第三幕 第二節:戦乱の希望
あれはもう争いが長く続き過ぎてすでに戦いが始まってから何年経ったか数えられるほどの体力も残っていない。というレベルの戦乱の最中だった。
火・水・風・地の大陸は当初こそしっかりとした目的があったのだが、当時は既に仲間が殺されたから。親が殺されたから。という報復合戦へと成っていた。
そして当初の目的は全ての種族の人間達から忘れ去られていた。
そんな、悲しみと恨みで埋め尽くされたその世界。
その世界では当然神獣というものは真っ先に敵に狙われて確保されていていた。
そんな折。
とある大陸。
「思うんだが・・・今まで魔法の動力というものは全てにおいて魔力を行使して使っていたよな?」
どの大陸の人間とも分からないほどに深く大きいローブに身を包んだ男は低い声で言った。
「しかしその魔力の代替物として恨み・・・は使えないのか・・・?」
それは既に確立されていた技術ではあったが、暗黙の了解として禁忌とされていた魔法だった。
日食魔法。
恨みが太陽を食うという意味で使われるその言葉はその周囲に居た人間を凍りつかせた。
「しかしお主・・・!」
真っ先に硬直をといたのはその場に居た10歳程の子供だった。
子供故に曇りガラスを通すことなく直接物事を見れるために、如何にその行為がおろかなことか分かったのだろう。
しかし、その子供の悲痛な叫びは届かずに、勝利の先にある権利に目がくらんだその場に居合わせた人間達はその魔法を決行することを決定した。
それからは速かった。
何が、と言われれば二文字だ。
崩壊。
まさにこれが全てを表しているだろう。
召還された影は一瞬で恨みを食う為に世界に拡散し、そして恨みを食って肥大化していった。
そして場所は先ほどの会議がなされていた部屋と同じ部屋。
時は二ヵ月後。
少女の周囲は、真っ赤に染まっていた。
「なぜじゃ・・・・なぜ・・・なぜ・・・・!」
影に対しやめろと叫んだせいで既に悲鳴を上げている喉をさらに動かしてひたすら脳裏を占める疑問符をせめて口に出して減らそうとする。
が、意味は無い。
未だ動かぬ頭を引きづりながら特に何をするでもなくヨロヨロと立ち上がると、自分の寝室へ向かった。
そしてガチャリ、と部屋の扉を開けると、ベットの隣に備え付けられた棚を見て思い出す。
『お前がいくら頑張ってももうだめだ。と思ったときにはこの鍵を使って棚を開けなさい。』
今は亡き誇り高き王の言葉がふっと蘇る。
その言葉に釣られるようにしてフラフラと棚の錠前を開けると、乱暴に、しかし衰弱した動きで戸を開ける。
一瞬何もないのかと錯覚する空白の多さだったが、中を見てみれば一包みの手紙があった。
パサ、と手紙を引き抜いた後に残った空の封筒を落とすと、焦点の合わない視界で一生懸命にその手紙を読む。
つらつらと書かれていた謝罪の言葉は頭に入ってこなかったが、一つ大きく書かれていた文字はしっかりと目に焼きついた。
それはもうとても大きく書かれていた。
『おそらく、今この手紙を読んでいるということは戦争の目的がすでにすりかわったのだと安易に予想することができる。そしてそれはおそらく報復を重ねる戦争になってしまったことだろう。』
その今の状況を見ているかのような的確な言葉は少女の心臓を跳ね上がらせた。
『しかしそれは間違いだ。戦争という手荒な手でしか実現できそうにないということで戦争を起こす一端を担ってしまったのは完全に私の力足らずだ。しかしひとつこれだけは確かに言える。』
『この戦争は、報復を目的としたものでも支配を目的としたものでもない。この戦争・・・戦いは。』
『希望を叶える為の戦いだ。今は言っていることがわからないだろうがおそらくそう遠くなく、この戦争が真の意味で終わりを告げた時に分かる筈だ。』
大文字で書かれたその本文はそれで終わっており、最後に一文。小さく添えられていた。
『P.S 大して父親らしいこともしてやれずに本当に済まない。しかし一つ頼みたいことがある。身勝手だということは百も承知だが一つお願いしても良いだろうか。もし気に入らなければ破り捨ててくれてかまわない。願いを聞いてくれるかくれないかは君に任せるとするよ。どうか・・・』
どうか――世界に、希望を―――――
その一文は既に王に言われるより前に、手紙を読んでいくうちに固まっていった決意だった。
私が、この世界の光になる。
スッと静かにベットから立ち上がると、わずかにでも生き残った自らの配下の人間を探すために城を走り出した。
タッタッタッと軽快に大理石とブーツを打ち鳴らして駆け、仲間がいる可能性の中では一番可能性が高いエントランスへと飛び込んだ。
するとそこには。
整然と整列する十五の騎士と、八人の従者が控えていた。
少女の行動を見透かしていたかのようなその行動に驚愕していると、従者のうちの一人がつかつかと少女のほうへと歩みを進めて後二・三歩というところまで近づいて言った。
「さぁなんなりとお申し付けください。女王陛下。」
その言葉に固まっていた体がはじかれたように動いて周囲に立つ仲間を見渡した。
全員、なぜか誇らしげな顔をしていた。
こんな失態をやらかした・・・禁忌の魔法に手を出させたといっても過言ではないことをした皇女に、力を貸してくれるなんて。
そう思ったとたんに、頬を一筋涙が伝った。
まさか、こんな臭い台詞を素で思うことになるとは思わなかった。
彼等が一緒にいてくれる限り。何でもできる気がする。
あふれ出てくる涙をこらえて少女は唇をギュッと結んで顔を上げてもう一度自分の前に控える仲間たちの顔を見渡して言った。
「いまから私たちはこの世界に希望をもたらす光となりましょう!それが!”私の意思”です!」
高らかに少女が宣言すると、その仲間たちはいっせいに呼応した。
「ハイナ女王、貴女に忠誠を近い、命ある限り守ることを誓います!」
応、と沸いたそのエントランスを見て、ハイナは今一度決意した。
この世に、希望を。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
なんか前までは恋愛シーンに恥ずかしがってたかと思えば感動(?)シーンは恥ずかしいですね。いやはや全く。
ではまた後ほど。
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