全て払い落とすと、再び地中からダイヤモンドを掘り起こし身に纏った。
「これが正真正銘の、最後の戦いであることを願おうぞ。」
ス・・・と剣を引くと、幕が上がったかのように二人は同時に叫び、そして激突した。
「ぐるぁああああああああああああああああああ!」
「あああああああああああああああああ!」
****
ドン!と大きな振動が地下牢まで届き、パラパラと天井の土を降らせる。
「不味いな・・・」
戦闘が激化するにつれてさっきからゆれが酷くなっている。
不安な表情で背後についてくる風大陸の二人を見ると、二人も少しあせったような表情で走っている。
『復讐で殺してやってもいいけどそれは後だ。とりあえず宝玉を引き渡せ。』
地下牢の扉を溶かしてそう言ったホレイムに友好感というものは皆無だったが、走りながらの会話で大体の風大陸の状況は掴めた。
この戦争の原因は、勝手に宣戦布告をして勝手に攻撃をした。
過激派のトップにいる奴のせいだということらしい。
それを抑えられなかったのかと聞けば、どうやら家族を人質にとられてそれどころではなかったのだとか。
王しっかりしろよ。と突っ込んだことは言うまでもないが、レギン相対してみれば分かったのだが奴の実力はかなりのものだ。
それを承知でアイツは私たちに宝玉を捜せと命令したのだが・・・
「なぁ、アンタたちは信用できるのか?」
ホレイムのその質問は、流石というべきなのか。この局面で単刀直入に質問されてうそをつける人間はそうそう居ないだろう。
「ああ。」
しっかりとした王とレイグの答えに満足したホレイムは一瞬、ハイナの援護に行こうかとも思ったのだが、王の記憶力に阻まれる。
「あったぞ!」
王が宝玉を見つけたらしくホレイムに差し出したのは土の宝玉だった。
―――この城からだったら飛び降りれば直ぐか。
一瞬でそう当たりをつけ、手近な窓を叩き割って外への脱出口を確保して二人に知らせを頼む。
「ハイナの援護に行ってくれ!私は土の神塔に宝玉を戻してくる!」
ホレイムはそう言うと王とレイグの返答も聞かずに窓へ足をかけてアクルアの名を叫ぶ。
「アクルア!土大陸へ降りるぞ!一刻も早く!」
アクルアの姿も把握せずに叫んだのだが、アクルアはグリフォンの背に乗り、一瞬でホレイムの前に姿を現した。
「特急グリフォン号です♪」
最後の宝玉が手に入ったからか、柄にもなくテンションが高いアクルアだが、ホレイムはそのノリに乗らずに真剣に言った。
「悪いがグリフォンでも遅い。暑いのを我慢してくれればフェニックスを出せるんだが。」
いつもは軽薄なノリのホレイムのその真剣な表情にアクルアは表情を引き締めて頷いた。
「じゃあ行くぞ!顕現しろフェニックス!」
ダン!と壁に手を押し当てると、そこに半径1.5mほどの魔方陣が出現し、その魔方陣からゆっくりとフェニックスが羽ばたきながら出現した。
その出現したフェニックスの背中にアクルアとホレイムが飛び乗ると、アクルアの乗っていたグリフォンにアクルアが指示を出す。
仲間たちに”逃げろ”と伝えろ。と。
アクルアのその指示が終わったことを確認すると、ホレイムはフェニックスの背を炎を纏った拳で叩く。
すると。
バシ!という空気の壁が体にあたる音を聴覚一杯に受け止めながら地大陸へと凄まじいスピードで飛び出した。
最初は何が何と分かる視界も段々と全てが線となり、ついには目が追いつかなくなり全てが混ざった奇妙な世界に成り代わる。
間に合え・・・っ!
****
凄まじい轟音が鳴り響き、視界が何も認識できなくなるほどに世界が揺れた。
そして後に出現したのは。
”絶望”と形容するべきモノだった。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
わー厨二小説(棒
ええこの一言に尽きるような気がしますね。
でも小説ってそういうものだよねとか言って開き直っていますけどね!
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