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第二幕 第四節:捜索

「で、結局誰が帰ってくるんだ?」


礫が悠介にそう聞くと、悠介は携帯を右手でぷらぷらと揺らして呆れたように答えた。


「まったくいつもの通りに連絡不通さ。まぁ詩架はあれでリーダーだったからね。行方不明の知らせは直ぐにいきわたるだろうし直ぐ戻ってくるだろうね。」


悠介はそう言ってやけくそ気味にペットボトルにわずかに残ったコーラを煽って続けた。


「まぁ最初に僕達が行くべきは居場所が分かっている氷見ひみの所かな。氷見はあれでいて頭がいいからね。是非ともその知恵を借りたいものだよ。」


悠介がそういうと礫がまぜっかえすようにして返す。


「あいつ勉強はからっきしだけどな。」


その言葉に悠介は飲み干したコーラのペットボトルを苦笑しながら道の脇に設置されているダストボックスに放り込む。


「まぁ、勉強が出来ることと頭がいいことは必ずしもイコールじゃないしね。」


「ま、そうさな。」


****


コンコン、とドアを叩くノックの音が聞こえ、「どうぞ」といって入室を促すと入ってきたのはかの災厄で共に行きぬいた見慣れた顔だった。


「やぁ礫、悠介。元気だったかい?」


入ってきた二人に笑顔で挨拶すると、向こうも笑顔で挨拶をしてくれる。


こういうところは詩架には無かったなぁ。あいつはいつも無愛想だ。


まぁ愚痴を言っても仕方ない。


「何か用があってきたんだろう?」


私がそう聞くと、悠介は真剣な表情で切り出した。


「単刀直入に。詩架と由佳が行方不明になったんだ。」


その言葉は私の心を十分に揺さぶった。


しかし、私達は揺さぶられた心を落ち着かせて次のステップへと歩みだす術を知っている。


事あるごとに勝手にいなくなることがないようにと言っていた詩架。


そして人懐っこくとても何も言わずにどこかへ行くような性格とは思えない由佳。


この二人が同時にいなくなったということと捜索までしてるということは。


「自分からじゃないんだね?」


氷見がそういうと、悠介がゆっくりと頷く。


「そう・・・私のところに来たってことは・・・」


「うん。かなり唐突に居なくなっててね。嫌な予感もする・・・」


「また、戦いになるの?」


氷見がそういうと、礫が軽い調子で返した。


「そんな大事にはならねぇと思うんだがなぁ・・・念のため、ってやつさ。いざと言う時に動けないっていうのはいやだろ?」


礫がそう問いかけると、氷見は即座に頷いた。


それをみた悠介は氷見のベットの枕元に備え付けられた電話を取ってナース室へと電話をかけて言った。


「今すぐに退院させてください。」


二重の意味でこの台詞は不味いのだが、口封じとうちのわがままを聞いてもらうためと言う名目で国からかなりお金を受け取っているらしいから安心できるだろう。


とにかく今は笠花の人間が動き始めていると知られたくない。


****


プシュッとコーラのペットボトルを開けた時の炭酸が抜けたような音が接着部から響くと、その機械は氷見の腰にしっかりと装着された。


一見して普通の足にしか見えないその両足の義足。


氷見は両足を失っていた。


いくら耳をそばたたせても聞こえないほどの静かな動作の機械仕掛けの義足。


太ももから下の両足は地肌と区別をつけるためにわざと肌色の濃淡が分けられている。


戦闘時には地肌とシンクロするように設定されているが、日常生活ではコレが自分の足ではないと自覚するためにも必要なのだ。


両足に義足を装着し終えると、礫が拾ってきたという眼鏡をかける少女へと話しかける。


「何を読んでいるの?」


私がそう問いかけると、眼鏡の奥の蒼い瞳をこちらへ向けて小さく答えた。


「化物語」


「へぇ、西尾維新の?」


私がそう答えると、まさか私が化物語を知っているとは思っていなかったのか、すこし意外そうに驚いて頷いた。


「いやぁ病院生活は暇でねぇ。ライトノベルとかは片っ端から読み漁ったよ。」


毎日詩架や由佳、礫や悠介が見舞いに来てくれるとはいってもずっと居てくれるわけでもない。居て欲しいとも思わないけれど。


だから一人の時間は大体読書か悠介に買ってきてもらった携帯ゲームで遊んでいたのだ。


「実は私結構オタクなのよ?」


フフッと笑って少女に言うと、少女も小さく笑みを返してくれた。


****


『たまにはステーキとか食べたいです。』


骨電動式の無線から聞こえる無茶な注文に苦笑しながら答える。


「コレじゃ不満かい?」


悠介がそう言って右手の手のひらの上にあるナットを転がす。


『私はナットでおなかは膨れません!なにか飲み物でもいいですからくださいよ!無理ですけど!』


彼女がかるい自虐を交えて言う冗談は実は結構心に来る。


”元”人間なのだからやはり食べ物を食べた時に感じる幸福感は忘れられないのだろう。


今はもうその感覚を味あわせてやれないと思うと・・・


そんな悠介のマイナス思考を読み取ったのか、無線機の向こうの彼女は慌てて取り繕う。


『い、いや、味覚インプラントを入れることを拒否したのは私ですし、今のは退屈しのぎのちょっとした冗談ですよ。』


彼女の慌てたフォローに元気付けられ、笑顔を浮かべてその言葉に返事をする。


「ま、そのうちね。」

最後まで読んでくださってありがとうございます。


感想・評価ありましたらよろしくおねがいします。

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