秘密(ポポ側視点)
第二章、始まりました。 ウタハの世界を少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです☆
成人の儀式が終わって数日後のこと、ポポに縁談の話が舞い込んできた。
相手は隣村、ゴード村の顔役の息子だった。
今年二十一歳になるしっかり者の青年だという。なんでも、先日の精霊祭のとき、この村に立ち寄っていた彼が、ポポを見染めたのだと。内々にポポの父親に打診があったのだ。
精霊祭の前に、行商から帰ってきていたたポポの父親は、いい話じゃないかと乗り気である。
父親は、トイサ村の糸を売りに近隣の村を回り、王都へ向かう。以前は、村人たちから依頼された糸を売り、売れた金は村に戻ったとき、みんなに渡していたが、最近では糸の相場がわかってきたこともあって、先に買い取り、それを売りに行くようになっていた。
今では行商人としての信用もついて、もっと手広くやりたいと思いはじめていたのだ。そのためには、村の有力者とのコネはかかせない。
それだけではない、彼はトイサ村の、代々村長に仕える諜報の一族のひとりであった。だから情報網は多いほどよかった。しかし、このことは誰も知らない。もちろんポポも。
*
精霊祭の前日、帰ってきた父さんが、この数日、村長さまの館へ足しげく通っていると思ったら、どうやらわたしの縁談を進めようと、いろいろ相談しているんだって。
母さんから聞いた。
困ったな・・・わたしは全然乗り気になれないし、まだ早いと思ってるの。
それに、わたしには好きな人がいる・・・誰にも言っていないけど・・・あ、この前ちらっとウタハには話したっけ。でもウタハはわかってないかもね。こういう話はあの子には通じないんだ。だから、やっぱり秘密にしておこう。
成人の日、ウタハはいつもよりは大人びて見えたけど、わたしや他の女の子たちと比べると、どうしても幼く見えてしまう。それに比べてわたしは、ウタハの細い体がうらやましくなるくらい、ぽっちゃりで、大きすぎる胸を隠すのにも苦労する。
こんなだから、縁談もくるのかな・・・
成人式のアイジェルは、とっても素敵に見えたわ。
そうそう、ウタハが行方不明になったときだって、頼もしかったし。
だけど、彼はウタハのことが気になるみたい。ちょっと寂しいけど、ウタハなら許してあげる。親友だもの。それに、彼は村長さまの息子。わたしとはつり合わない。あきらめてる。
あのとき――ウタハが消えたとき、わたしは生きた心地がしなかった。親友が突然いなくなるという恐怖は、二度と味わいたくない。あんな思いをするくらいなら、彼を譲ってあげたほうがずっとましだわ。
無事に帰ってきたウタハを見て、わたしは、ほんとうにほっとした。お城の魔法士さまや、魔法師さまたちの戦いがあったと聞いたけど、村のみんなと同じように、わたしも家に閉じこもっていたから、どんな様子なのかはわからなかった。
ウタハと遊ぶのは気を使うことがないので楽しい。でも、どうしてこんなに仲良くなったのかしらと考えると、よくわからない。いいえ、わかってる・・・
行商に出ている父さんは、帰ってくるたびに、ウタハのことを聞いたわ。仲良くやっているか、元気でいるか、どんなことをして遊んだのかと。母さんもそうだ。小さいころからだった。いつも、仲良くやりなさいという。やってるよと、話すとニコニコしてほめてくれるので、わたしも悪い気はしなかったし、ウタハのことは大好きだったので、言われなくても仲良くしていた。
でも最近、薄々気がついたちゃった。どうやら父さんと母さんは、村長さまにウタハの様子を見てやってくれと頼まれているらしい。だから、わたしをウタハのお目付け役みたいにしてるんだって思う。何かあったら、すぐに村長さまに知らせられるように。詳しくは知らないけど、村長さまがウタハの後見になっているらしいの。だから、しかたないわよね。
このことも、わたしはウタハには言うつもりはないわ。
だって親友のままでいたいもの。
ああ、どうしよう、やばい! さっきゴード村から使いがきて、麦酒の入った甕と籠に入った大きなチーズを置いて行ったわ。父さんの好きなお酒だ。そういえば、あの村って麦酒を作ってるとこじゃない。父さんが気に入るはずだわ。
送ってくるなんて、話が進んでいるってことよね。贈り物受け取ったら、完全に・・・
わたしの知らないところで、どんどん話が進んでいるみたい。
お嫁にいったら、ウタハとも会えなくなっちゃうよ。
あ、母さんが呼んでる。きっとその話かも・・・




