第三幕 第一節:重なり過ぎた偶然
先ほどの影、とやらは恐らく。三年前に茨城に現れた例の正体不明の連中だ。
その驚くべき事実、しかしある程度気付いていた事実を知らされたのは突然現れた少女がヘル・ゲートなるものを召還して影を追い払った直後だった。
聞きたくは無いが聞かなければ行け無い答えを聞くために何故?と問いかける。
すると詩架は口をゆっくりと開いて答えた。
「考えても見ろ、さっきのリリの声で忘れかけてた記憶が蘇ったんだが、俺たちが戦ったモノ、の節々から溢れるソレはまさにさっきの影と同じだったろう。」
詩架のその言葉に三年前突如出現したモノを思い出す。
はっきりと鮮明に思い出そうとするが脳が脊髄反応でも起こしたかのようにその記憶にブロックをかける。
しかし思い出そうとして垣間見えるその記憶には詩架の言う通りの事が焼き付けられていた。
「そして第二にさっきのヘル・ゲートとやらの送り先はリリの声が俺たちに届いた事からも俺たちの世界だという事が分かる。」
それは由佳にも安易に理解が出来た。
「そして三つ目。さっきのヘル・ゲートに描かれていた記号と俺達に着いた聖紋は同じ物だっただろ。」
その詩架の言葉に誘われるようにしてついさっきの記憶を掘り起こすと確かに、そのヘル・ゲートとやらの中央、扉二つをかけてでかでかと描かれていたト音記号の改変版のようなものは今私の足に刻まれているものと全く同じだった。
「まぁいまさらこれが分かったところでどうということはないんだけどな。今更恨みつらみがあるわけでもない。が。」
そう言って詩架は突如乱入してきた少女へ向き直り、芝居がかった動きで言った。
「聞きたい事はまだまだあるんだ。さぁ説明してもらおうか?お嬢さんや。」
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「そうじゃの。とりあえず一刻も早く向こうに援護に行きたいとのことだから火大陸に向かいながら話そうか。」
ハイナと名乗った少女がそういうと、傍に控えていた従者が目を丸くして唖然としたと思った次の瞬間には猛烈に抗議を始めた。
「姫!まさかここから離れるおつもりなのですか!?」
姫?
詩架達が首を捻っているがそれを無視して話が進む。
「なんじゃ。妾は別にここに居なければ行け無いというわけではなかろう?」
ハイナのその言葉に、従者は更に食ってかかろうとするが、それを詩架がイラついた声色で止めた。
「お宅らの事情はしらねぇ。とにかくここの安全のために俺の故郷が危険な目にあってンだ。さっさと話を進めろ。」
詩架のそのことばに従者が無礼者!と言って腰に差した剣に手をかけるが、それをハイナは手で制す。
「いくら妾の地位が高かろうとやったことは非礼に変りはない。ここはおぬしが怒る所ではない。」
彼女はそう言って詩架たちに向き直って頭を下げていった。
「すまなんだ。よもやヘル・ゲートの向こうにお主達のようなものが住んでおるとは思わなかったのだ。」
「謝罪はいい。とにかくそのヘル・ゲートとやらをもう一度出してくれないか?」
詩架がそういうと、ハイナは更にばつのわるそうな顔をして詩架に説明をした。
「その・・・なんじゃ、さっき火大陸に行く必要があると言ったのはじゃな。今の状態では火大陸以外の宝玉はあるんじゃが火大陸の宝玉はさっきのが最後だったんじゃよ。」
彼女はそういうと手に持った扇子をパッと開いて、再び閉じた。
「今火大陸は大層不安定な状態でな。なかなか取りにいけなかったのじゃが・・・しかしエクリプス・マギカの残滓が残っておるとわかったのならこれは取りに行く必要があるじゃろうの。」
ハイナがそう言って出口へと歩き出そうとすると、コトリがそれを引き止めた。
「貴女は一体・・・なにものなんですか?」
コトリのその質問にハイナは足を止めてクルリと踵を返していった。
「妾は地族の上位種。地霊人。文字通り霊を監視するもになっておるものじゃ。」
くれぐれもこのことは内緒にしてくれ。と詩架達にその理由を説明せずに釘を刺すハイナにとにかく時間を消費しないようにと詩架が急かすとハイナはにこやかに言った。
「まぁまぁそう急かすでないわ。せいては事を仕損じるとも言うしのぅ。ここは説明を聞きながら移動するべきじゃろう。」
緊張感が無い。
詩架がそうため息をついたのと地族のレギンが理由不明のため息を吐いたのは同時だった。
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「なるほど、のう。」
先ほどの従者と別れ、その次に地大陸王宮でレギンと別れ、火大陸へと出発した一行は先ず詩架達がこの世界に着てからの状況を説明した。
そしてその説明を聞いたハイナは一言。
「感想としては。重なりすぎた偶然はもはや偶然ではない、ということじゃの。」
その言葉に由佳とコトリはすこし驚いたような顔をしたが、詩架は何かが分かったのか頷いて同意した。
「まず重なり過ぎた偶然を説明していこうかのぅ。まずその一じゃ。」
彼女は軽く走りながら純白の手袋に包まれた右手の人差し指を立てて説明を始めた。
「その一。先ず一番大きな要因じゃの。それは三年前以降の記憶が全員・・・いいやおそらく上位種は記憶があるんだろうがのぅ。とにもかくも一般的に世に居る種族から三年前以降の記憶が消えていた事。」
彼女はそう言って中指を立てて続けた。
「そしてこの先の要因はすべてさっきいった記憶喪失から派生した要因なんじゃがの。先ず。その記憶が消えたのと同時に伝わるはずの意識の根底まで刷り込まれた霊光の地の伝説が改変されている事じゃ。」
その彼女の言葉にコトリが首をひねるのを見て、ハイナは補足説明を始めた。
「言い直そうか。霊光の地の伝説は正確じゃ。しかしの、それに付随するはずの言葉が伝わってないと言うのはおかしいのじゃよ。」
彼女はそういうとゆっくりと言った。
神獣の心臓の宝玉は何があっても取り出してはならない。
「これは子供がいたずら心に神塔から綺麗な宝玉を取り出すのを禁止するものじゃがの。所詮御伽話と霊光の地を一蹴する大人たちでさえこの教えは守っていたのじゃ。」
「じゃあ何で、宝玉は取り出されていたの?」
由佳のその言葉にハイナは苦笑して答える。
「恐らくそれが改変されていた内容の一つ目じゃ。そして霊光の地の伝説は知っておるなおぬし達。」
ハイナの言葉に三人が頷くと、ハイナは満足して説明を続ける。
「霊光の地の伝説のあの演奏とは。宝玉を取り出してしまった時点で途切れるのじゃよ。まぁ四大陸全ての神獣の宝玉が取り出されたとき。じゃがの。」
そして、とハイナは言って続けた。
「もう面倒じゃ。一気に説明してから後で質問を受けるでの。とりあえず説明してしまおう。」
彼女はそういうとつらつらと説明を終えた。
要約すると。
・霊光の地の伝説・それに付随する禁止事項が伝わっていなくなっている。
・結果、神獣が魔物を操っているという不確かかつおろかな俗説が流行り神獣狩りが決行された。
・そしてその流れで神獣を守るという心の奥底に刷り込まれた感情が間違った方向に働いて宝玉を取り出して隠した。
・結果全ての大陸の神獣が擬似的に息の根を止めた。
・そして親は姿を現す=霊光の地の人間が出現出来るようになった。
・霊光の地の人間=詩架・由佳なのでは?
「と、こんなもんかのぅ。偶然というよりは一つの起因・・・つまり三年前の記憶喪失から全てが始まった事じゃがの。」
彼女はそういうと悲しそうに顔を歪ませた。
「妾達上位種は三年前以降の記憶を持っておる。三年前以降に何があったか。ここいらで話しておく必要があるかもしれぬのぅ。」
ハイナはそう言って詩架へ視線を投げて続けた。
「お主達の過去も洗いなおす必要があるかもしれぬ。恐らくここまでのことが出来るのは霊光の地の人間、つまりお主達だけじゃろう・・・推測じゃがな。」
彼女はそう言ってしばらくの口を閉じての休憩の後に三年前以降の過去を話し始めた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
まずは四大陸の過去編です。
ハイナのイメージとしては・・・ぶっちゃけてしまえばアクションオンラインゲームのエルソードのイヴさんロン毛verです。かといってイヴのイメージで読んでもらうということになるとイメージが合致しませんけども。
だってあの容姿がつぼだったのだもの!とか言い訳にもなってない言い訳をさせてください(
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