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フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第一章

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成人の日


 ウタハは、台所のテーブルの前で、アミラに髪を高く結ってもらっていた。


 今日は春の精霊祭。トイサ村の成人の日でもある。

 台所の窓からは、精霊祭の準備をする村人の声や、この日のために練習した者たちの楽器を鳴らす音が響いてくる。まもなく始まる祭りの前のざわめきは、いやがおうでも村人たちの心を高揚させていた。


 耳に銀の輪の耳飾りをつけ、頬と唇には薄く紅をさしたウタハの白い顔は、いつになく華やいで見えた。ウエストにはハーズの糸で織ったサッシュ。飾りは作れなかったけれど、ウタハの髪と同じ虹色の光沢を放っていた。



 あの日、ウタハが家に戻ったとき、アミラはウタハを抱きしめ初めて大声で泣いた。今まで養母が自分の前で涙を見せたことがなかったので、ウタハは驚き、また一緒になって号泣した。

 自分のことを、これほど案じてくれる人がいることに改めて気づいたのだった。もう、悲しませることはしないようにしよう、ウタハは心に誓った。


 アミラに連れられて村長の館に行くと、真っ先にアイジェルが奥から駆け出してきて、勢いよくウタハを抱きすくめた。そして、はっとしたように、ウタハから少し身を引いて、「よかった、生きていてくれて・・・」と言った。

 ウタハは恥ずかしそうにうなずいて、彼の両手をとった。

 アイジェルの手は温かかった。

 「心配させて、ごめんなさい」

 アイジェルが何か言おうとしたとき、村長夫妻とタージェルンが二階から降りてきた。

 三人は、それぞれウタハにいたわりの声をかけると、起こったことの顛末を聞きたがった。


 それでウタハは黒マントの男に助けられたことを話した。

「ルシクリオンだと!」

 名前を聞いてタージェルンは驚きの声を上げた。

 村長が彼の顔を見る。

「知っておるのか? 何者なのだ」

「彼は、魔物を統べる者、闇の貴公子とも言われている」

「おお、あの魔物退治のときの和解者か」

「そうだ、しかしなぜあの者が・・・」

 タージェルンは考え込んだ。


 詳しい話は明日にしましょうと、村長の妻が声をかけてくれたので、ようやくウタハとアミラは家に戻ることができたのだった。


 その翌日にウタハは一人で村長の館を訪ねた。

 タージェルンと村長に、あの日の出来事を初めから話し、また鏡沼がどうなったのか、そこにいた少女たちのことも聞くことができた。


 タージェルンが師匠の古の魔法師のところへ相談に行ったとき、すでに光の伝達は届いていたという。王都からも魔法師たちへ連絡が入り、古の魔法師団と魔法士部隊が、かつての魔物討伐と同じように、鏡の沼で、沼の主と戦ったのだと。

 タージェルンやアイジェルも参加した。

「おれは、初めて魔法のすごさを実感したよ。古の魔法師たちの起こした風と水を操る魔法には驚いた。何人かの魔法師たちが協力して、鏡の沼に大竜巻を起こしたんだ。それで沼の水をほとんど巻き上げてしまった。それから魔法の交戦が始まったのだけど、おれは、見ていることしかできなかった・・・残念だけど」

 アイジェルが興奮した声で言った。

 そのつづきをタージェルンが話してくれた。

 勝敗は、こちらの勝利だったと。鏡の沼は勝敗が決するや否や、すっかり枯れ沼になった。後には奇妙な壊れた建物が残っていたこと、中を調べると、少女たちが倒れている部屋を発見したことなども。

「今あの娘たちは、領主の医術師が治療にあたっている。だが、おまえだけは、どうしても見つからなかった。だから、沼の主に連れ去られたのだとばかり思っていたのだ。しかし、闇の貴公子殿に助け出されていたとはな。うむ・・・」そこまで話してタージェルンは「また借りができたということかもしれぬな」最後はぼそりとつぶやいた。

 ウタハは、ルシクリオンの奇妙な乗り物から見えた沼の渦が、もしかしたら魔法師たちの起こした魔法だったのかもしれないと思った。


 *

 

「さあ、できたよ。なかなかうまく結えたみたいだ」

 アミラがうれしげに、ウタハをのぞきこむ。

「立ってごらん、うん、サッシュもきれいにできてる。こうして見ると、ウタハもやっぱり、年頃の娘に見えるよ」

 いつもなら、そのことばに少々反発しているところだが、今日はそんな気も起らず、にっこり笑う。ウタハは立ち上がって、くるりと回って見せた。

 白いチュニックにサッシュを締めて、スミレ色の長いベストを羽織ったウタハは、いつもより大人っぽく見えた。アミラもうれしそうに見ている。

 なんだか、うきうきした気分になって、アミラに向かってお辞儀してみせた。

 ルシクリオンからもらったチュニックの丈を、少し詰めて歩きやすい長さにしたのだ。柔らかな光沢のある白いチュニックは美しく、晴れ着にぴったりだった。

 今度、会うことがあったら、お礼を言わなくちゃ。

 ふと濃い紺青色の瞳がこちらを見た気がした。

 

 そのとき、外からポポの声がした。

「ウタハぁ、支度できた?」



                      

                  (第一章 終  第二章へ つづく)






読んでくださって、ありがとうございました! 第二章は執筆中なので、来週から金曜日毎に掲載予定です。また引き続きよろしくお願い致します m(__)m

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