第二幕 第七節:意図の絡んだ保護
ボッヒュッという間の抜けた音と共に静かに着地するとコトリが心から安堵したように深ーくため息をついた。
「ハァァアアァアアァァァァァ・・・・」
コイツいつも宙に浮かんでる所に住んでいたくせに高い所は嫌いなのか、と聞けばどうやら高い所に居るのと落ちているのは全くの別物なんだとか。
まぁいいけどさ。
詩架はそう言ってポケットの中に入れていた緑の宝玉を取り出してコトリに尋ねた。
「これは一体どうやって使うんだ?」
詩架がそう聞くとコトリは一瞬キョトンとしたような顔をしてから何かを納得したような顔をして言った。
「そういえばこの世界の人ではなかったんでしたね。この宝玉と呼ばれるものは・・・なんと言うんですかねぇ。念じれば使えますよ。いわゆる魔法と同じですよ。」
コトリがそういうが。
「さっき自分で言ってたように俺らは異世界の人間でな?魔法とかつかえないんだって。」
俺がそういうとコトリが驚いたように言った。
「魔法ないんですか!?貴方の世界では!?本当に!?」
魔法を常識として持ってるからの反応か。まぁいいけどさ。なんかちょっとイラッとくるよねこういう反応。
詩架がそんな事を思っていると、由佳が詩架の変わりにコトリに答えた。
「私達の世界では魔法よりも機械・・・技術って言ったほうがわかりやすいかな?うん。そっちの方が発達してたのよ。」
由佳がそういうとコトリは小さく首を傾げて理解が出来ないというジェスチャーを取る。
「うーん・・・言ってみれば風の大陸が魔法で浮かんでるなら、私達の世界では魔法とは別のもので浮かせている・・・って感じ・・・かなぁ?」
由佳は最後に詩架に尋ねるようにして言うが詩架はそ知らぬ顔で宝玉とにらめっこをしている。
「ちょっとアンタが始めた話のようなもんなんだから最後まで付き合いなさいよぉ」
由佳が唇を尖らせてそういうと詩架はため息をついて宝玉から目を離して由佳へと向き直った。
「んで?」
「んでって、あのね・・・」
あまりに突然詰め寄られた為に多少たじろぎながらそういった次の瞬間、二人の表情は一瞬で引き締まった。
「囲まれた・・・っ!」
緊迫した表情でそういうと地面を蹴ってコトリをはさむようにして詩架と由佳の二人が立つ。
するとそれにあわせたようにボゴゴッというくぐもった音と共に周囲の地面のなかから人が表れるのを見て由佳がぎょっとして目を丸くしているのを横目で見ながら何時何処から襲われても対応できるようにして五感を研ぎ澄ます。
一斉に跳びかかってくるのか・・・それとも遠隔攻撃か・・・
後者ならば、詰み。
ゴクリとのどを鳴らしてたれる冷や汗をそのままに周囲の敵の筋一筋の動きも見逃すまいと目を凝らすが、何時までたっても攻撃のモーションは始まらない。
余りにも動かないので本当に敵なのかと疑問に思い始めると丁度、詩架の前に立つ男の後頭部をスパンと叩きながら陽気そうな男がツカツカと歩み寄ってくる。
「いやぁ無愛想な連中ですまないね。しかし勘違いしないで欲しい。俺は地大陸の王をやっているレイギナという名前で。言ったとおりにこの地大陸を治める王をやっている。そして君達の・・・味方だ。」
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「評議会の火大陸のホレイムから保護の要請・・・?」
詩架の意味が分からないままの確認の言葉にレイギナが頷く。
「それは・・・公式文章で来たのか・・・?」
詩架がそう尋ねると、レイギナは多少思案した後に首を振って答えた。
「いや、これは私的なことだと前置きしてあったな。」
それはつまり。
少なくとも火の大陸のホレイムは俺達を捕えようとはしていない。というか神獣討伐にそこまで拘っていないということか。
もしこの先頼ることがあるならばそれはホレイムか。
詩架がそういいかけたところで、その決断が正しいのかどうか迷わせる言葉がレイギナから発せられた。
「保護したらそいつら好きに使っていいと言うんでな。丁度今困った案件があったためにおぬし達を保護したまでなのさ。」
「ギブアンドテイクってところか。」
詩架が心の中でため息をつきながら確認の言葉を言うとレイギナは満足気に頷いた。
「ああ。」
「で?内容は?」
詩架がそう聞くが、レイギナは予想に反して首を振った。
「別に疲れてるだろう今やる必要はない。今日はとりあえず休んで、詳細は明日話そうじゃないか。」
そのレイギナの言葉を聞いて自分の疲労度合いを確かめると、気付かぬうちに、というのは多少おかしいが結構疲労していたということに気付く。
「ああ。今日は休ませてもらうことにするよ。」
詩架がそう言うと、何処からともなく現れた執事に案内され、一つの部屋へと促される。
大き目の柔らかいベットに三人が腰掛けると、荷が下りた、とは逆に肩などに一気に重みが追加される。
久し振りの死闘の連続。
災厄からまだ三年とはいえかなり腕はなまっていた。
いいや、腕というよりは精神が、と言うべきか。
既に平和に慣れきって三年前までは日常だった非日常を久し振りに体験した精神は既にズタズタで、もうベットに腰掛けることすら困難になっていた。
とりあえず今は眠ろう。
二人にそういうと、二人も疲れていたのかいそいそと割り当てられたベットへともぐりこんでいく。
「今日は、疲れた。」
本当に、色々な意味で。
フッと息を吐いて眠りにつこうとするがその直前に神塔での夢を思い出す。
また、あの夢がしばらく付きまとうのだろうか。
だとするならばそれは・・・・
しんどそうだ。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
いよいよ佳境、かもしれません
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