人の価値、死の価値
「えっ…祖父が…?」
『はい、出先の交通事故で亡くなられました。ですが…』
「ですが…?」
『死亡ログを何度調べても、死因が誤嚥性窒息で…』
「…は?」
“人の価値、死の価値”
祖父が死んだ。
別に驚くようなことではない。齢92、そろそろいつ死んでも可笑しくないと、本人ですら笑い話にしていたくらいだ。
ただ、これは話が少し違ってくる。明らかに不自然な死因。これは…
「バグ、でしょうか?」
『恐らく、未発見のものかと』
この世界には数多くのバグが存在する。古来より人間は試行錯誤してバグを取り除き、エンバグに頭を悩ませてきた。
「未発見となると、確か報酬があるんでしたっけ」
『はい、国立不具合研究所にご報告いただければ、最大100万円の報酬が受け取れます』
「分かりました…色々、ありがとうございます」
『お祖父様の御冥福をお祈りします。それでは…』
ガチャリ。ツー、ツー。
通話が切れた。
「…ふぅぁ」
変な溜息が出る。
(そういえば…)
祖父は生前、自分は価値の無い人間だと言っていた。
というのも、ネガティブな文脈ではない。ない、はずだ。
数年前、私が少し病んでいた時に、こんな自分がのうのうと生きていて良いのだろうか、という疑問を抱いたことがある。
それに対し祖父は、
「別に良いじゃァなぃか!儂なんか見てみィ、何の価値も無い年金喰らいじゃ!そんな儂でものうのうと生きていられるんじゃ、お前さんも堂々と胸はってのうのうと生きればいいわ!ワッハッハ!」
…と、豪快に笑ってそう言った。一応、それより前から祖父は自虐的に自分は価値の無い人間と言ってはいた。
だから何だという話ではあるが、今回の件で、価値の無い人間(自称)の死に最大100万円の価値が付いたわけだ。
まあ、それこそ、だから何だという話なのだが。
要するに、価値の無い人間の死に価値が付いたら、その人間には死の分の価値があったということになるのだろうか。
(…そんな訳無いじゃん、ばーか)
堂々巡りに陥りそうな思考に終止符を打ち、葬儀屋に電話した。
あっ、また番号がズレた。
「めんどくさ…早く修整されないかな」
後日、祖父の死には50万円の価値が付いた。全部葬儀代に消えた。
祖父が葬儀代を少し浮かせてくれたと考えることにした。
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