エピローグ
Ⅰ.
空は、明け始めたばかりで、朝焼けのバラ色の空に、うっすらと金色の光の箭が射していた。
エランとウタハ――ここではイーリスと呼ばれていた――は、先ほどヴィア星に帰ってきたところだった。赤の魔女の研究室で、向こうを出発するとき、星間移動のため変換した光の粒子の身体から物質の身体に変換し、異常はないか検査を受けたのだった。
マロウズもミラと一緒に戻ってきたのだが、アイジェルとタージェルンはオーリム星に残ると言って、皆を驚かせた。
分岐した異次元のウィオラとの統合が、彼らの心に変化を起こしたのかもしれなかった。
また不思議なことに、あの日以来、コズミンドラが忽然と消えてしまったのだ。赤の魔女は『おそらく波動の低い物質のエネルギーを多く持つ彼らは、高次元のウィオラにはじかれて、別次元に飛ばされたのではないか』と仮説を話してくれた。
エランとイーリスがヴィアに帰ることは、二人で話し合って決めた。
なにより、ヴィアの魔法と科学を認める社会の在り方に、エランは共感していたし、イーリスも異論はなかったから。
オーリムを去る前に、アミラにも会った。『いつでも戻っておいで』と言って優しく抱きしめてくれた。イーリスは、またいつか会いに来ようと決めたのだった。
「さあ、帰ろう。王都へ」
イーリスがうなずくのを見て、彼はアルを呼び出して命じた。
アルは、あの日以来、毛の色が真っ白になっていた。やはり干渉が起きたのかもしれなかった。
しかも、なぜかしゃべらず、鳴き声も上げなかった。
イーリスは首をかしげたが、理由を聞く前に、アルは翼の付いた巨大な白猫になっていた。
エランは彼女を抱き上げて、アルにふわりと飛び乗ると、アルは二人を乗せて空高く飛び上がった。
陽の射し始めたバラ色の空の、赤紫に染まった雲の間を、アルは二人を乗せて翔てゆく。
エランの髪もイーリスの髪もバラ色に染まっていた。
アルの上で、自分を支えてくれているエランを、イーリスは振り返って見上げた。見つめ返してくれる彼の瞳を見ながら、にっこり笑った。以前どこかで、こうして笑っている自分を見た覚えがあった。
Ⅱ.
トイサの村に、初めて茶房ができた。
町では、普通に見かける喫茶店だが、飲食店と呼べるものもなかったこの村には画期的なことだった。それを見て触発されたのか、後に小さな酒場を開いた者もいたほどだ。
『茶房ヴィア』の店主になったアミラは、朝早くから、仕込みの準備で忙しくしていた。
アミラの家の一階を少し改造して、店にしてくれたのはタージェルンだった。アミラの出す簡単な料理やお茶と菓子は、商売にしてもやっていけると見込んだのだ。店の名前も彼が考えた。
二階に一人で寝泊まりするアミラを気遣って、彼はこの家に保護の結界をかけていた。正確に言うと、ウタハが古の館に行った後、彼女の様子を知らせに来た時だったが。
彼はと言えば、毎日お茶を飲みにやってくる。
今日も、そろそろ姿を見せるころだった。
店に来る客は、最初、村人たちがもの珍しさで訪れた後は、親しい者たちが常連になった。ときどき、旅人や近隣の村から仕事でこの村に来た者たちも顔を出す。魔法師たちもたまに訪れる。最近では、話を聞きつけた他の村人もやってくるようになっていた。
大した収入ではないが、何とかやっていけた。お金よりもアミラはこうして働けることがうれしかった。
入口に、開店の札を出して店の中に戻ったときだった、若者が勢いよくドアを開けて入ってきた。
「タージェルンは?」
村長の息子のアイジェルだった。
王都の魔法士団を辞め、トイサに戻り村長の跡継ぎとしての仕事をこなしていた。
「あら、ご一緒じゃあなかったんですか?」
「ああ。さっき出て行ったみたいだったから、もう来てると・・・あ、お茶を一杯もらおうかな」
「はいはい、少しお待ちを」
アミラが紅茶を入れていると、タージェルンが入ってきた。
「おや、どうした、今日は早いな」
彼が声をかけた。
「もう伯父貴のところには、連絡はきましたか?」
「誰から?」
「赤の魔女・・・」
「えっ」
「おれのところには、もう・・・」
アイジェルがそう言ったとき、入口のそばの空気が揺らぎ、赤の魔女の顔が映し出された。
かなり映像が粗い。おそらく本体は向こうの星なのだろう。
ノイズの入った赤の魔女が言った。
「また新たな星が見つかったの。あなたの力を借りたいのよ・・・」
―― 了 ――
ここまで、お付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました!感謝♡
☆*。.m(__)m.・*☆
もしかしたら、新たな物語を書き始めるかもしれません。
今はまだ未定ですが・・・
そのときには、また、どうぞよろしくお願い致します♡




