表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォラードの光  ― 星の記憶者 ―  作者: あけの星
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/65

約束の行方⑷


 そこにいたのは、黒い髪に濃紺の瞳をした青年――ルシクリオンだった。


「こちらに」

 彼は向かいのソファに座るよう言った。

 ウタハは緊張気味に腰を下ろす。そして、彼をじっと見つめた。

 ルシクリオンはその視線を受け止めたが、すぐ外して考え込んだ。

 ウタハの記憶が戻っていることをみてとったらしかった。

「もう、そこまで思い出してしまったのだね・・・」

 彼は、低い声で言った。


「ええ。あなたは・・・あの星、ウィオラで・・・」

「そうだ。だが、ちがう」

 ウタハの言葉をさえぎった。

「ここにいる私は・・・あの星にいた私ではない。あのときの私の半身にしかすぎないのだ」

「どういうことです?」

「かつての・・・ウィオラの評議会が分裂したときのことを覚えているかい?」

「――覚えています」

「科学を進化させた世界を作ろうとする者たちと、意識と精神エネルギーを重んじる者たちとの、二つの派に分裂したとき、私は魔法も科学とともに進化させるべきだと思っていた・・・だから、私は迷わずそちらの道を選んだ。きみと歩む道を捨てて――」


「あなたは、そうするだろうと思っていたわ・・・」

 ウタハは遠い記憶をたどる。

 そう、あのころわたしは、さらなる光の身体への進化を求めて、物質を扱う科学を認めない人々の中にいた・・・

 でも、彼とは想い合う仲だった。それを引き裂くほど、世界は変わってしまった・・・

 あれほど融和して、一つの意識体とも思えるほどの調和を保っていたウィオラに、なぜ不協和音が起き始めたのだろう・・・? 

 忘れていた悲しみと苦しみが湧き上がり、胸を締めつける。


 ルシクリオンは静かに話を続けた。


「だが・・・科学を信奉する者たちは、あまりにもテクノロジーの進化に偏り過ぎていた。それを知って、私はそこから離れたのだ。後悔したよ。

 そのときから、『いまさらきみの元へは行けない私』と、『なりふり構わずきみの元へ行きたい私』との葛藤が始まったのだ」

 ルシクリオンは感情を押さえて話していたが、当時を思い出したのか、彼の周囲にちかちかと暗い光が一瞬飛び散った。彼は深い呼吸をした。


「――その思いが私自身を引き裂いた。当時は、まだ光の粒子の身体をかろうじて保っていたからね、半身に分かれるのは意外に簡単だった。

 分かたれた半身は――きみと会うためにあの星に生まれ変わった。エランとして。光の道を選び、新たな宇宙に分岐したのだ・・・

 残りの半身であるこの私は、光の影、闇の道を行く道を選んだ。次元の境界に生きるものとして」

「そんな・・・」

 ウタハは両手で顔を覆った。

「そんなにも、あなたは苦しんで・・・」

 切なさに涙がこぼれた。


「あなたは、それでいいの?」

 ウタハはたずねる。

 ルシクリオンは返事をしなかった。

 ウタハを見つめる彼の濃紺の瞳に星がきらめいた。


 そのとき、扉の方で声がした。

「総長! 御準備を」

 それは館長の声だった。

「今、行く」

(総長? 彼がそうだったの、どういうこと?)ウタハは驚いて彼を見た。

「もう、その刻がきたらしい。一緒においで」

 ルシクリオンは立ち上がった。

 そして自分の胸の前に光を集めて、姿をノクィース先生に変えると、呪文を唱え天井を指さして開く。薄青い寒々とした冬の空が現れた。

 やはり・・・彼がノクィース先生だったのだ。すべて繋がった気がした。


 彼はウタハの足元に小さく丸まっていたアルを見て命じた。

「アウルム、乗せて飛べ!」

 アルはみるみる巨大化し、この前と同じ姿になった。金色の翼ある猫だ。アルは二人を乗せると、開いた天井から、空へ向かって飛び出して行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ