第ニ幕 第三節:霊光の地の伝説
まう水魚の伴奏に合わせ風を纏いし鳥は歌う。それを聞く地の人はリズムに合わせて鉄を打つ。
火の子は踊り、水の子は奏で、風の子は謳い、地の子は拍子を取る。
されどこの歌が止みし時、世界に混乱の影が差す。何が起きたかと思った親は姿を現さん。
親は子をなだめ、演奏を止めた物を罰す。
再び演奏を始めた子は世界に平和を取り戻し、荒れた海は静まり、憎悪に染まった黒き炎は情熱に染まり紅くなり、淀んだ風は透き通りそして腐った地は輝きを取り戻すだろう。
少年の小さな口から紡がれるその歌は霊光の地の伝説といわれているものらしい。
一家の部族には記憶が消えてもこの歌は消えずに伝わっていたらしい。
「で?それで評議会が殺そうとしている魔物はその風の子だってことか?」
俺がそう聞くと、歌を歌った少年は小さく頷いた。
さ、て、これはどうしたものか。
俺としては信じられないところ・・・なんだが、あの評議会の隠蔽体質も気がかりだ。
というかまだ答え聞いてなかったな。
「で、お前の持ってるその緑の玉は一体何なんだ?」
俺がそう聞くと、少年が俺の問いに答えるよりも速く俺の背後からその問いに答える声が飛ぶ。
「ソレを、渡してもらおうか?」
そのある種聞きなれた声に振り返ると、そこにはギムニが右手をこちらへ差し出すようにして立っていた。
「なんだお前、この玉がなんだか知ってんのか?」
俺がそう聞くと、ギムニはこちらへ軽い軽蔑を含む視線を向けて言った。
「それは魔物の心臓と呼ばれるものだ。それを破壊すれば魔物は死んだも同然となる。」
それはまた・・・大層なもんだな。
しかしまだ霊光の地の伝説の真偽が分からないし、加えて由佳も見つかった。
元の世界に返るのにこの世界が荒れていては帰れるものも帰れたもんじゃあねぇしな。
ここは・・・そうだなぁ。由佳の命の恩人の味方しとくか。
「ちょっとまてよ、お前さん霊光の地の伝説ってのは知ってるのか?」
俺がそうギムニに聞くと、ギムニはフン、と鼻を鳴らして答えた。
「知ってるがな、どうせ御伽話だろう?そんな下らんもののために評議会の命令を曲げる事は出来ん。」
なるほど。
上の言う事に素直に従う姿勢はまぁいいが、臨機応変って言葉があるんだよなぁ。
心の中でそう毒づくと詩架は頭を掻きながら言った。
「あーじゃあなんだ。命令違反するわ。」
その詩架の予想外な言葉にギムニの動きが一瞬止まる。
「いやぁすまんね、俺は知人の命の恩人の守ったものを守る事にする。」
詩架はそういうと、瞑っていた右目を開けて思い切りギムニの腹部を蹴り上げる。
「ゴフッ・・・」
「さっきから殺気丸出しなンだよ、お前。もう少しでガキごと心臓ぶった切る所だっただろ。」
詩架がつめたい目でギムニを見下ろしながらそういうと、由佳が怒ったようにギムニの首筋へと手刀を叩き込み気絶させる。
ギムニが気絶した事を確認すると詩架は後ろであまりの展開について行けていない三人に向き直り言った。
「さ、こいつの意識が戻るまで大人しくしてるのと俺達と戦うの、どっちがいい?」
カ、チ、と刀の柄に手をかけながら詩架がそういうと、三人は諦めたようにため息を吐いていった。
「ま、俺としてもその家族に手を貸してやりたいところだったし?正直俺達三人は評議会のやり方は嫌いでね、特にギムニって野郎もな。」
フィルアシニはそう言って目を瞑って演技がかった仕草で地面に倒れこんだ。
「時刻は午後六時二十三分。フィルアシニを始めた勇者一向は気絶。珍しい黒い髪を持った勇者は攫われる。これでいいか。」
フィルアシニがそういうと、彼の動きにならってコトリとウォタリアが地面に倒れこむ。
その様子をみて詩架が笑いながら一言はなった。
「愉快な奴等だ」
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「う・ら・ぎ・っ・た。だぁあああああああああああああ?」
ホレイムがその報告をしにきた召使に驚きのあまりそう叫ぶ
ビクッと肩を震わせる召使をみて今自分が叫んだ事に気付くと次いでこみ上げてくる笑いを臆面もなく表へ出した。
「アハハハハアッハハッハッハハハハハハあ、はらいてっハハッ」
笑いすぎて若干あふれてくる涙を右手で拭いながら、満面の笑みでホレイムはこう言った。
「面白い野郎だとは思っていたがここまでとはな。たいした恩もない奴に情が移るような人間には見えなかったんだがなぁ・・・」
ホレイムはそう言って一頻り笑うと、手元の書類を見て顔の笑みをサッと消した。
「これが真実なら・・・そしてヒナの奴が記憶を途切れさせていないのなら・・・こいつは・・・まずいな。」
ホレイムはそう言って一つため息を吐くと、アクルアのところへ言ってくるとだけいって部屋を後にした。
召使がすこし興味を持ったのかホレイムのデスクの上にある書類を覗き込むとその書類の表紙にはこう書かれていた。
”三年前”に誰かが終わらせた四大陸を闇に落としていたエクリプス・マギカ(訳:日食の魔法)という魔法についての研究レポート。と
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「で、なんでそんな大層なものが普通の村にあるんだ?」
詩架が心臓を指差してそういうと、父親であろう男が答えた。
「まず、貴方がこの世界のこと・・・いえ、この大陸のことをどれくらい知っているか、というのが分からなければ余計な説明をしなければいけなくなるのでまずそれを教えてくれませんか?」
「まぁそうだな。知ってることと言えば火と水は仲が悪いってことぐらいか」
詩架がそういうと、父親はすこし考えた末に話を始めた。
「そろそろ到着するので簡略にですが。」
そう前置きをして父親はこの大陸のことについてつらつらと淀みなく説明をした。
この大陸には北西・南西・北東・南東に神の宿る神塔と呼ばれる尖塔がある。
それぞれに宿る神は全てが違う物をつかさどっており、今から行く神塔にはアペリオテスという豊穣を司る神が宿っており、それの心臓を返しに行くのだとか。
「いやいやいやいやいや、まてまてまて、それ魔物の心臓じゃなくて神の心臓だってことか?」
俺がそういうと、父親は静かに頷いた。
神の心臓・・・ね。
なんか嫌な響きだ。
まぁどうせたいした事はないただの宗教だろうがな。
そんな事を思いながら走っていると、眼前に大きな塔が見え始める。
白くそびえ立つその塔はいるはずのない神をあたかもいると思わせるようなそんな圧力を放っていた。
「たっけ・・・」
こちらの世界では見たこともないような高さのその塔に呆れたような感心したような感情を向けているとその塔からぞろぞろと兵隊が湧き出てくる。
「うぉい。完全に包囲されてンじゃねーか。」
詩架がめんどくさそうにそういうと、父親はどこか覚悟を決めたような表情で言った。
「ええ。何せ討伐対象が住むところですからね。それは警戒しますよ。もしなんであれば帰ってもらっても構いません。あの連中は私がなんとかします。」
その父親の間違った方向の勇ましさに大きくため息をついて詩架は言った。
「お前は馬鹿か、いや馬鹿だな。あいつらが出てきて俺たちに対して多数の兵士が剣をとったってことはそれなりの実力者がこちらについているとばれてるってことだ。一般市民に対して武装しても無駄な労力になることが多いしな。」
詩架はそういうと「つまり、だ」と一呼吸置いて続けた。
「俺たちが裏切ったことはもうバレてる。今更撤回できるモンでもないんじゃないかねぇ。」
詩架がそういうとソレに賛同するように由佳が頷く。
由佳の賛同を得て、詩架は腰から剣を引き抜いて言った。
「その緑の玉は絶対に神塔に届けなきゃ行け無いんだな?」
詩架がそういうと、父親は真剣な眼差しで頷いた。
「ええ。月に一度、こうして心臓を戻してエネルギーを供給しなければいけないのです。」
「おーらい。」
詩架はそういうと右目からカラコンを外し、由佳は走っていながらにして器用に足から保護テープをはがした。
「暴れようか?」
最後まで読んで下さってありがとうございます。
理由がなくなったらあっさり裏切るあたりで情に篤いわけではないというところをアピールできたら・・・いい、ナァ
個人的にはホレイミアが一番好きだったりします。
やっぱりいいですよね姐御。アネゴマンセーにならないように気をつけねば。
もうなってるとか言っちゃダメですよええ。
このままではネタバレしかねないのでここらへんで
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