プロローグ:人より自分の自己中男
キーンコーン・・・・・カーンコーン・・・・
その終業のベルが鳴り響くと、椅子に縛り付けられていた生徒達は自分を縛り付けていた紐が切れたかのように一斉に立ち上がる。
そんな様子を横目に頬杖を突きながらボケッとしていると、棚に仕舞われていたカバンを引きずりだしながら近くの席に座る男子生徒が話しかけてくる。
「なぁなぁ、お前に頼みたい事があるんだよ。」
その言葉に何処と無く彷徨わせていた視線をその男子生徒のほうへと向けると、その男子生徒は少し頬を紅く染めて何か緊張しているようだった。
うわぁ・・・それ男に向ける顔じゃねぇよ・・・・という風に心の中で文句を呟きながらも一応聞いてやる。
「何だ?」
「あのさ、俺好きな人がいるんだよ。」
はぁ・・・またか・・・
何故か最近この手の恋愛相談が多い。
自分としてはこういうものに絶対に手を出したくないのだけれど。
恋愛は面倒だというのもあるが一番は人のことに手を煩わせるくらいなら自分のために使いたい。
そういう理念というか信条もあり、一つ返事で断ろうとするが、いつものように邪魔が入る。
「やってあげなよー。いいじゃん恋愛なんてステキじゃない?」
そういって横から会話に入ってくるのは同じ孤児院に住む笠花由佳だ。
恐らく初対面の人間なら人懐っこくて優しいという風に捉えられるであろう彼女はその印象通りに行動をする。
絶対に手を出したくないが結局やることになるのは大抵こいつが絡んでいるせいだ。
どうもこいつには口答えできない。というかしにくい。
その他大勢の人間よりは頭を働かせることが出来ると自負していてもこいつには絶対に敵わない・・・んだよなぁ・・・
またやる事になるんだろうか。というため息を吐きながら男子生徒の悩みを聞く。
一通り聞き、策を練ると言い訳して帰路へと着く。
しばらく一人でボーッと歩いていると、ふと後ろから先程と同じ声が聞こえた。
「詩架ったらもう、どうせ成功させられるんだからさっさと受けてさっさと成功させちゃえばいいじゃない。」
由佳はそう言うが、恋愛というのは成功すればそれで終わりじゃないだけに後々自分のせいにされたりしても困る。
けれどもまぁそんな事を言ったら何をいわれるか分からない。
その場は適当に流し、いつもの無言の帰り道となった。
残暑も終わってきた九月半ば。
この時期の夕方はいつも何処か寂しげな雰囲気を漂わせる。
黄昏時というやつか。
この黄昏時は霊界がこの世界に一番近づくから寂しくなると聞いたことはあるけれど・・・
そんな事を考えながら道路を歩き、十字路の角を曲がったその先には不可思議な亀裂が走っていた。
「んあ・・・・?」
思わず一瞬唖然としてしまうが、次の瞬間にはそれを許さない事態が起こった。
グォン!という音と共にその空間から巨大な黒い腕がこちらへ向かって一直線に向かってくる。
一瞬逃げようとするがその命令が体に届くまえに体をつかまれてしまった。
「なにしやが・・・っ!」
必死でもがくが効果は無い。
隣を見てみれば由佳も同様に捕まりもがいている。
その由佳の様子を確認した次の瞬間、謎の手に包まれていない部分にグォッという強烈なGを感じると同時に意識が遠のいていった。
「くっ・・・そっ・・・・」




