君ヨ幸セデアレ
短編です
去年の夏、親友が死んだ。癌だった。若いから進行が早かったんだと、アイツのお母さんから聞いた。
高校の頃からの腐れ縁のようなもので、まさか大学まで一緒になるとは思わなかった。いつも俺の傍にいてくれて、俺を励ましてくれた。俺もアイツの力になってやりたいと常日頃思っていた。俺たちは支えあえる親友だったと、俺は思っている。
あいつが病室で俺に最期に言った言葉が、未だに心に残ってる。
“お前が幸せになれば、俺も幸せだよ”なんてそんなこっ恥ずかしいセリフ残して逝きやがって。
大学時代、俺が好きだった女の子は、アイツの事が好きだった。俺はソレが悔しくて悔しくて。でもアイツは、彼女からの告白を受けなかった。他に好きな人がいるんだとかなんとか言ってたな。でも、俺は親友だから知っている。アイツは俺に気を使ったんだ。そう言う変に気を遣うところがある奴だった。
でもおかげで、俺はその子と付き合えて、今や結婚して子供まで生まれた。俺は、アイツの遺言の為にも、俺の妻と子供を幸せにしないといけないんだ。
でも時々、ふと、幸せって、何だろうか、なんてことを考える。
長い間、それについてずっと考えていた。
俺には妻も、子供もいる。仕事だって順調だ。だから俺は、幸せだ。でもやっぱり、親友の抜けた穴は、他の誰にも埋められない。ずっと何か足りないようなそんな感覚が俺に残っていた。
幸せなはずなのに、アイツの為に、幸せにならないといけないのに。妻と子供を幸せにしないといけないのに。もやもやと存在がはっきりしない感覚が、ずっと残り続けている。
カレンダーを見ると、アイツの命日が近づいていた。
「墓参り行くかな・・・」
そう呟くと、俺の中で何か決心がついたような気持ちになった。俺はその日に休みを取った。
地元の駅を降りてバスで30分。ちょっとした旅行のようなもんだ。荷物は実家に置いてきた。
墓前にあいつが高校生の頃好きだったジュースを置いた。
「久しぶり」
墓石にそう言ったって何も返ってこないのはわかってるんだけど、つい声をかけてしまう。
「あら」
声に振り向くと、アイツのお母さんも墓参りに来ていた。
「来てくれたのね」
「ご無沙汰してます」
「もう一年なんて、信じられないわ」
「そうですね」
「あの子、あなたの事・・・大好きだったから、来てくれて喜んでると思う」
「そうですかね・・・」
乾いた笑いを返した。俺だってお前が大好きだったよ。ずっとずっと、一緒にバカやって過ごすと思ってたよ。お前が居なくなって、俺、結婚して子供も生まれたけど、やっぱ寂しいんだよ。
そうか、俺のこのもやもやの正体は、寂しさか。そう思うと、少し腑に落ちたような気がする。
「あ、おばさんこれ、良かったら」
あいつが好きだった菓子をおばさんに渡した。
「覚えててくれたのね」
「もちろんですよ、だって俺たち・・・親友だし」
「親友、そうね・・・そう言ってくれるお友達がいて、あの子は幸せ者だわ」
親友、俺たちは親友だ。俺は、お前の言葉通り、幸せになるよ。
——幸せ——
人の数だけ幸せがある




